第74回 胡錦濤の中央党校講話の分析―その2(2007年7月18日)

 

625日に開かれた中央党校省部級幹部進修班で胡錦濤総書記が行った重要講話の分析の2回目。三部に分かれている胡錦濤講話の第2部の個別の政策と第3部の党建設について見ていく。

 

●胡錦濤政権が取り組む個別政策

 第2部では、胡錦濤政権が取り組む個別政策として、経済、政治、文化、社会建設の4つについて具体的な内容に言及している。

【経済】国民経済の立派で速い発展を促進することについて

 カギは「経済発展方式の転換」にあるとする。具体的には、@経済発展の質、効率を高める、A科学教育による国家振興戦略の実施、経済構造の戦略的変更の加速化、農業強化、資源節約型・環境友好型社会の構築、地域発展の総合戦略の実施、B公有制経済の固持、発展、非公有制経済の奨励、支持、導入、C財政税収、金融、計画体制の改革、D対外開放の拡大と経済グローバル化の下での国際経済協力への参加

(特徴)発展拡大一辺倒ではなく、現状に対応した質や効率の重視、弱点強化、バランス重視が見られる。しかし公有制経済固持といった原則は変えていない。

【政治】社会主義民主政治について

 政治体制改革について、「正確な政治方向を堅持し、経済社会の発展に従い推進し、人民の参加の積極性に適応させる」とする。しかし、「党の指導を堅持し、人民が主人公となり、法に基づき国を治めることを有機的に統合させる」と党の指導を第一とする点に変わりはない。

この条件の下での政治体制改革は、@公民の秩序ある政治参加の拡大、A政策決定の科学化、民主化、B基層民主の発展、人民が法に基づき民主的な権利を直接行使することを保障する、C法に基づき国を治める基本方策を全面的に実現し、法治精神を広く発展させ、社会公平正義を維持する、D行政管理体制改革を加速させ、政府の社会管理と公共サービス機能を強化する―点を挙げる

(特徴)正確な政治方向としての党の指導の堅持を第一とし、その範囲内での大衆の政治参加を強調する。そのため政治体制改革の内容も限定的で新鮮味はない。

【文化】特に目を引くものはない

【社会建設】社会建設の加速について

 社会建設は「広範な人民大衆の直接的な利益との緊密に相互連関しており、突出した位置に置かれるべきである」として、人民が最も関心を持ち、最も直接的で、最も現実の利益問題、すなわち民生分野に重点を置くものとして、特に優先すべきこととして教育、就業、収入分配、都市と農民の社会保障システム、基本的医療衛生制度を挙げる。

(特徴)民衆重視の姿勢を強調し、民生分野の取り組みを重視する。

 以上が具体的な政策である。全体として、これまでの発展路線とは一線を画する科学的発展観に基づいた政策が列挙されており、それ自体は中国の課題への対応が示されている。それは江沢民期までの発展拡大路線を否定するかのようであり、脱江沢民路線で一貫している。しかしその内容に新鮮味はなく、また原則は堅持されており、党大会後の大胆な舵取りは期待できない。

 

●胡錦濤政権を悩ます党

 最後の第3部は、党自身に関わることである。「どのような党をどのように建設するかは重大な現実問題であり、わが党と国家の今後の命運と直接関係している」(評論F)として、ことの重大さの認識を示す。

党自身の建設への回答は、@科学的発展観を深く学習する、A党指導部、幹部、党員の質の向上、B民主集中制の堅持と党内民主制度の推進、C党の学風と文章の作風を改良し、形式主義、官僚主義、虚言を弄する趣旨に反対し、贅沢浪費に反対する、D権力を民のために用い、情を民につなげ、利益を民のために謀り、大衆の声に真剣に耳を傾け、大衆の希望を正しく伝達し、大衆の苦しみに心から関心をもち、大衆のためにさらに多くの立派なことを行い、実施する―ことの5点を挙げる。

 そして講話の最後は反腐敗で占める。「反腐敗闘争をしっかり実施でできるかどうかが党と国家の存亡にかかっている」(評論F)とし、「腐敗反対・クリーン建設をさらに突出した位置に置かなければならない」とする。

 最後に「極めて困難な使命、繁雑で骨の折れる任務によって、全党同志は必ずや平和なときでも警戒を怠らず、苦労の意識を高め、必ずやおごりや短気を戒め、刻苦奮闘する」よう求めた。

(特徴)共産党の弱体化、特に腐敗による民衆の信頼がなくなっている現状に対する危機感がにじみ出ている。しかし、その対応内容はこれまでと変わっていない。新しい策を提示できない胡錦濤政権では、党大会後の信頼回復、汚職削減には期待が持てない。