第66回 2005年12月の『人民日報』(2006年1月2日)

 

20051202

(1)中央経済工作会議が開催され、今年の経済工作を総括し、来年の経済工作を通達

来年の経済工作の主要任務は以下の通り。

  @マクロ経済政策を安定させ、経済の安定した早い成長の情勢を維持する

A社会主義新農村建設をしっかりと推進し、「三農」工作をさらに立派に行う

B自主創新能力を全面的に増強し、産業構造調整を絶えず推進する

Cエネルギー資源の節約に力を入れ、資源節約型環境友好型社会の建設を加速させる

D中部と西部の良好な相互作用を引き続き推進し、区域経済の強調発展を促進する

E体制改革の推進を加速させ、科学発展観を実現する体制保障を整備する

F相互利益、winwinの開放戦略を積極的に実施し、対外開放のレベルをさらに高める

G人民大衆にとって最も関心があり、最も直接的で、最も現実的な利益問題の解決に力を注ぐ

来年の具体的な経済工作の内容

@安定した財政政策と安定した通貨政策を引き続き実施する

A消費需要を拡大し、固定資産投資の統制を強化し、都市住民の収入を増やすよう努力し、農村消費市場の開拓に力を入れる

B投入と改革に力を入れ、農業と農村のインフラ建設を強化し、農村改革を全面的に深化させ、社会主義農村建設を推進する

C産業構造調整を加速させ、区域経済の協調発展を推進し、産業階層と技術レベルを高度化し、一部の生産能力の過剰な業界の調整を進める

D資源節約と環境保護に力を入れる

E経済体制改革を深化させ、対外開放レベルを高める

F科学技術、教育、衛生、文化などの社会事業の発展を加速させる

G人民大衆の適切な利益問題の解決に力を入れる

大体5中全会で採択された第115ヵ年長期計画策定の建議に沿って来年の経済工作は組み立てられている。

私が関心を持ったことは以下の3点。

@「三農」問題解決に力を入れている点で、「社会主義新農村」というタームには気をつけたい

A地域経済発展で重点は西部、中部に置かれている点で、当初目玉になると思われた東北振興は優先順位が下がったように思われる

B消費需要の拡大が前面に出てきている点

 

(2)唐家セン国務委員が日中新世紀会国会議員訪中団と会見

日中新世紀会という組織は初耳。団長は遠藤乙彦という人。

 唐家センは次のように述べている。

「日本軍国主義侵略の歴史に正確に対応することが日本とアジア諸国が仲良く付き合っていくための前提条件である」

 「日本の指導者がA級戦犯を祀る靖国神社への参拝を堅持することが日中関係をひどく損ね、日本の国家利益にも符合しない」

最近外交部などが言っている中国の日本に対する見方を、唐家センが確認したという点が重要。中国の対日方針に変わりなしということがわかる。

この日「国際周刊」のページは「重要な戦略チャンスの時期にある中国」という特集を組み、外交問題の専門家の文章が掲載されている。その中に中ロとか米中、中EUの関係については独立した文章が掲載されているが、日中関係については独立して文章が掲載されていないのはちょっと残念であるが、日中関係を反映している。中国側に言わせれば「自業自得」ということだろう。

それにしても唐家センの発言のようなことを聞くといつものことながら、なぜ中国に「アジア諸国」を代表されなければならないのか、日本の国家利益をうんぬん言われたくないなあと思う。

 

20051219

(1)中央機構編制委員会辧公室責任者が機構編制管理について「5つの認めない」を強調

現在中央は政府、特に地方政府の機構削減を進めようとしている。その背景に市場経済化への対応がよく挙げられるが、要はコスト削減と中央集権の強化ということだろう。それを取り仕切る中央機構編制委員会の事務局にあたる辧公室の責任者のインタビューだが、「5つの認めない」などと強調するあたり地方政府の抵抗がかなり強いと思われる。

5つの認めない」とは以下の通り。

@編制以上の人員を置かない

A勝手に内設機構を設置したり、内設機構の格上げを認めない

B指導者の職数配置の関連規定の違反を認めない

C越権の審批機構の編制を認めない

D上級業務部門が下級に関与する機構編制を認めない

責任者は地方政府が遵守するかどうかを監督するために、通報告発電話を設置し、民衆に監視させるとある。機構改革はこれからの政治改革の重点の1つになる。問題はそれが実行されるかどうかだ。通報告発電話は地元政府につながるようになっている。すると既得権益を守りたい、削減に反対の立場をとると思われる地元政府は通報を隠ぺいする可能性もある。また民衆も地方政府では誰がかけたかわかりやすくなることからなかなか批判できず自己抑制をする可能性がある。中央宛の通報メールアドレスも公開されており、公平性という点ではメールの方が高いと思われる。こうした通報がどのように実施され、それが改革の中でどう反映されているのかわかればいいのだが。

 

(2)吉林省で第2期行政審査認可の権限下放を実施

今年6月に続くもので、県に下放した経済社会管理権限876項目は省全体の権限の60%にあたる

 

20051220

(1)温家宝首相が来年の財政活動に対し重要コメントを発表したことが判明

コメント内容は穏健な財政政策の実施など。

 

(2)NGOが初めて扶貧活動に参加

「中国政府が初めて扶貧資源を公開し非政府組織に開放する」と表現。「資源」というのがよく分からないが、これまで非公開だった扶貧活動の実情を公開するということだろうか。

活動の内容は、政府とNGOが村級扶貧規劃項目を共同で実施するというもので、1100万元の財政扶貧資金を中国扶貧基金会に委託し、公募して選ばれた23NGOが江西省の22の重点貧困村の規劃項目を実験として実施するというもの。

貧困扶助活動にNGOが参加することをどう評価するか。貧困扶助活動というのはある意味政治的なイシューなので、NGOを参加させるのは画期的なことである。貧困の実態も明らかにされるわけだし、貧困が起きている構造的な原因も明らかになるかもしれない。そのときNGOが真のNGOとして活動できるか、当局の監督の下で限定的な、名目的な役割だけなのか注目したい。これについての後追い報道があればいいのだが。

 

20051222

(1)中央政治局第27回集団学習が開催され、議題は行政管理体制改革について

議題は「行政管理体制改革と経済法律制度の完備」、講師は中国政法大学法学院の馬懐徳教授と中国人民大学法学院の史際春教授。

 胡錦濤が強調したことは以下の通り。

(1)政府職能転換の重点

@政府と企業の分離、政府と資産の分離、政治と事務の分離、政府と市場仲介組織の分離−の推進

Aマクロ調整の強化、整備

B行政許認可の削減、規範化

C政府職能を経済調整、市場の監督管理、社会管理、公共サービスに転換する

 (2)行政管理の決定システムの整備

@経済社会発展の全局に関わる重大な政策決定に対する協商と協調のシステム

A専門性、技術性の強い重大な政策決定に対する専門家の論証、技術コンサルタント、決定評価の制度

B民衆の利益と密接に関わっている重大な決定に対する公示、公聴制度

決定の科学化、民主化を進めることが目的

(3)行政法制建設、経済法制建設の強化

@権利と責任を明確化、行為の規範化

A職権行使、職責履行の保証

(4)行政管理権力に対する監督システムの整備

@決定や執行など節目に対する監督の強化

A科学発展観や正確な政治成績観を体現する幹部の実績審査評価制度の構築

B政務公開制度の推進

C人代、政協、司法機関、人民大衆、世論など法に基づく監督システムの整備

 

(2)国務院港澳事務弁公室が香港特別行政区の2007年行政長官選挙、2008年立法会選出方法改正案が否決されたことにコメント

否決は香港市民の主流の民意ではない」

 「香港の実際の状況に適合した民主発展の道を模索し、最終的には基本法が規定した普通選挙の目標を実現する」

 

20051225

(1)農業税廃止による中央財政補填は2005年に140億元になることが判明

地方税にあたる農業税の廃止により、廃止分を沿海発展地域は自己負担、穀物主産地区と中西部地域は中央が2005年に140元を補填した。ちなみに2004年は216.6億元を中央が補填した。

 

(2)中共中央が黒龍江省、貴州省、湖南省、重慶市の党委員会書記を決定

@黒龍江省宋法棠銭運録(前貴州省党委書記)

宋は松花江水質汚染事故の引責も考えられるが、65才になったので(4012月生まれ)自動的に退職。

A貴州省銭運録石宗源(前国務院新聞出版総署長)

石は68年から00年までずっと甘粛省で活動しており、74年から82年まで甘粛省で活動していた胡錦濤と重なるが、重なる時期の石は甘粛省の地方にいたので、直接の接点はないと思われる。

B湖南省楊正午張春賢(前交通部長)

楊は9810月から現職とすでに長期にわたっており、またまもなく65才になるので(411月生まれ)自動的な退職。張の就任の背景は不明。

C重慶市黄鎮東汪洋(国務院辧公庁副秘書長、0412月から国務院三峡工程建設委員会委員)

黄も41年生まれ(何月かは不明)なので自動的な退職。汪は重慶と関係が近い職に就いたのでなんとなく納得。83年から84年まで共青団の安徽省副書記だったが、これを「共青団派」とカウントするか。

 

20051227

(1)全国農村義務教育経費保障システム改革工作会議開催

1223日の国務院常務会議の決定、24日の「農村義務教育経費保障システム改革の深化に関する国務院の通知」公布を受けて開かれた会議。

 農民が義務教育を受ける権利は機会の公平の観点から重要視されており、政府による金銭的な補助が進められている。ここに来て、国務院が本腰をあげてこの問題に取り組み始めたわけで、2006年の民衆重視の目玉になるだろう。逆に言えば中央が政策を出しても、地方がやってこなかったので、国レベルで推進することを宣言し、地方にプレッシャーを与えたということです。そのことを地方に伝達するための会議である。