第65回 2005年11月の『人民日報』(2006年1月2日)

 

20051101

(1)胡錦濤総書記兼国家主席がベトナム共産党書記と国家主席と会談

中越両党、両国関係発展のための5つの建議を提起した。

 「経済技術合作協定」に調印しているので、ベトナムには中国からの援助が行っていることがわかる。

 

(2)唐家セン国務委員が江丙坤国民党副主席と会見

先日もまた連戦が訪中していました。国民党のハイレベルの訪中が続いており、国民党との関係はいいということです。しかし国民党は所詮野党。与党の民進党と交渉ができなければ、台湾との関係の大勢には大きな影響はないかと思う。日本との関係も同じで、小泉政権と話し合いが進まなければ、周辺の政治家では何の影響力もない。台湾との関係も日本との関係も本丸に踏み込む決断のできない相変わらずのやり方しかできない胡錦濤政権の政策の欠乏を示している。

 

(3)小泉内閣発足を報道

安倍晋三、麻生太郎の入閣を評して「小泉内閣の主要メンバーは靖国神社参拝支持に属する人たち」。

 

20051102

(1)国家発展改革委員会など6中央官庁連名による「循環経済試点(第一期)工作を組織し展開することに関する通知」を通達

115ヵ年計画の重要テーマの1つである循環経済構築について国家レベルの実験がスタートする。

 通知を出したのは国家発展改革委員会、国家環境保護総局、科技部、財政部、商務部、国家統計局の6つの官庁。

 実験単位と実験の目的は以下の通り。

  @鉄鋼、有色金属、化工など7重点業種42企業:循環経済発展モデルの模索

 Aリサイクル4重点領域17社:資源の循環利用システムの構築

B国家級と省級の開発区、重化学工業集中地区、農業モデル地区など13産業パーク:循環経済モデルの規劃、構築、改造に応じた産業パーク構想の提起

C北京市、遼寧省、上海市、江蘇省、山東省、重慶市(三峡ダム地区)、寧波市、銅陵市、貴陽市、鶴壁市:都市発展の循環経済モデル構想の模索

「循環経済」ってよくわからなかったが、この通知は比較的よくまとまっているので、何となくイメージがわく。特別な意味ではなく、本当にエネルギー節約とか資源の再利用とか、それは環境問題やエネルギー問題と直結するという言葉通りのことだ。「科学発展観」よりわかりやすいタームである。しかしそれが中国でうまく実施されるかどうかは別問題だが。

 

(2)中央台湾工作弁公室が国民党関係者と実務協議を行い、共同意見を作成

陳雲林主任が訪中している江丙坤国民党副主席と会見しているが、それよりもこの共同意見の方が中台間の交流についての比較的具体的な内容が盛り込まれていて興味深い。しかし国民党との取り決めだから実際の影響力には懐疑的だ。

 

20051104

(1)江新鳳の評論「日米軍事同盟の冷戦思考」を掲載

江は中国軍事科学院世界軍事研究部研究員。

 

(2)陳錫文の論文「社会主義新農村建設を推進しよう」を掲載

陳は中央財経領導小組弁公室副主任兼中央農村工作領導小組弁公室主任で、中国の農業政策、今では「三農」政策立案のキーパーソンである。

 「社会主義新農村」という第115ヵ年計画の目玉タームを説明している。

 

20051106

(1)陜西省西安市で「一村一品」国際シンポジウムが開催され、曾慶紅中央政治局常務委員が開幕式に出席

陜西省政府、農業部、国家外国専家局、大分県の共同主催による。

 シンポジウムは交流、協力、発展を主題とし、一村一品の経験を総括し、一村一品の理念の現地化の発展と創新を推進し、様々な国家と地区の間の経済発展と友好協力を促進することがねらいであると説明されている。

 一村一品というのは大分県平松知事(当時)の提唱で大分県で始まった農村興しの政策である。曾慶紅はシンポジウムの前にタイの副首相と会見し、中国政府は三農問題の解決を高度に重視していると述べており、この一村一品から農村振興のヒントを得たいようだ。

他方このようなテーマのシンポジウムに共産党の序列5位の大物指導者が出席したのは、大変違和感がある。純粋に中央の農村問題への関心の高さを示すものと理解できるか。彼はこのシンポのために陜西省に来たのか、陜西省視察のついでに出席したのか。

 どちらにせよ、対日関係改善における民間交流を重視する中国側の姿勢を考慮すれば、対日関係において影響力のある指導者といわれている曾慶紅がこの程度のシンポに出席していることは政治的な意味があると考える。

 曾慶紅は4日にシンポジウムに参加する村山元首相と平松大分県元知事と会見し、「(日中関係がよろしくない)責任は中国側にはない。日本の指導者がA級戦犯を祀る靖国神社を参拝することは中国人民の感情を深く傷つけ、両国関係の政治的基礎を損ねた」とこれまでの中国側の主張を繰り返す一方、「一村一品は陜西などの農村経済の発展をもたらした。中日両国の人民の間で各種形式の友好交流を大いに展開し、中日関係と改善と発展を推進するために積極的な貢献をしなければならない」と述べ、民間交流を通じた対日関係の改善を重視するという胡錦濤政権の意思を示している。これをサインと理解すべきだが、曾慶紅と平松知事が仲良しだからといって、このラインが日中関係を良くするための直接的な効果を持つとか、何か重要な任務を持つとかいうことは考えられない。

 

20051109

(1)「就業再就業工作をさらに強化することに関する国務院の通知」発表

 

(2)「米中繊維貿易覚書」に調印

7回にわたる交渉の結果、まとまった。200611日から施行。

 これで薄煕来商務部長の評価が上がるだろう。第17回党大会で中央政治局委員、もしかしたら副首相ぐらいの抜擢があるかもしれない。

 

(3)範恒山の文章「行政管理体制改革を推進することに力を入れよう」を掲載

範は国家発展改革委員会体制改革司長。この行政改革ではよく発言しており、比較的まとまって行政管理体制改革を理解できる。

 

20051110

(1)「職業教育を大いに発展させることに関する国務院の決定」を発表

前日、就業再就業に関する国務院の決定が公表されており、国務院が就業問題に力を入れること表明したといえる。何か具体的な政策が始まるのかもしれない。

 

(2)小泉首相が中国と韓国との関係改善のために努力すると発言したことを報道

この発言を中国側が報道したことで、とりあえず釜山での日中首脳会談は実現するかなあと見る。

 

20051116

(1)外交部、APECでの日中首脳会談は実施せずと発表

実施する雰囲気にないことが理由。実現しそうな気がしたのだが。

 

20051117

(1)国務院常務会議で鳥インフルエンザ対策を討議

「重大動物疫情応急条例」(草案)の審議、原則採択、鳥インフルエンザ発生状況、影響、鳥飼育業発展支援に対する政策措置を研究。

 この会議を受けて、この日の夜衛生部が鳥インフルエンザの人への伝染と死亡者の発生を発表した。

 

(2)呉邦国中央政治局常務委員兼全人代常務委員長が角田参議院副議長と会見

呉邦国は「日本の指導者のA級戦犯の祀られた靖国神社参拝が中国人民の感情を損ねている」と言及する一方で、日中議会指導者の交流の必要性を言及しました。扇議長の招聘が示唆されている。

 角田副議長は日中友好人士らしく、別のページで紹介された。

 

20051118

(1)中韓共同声明発表、韓国が中国の市場経済地位を承認

一昨日の中韓首脳会談で締結された共同声明が公表された。

 できるだけ早い投資保護協定の締結を確認したこと、貿易投資発展促進に関する覚書に調印したこと、キムチ問題に関連し食品安全問題動植物の検疫問題の話し合いによる解決を確認したことなども含まれているが、そのうち韓国が中国の市場経済地位を承認したことに注目。

 中国の市場経済化は制度面でも運用面でも十分なものとはいえない。しかしアフリカや南米など途上国は中国からの援助目当てにこれまで市場経済地位を承認してきた。中国にとっては、どんな国だろうが承認国数が増えれば外交的に有利であるため、ここ数年積極的に「承認しくれそうな国」から「市場経済地位承認外交」を展開してきた。

 他方、日本や米国、EU諸国は承認していない。それは中国の市場経済システムが本質的に市場経済とは異なることを理解しているからだ。そしてそれ以上に外交的にも中国を同じような価値観を持つ国家と認めるわけにはいかないからだ。その点では理性的な対応をとっている。

今回韓国があっさり承認してしまった。市場経済地位承認が外交的にどういう意味を持つのか、今の廬武鉉大統領はおわかりになっていないようだ。韓国はどうしてしまったのだろうか。後で気がついても遅いのだが。

 

(2)曹剛川中央軍事委員会副主席兼国防部長が科学発展観の貫徹を指示

「胡錦濤主席が国防軍隊建設の中で科学発展観の実現を貫徹することを堅持するよう強調した重要指示は、国防軍隊建設の方向性、根本性の問題をしっかりつかんでおり、更に高い出発点で国防軍隊建設を推進する上での非常に重要な指導意義を備えている」と発言しており、胡錦濤の科学発展観への支持表明ととれる。

 

(3)「議政建言周刊」で労使関係を特集

その中に、中国人民政治協商会議委員の姚建亭の論文「三者協調システムを構築しよう」が掲載されている。

 従業員の合法的な権益の侵害が依然存在しており、労使間の対立状況は相変わらず増えている。そのため政府、労働組合、企業代表の三者協調システムの構築が必要だという内容だ。

 労使関係の特集自体が大変興味深く、姚論文もコーポラティズム的な調整システムの提案をしている。従業員不在のシステムのように思われるが、労働組合が従業員の利益を代表しているということだ。現在の労働組合は従業員を代表しているのだろうか。

 

20051121

(1)胡錦濤国家主席がブッシュ米大統領と会談

胡錦濤が建設的協力関係のさらなる発展のための5つの建議を提出

@積極的なハイレベルの交流の現状を維持する

A経済貿易協力の新局面を構築する

Bエネルギー領域での相互協力を強化する

C反テロ、武器拡散防止、鳥インフルエンザ防止撲滅問題での協力を強化する

D人文領域での交流協力を拡大する

主な会談内容は、米中関係のグローバル化(6カ国協議)、経済貿易問題(貿易摩擦、知的財産権、人民元切り上げ)、台湾問題といったところ。

胡錦濤は、平和発展の道(外交政策)を説明して、中国脅威論に反応した。また民主政治と人権事業の発展について国情から出発していることを説明した。

会談終了後共同記者会見を実施した。

 

(2)江西省共青開発区で胡耀邦同志生誕90周年記念座談会開催

江西省共青開発区は胡耀邦のお墓があるゆかりの地。

これまでの功績を称えるが、18日の胡耀邦同志生誕90周年記念座談会での曾慶紅の演説の内容を越えるものではない

 

20051122

(1)海軍艦隊がパキスタン、インド、タイを訪問していることが判明

現在パキスタンに寄港中。これらの南アジアの国々と軍事交流が進んでいること、またパキスタンとインドのバランスをとっていることがわかる。

 

(2)江蘇省射陽県での党代表大会常任制の実施状況を報告

変化

@会議が5年に1回から毎年1回になったこと

A党委員会と規律検査委員会の指導グループの評価をするようになったこと

B県党委員会委員の補充が頻繁になったこと

党代表大会が毎年開かれるようになり、職務も増え、プラス効果が多い。

解決すべき問題

@党代表大会と人民代表大会の政策決定の関係

A党代表の日常的な活動方式

B党代表大会の常設機関の設置の必要性

 党代表大会の常任制は党代表、ひいては党の力を高めることになるため、人民代表大会との関係が問題になってくるだろう。常任制はやっぱり党強化の政策である。

 

20051126

(1)中央政治局会議が開かれ、現在の経済情勢の分析、来年の経済工作の研究、文化体制改革工作の深化を討論

まもなく開かれる中央経済工作会議の準備が行われている。

 中央政治局会議の内容も第115カ年長期計画の内容とほぼ同じで、中央経済工作会議もあまり変わらないだろう。

 

(2)李君如の文章「社会主義調和社会の科学発展観を構築しよう」を掲載

李君如は中央党校副校長です。党の理論構築の中心人物の1人であり、科学発展観を理解する上では大事な文章である。

 

20051128

(1)中共中央がチベット自治区党委書記代理に張慶黎を決定

張は新疆ウイグル自治区副主席。今年1月に現職に就いたばかりなので、予定外の異動である。

 チベット自治区党委書記の楊傳堂も昨年12月に現職に就いたばかりなので、これも予定外の異動である。

 張は過去に中国共産主義青年団中央工農青年部で活動しており、それは胡錦濤が共青団のトップだった時期と重なっており、胡錦濤と直接一緒に活動した可能性のある「共青団派」です。他方、楊は1987年に山東省共青団の書記ですが、胡錦濤と直接活動したことはなく広い意味での「共青団派」になります。

 今回の人事異動は、現職在職期間が極めて短いことと、2つの少数民族地区のトップの異動であること、広い意味での「共青団派」の出身者であることから、胡錦濤の権力基盤固めと関係があるかもしれない。

 他方、省レベルの党委書記の交代で「代理」がつくことは珍しく、最近では福建省党委書記だった宋徳福が病気で辞職した時後任が「代理」だったことから、楊が病気の可能性も否定できない楊傳堂は過労による病気で今年9月から入院中であることが判明)。

 

(2)楊晶の文章「速く立派に発展を実現するよう努力しよう」を掲載

楊は内モンゴル自治区主席。基本的に胡錦濤支持の文章である。最近省レベルのトップによる胡錦濤支持の文章がよく掲載されている。胡錦濤への忠誠心を示すことが狙いのように思われる。

 

20051129

(1)中央第3期共産党員先進性保持教育活動工作会議が開催され、胡錦濤の重要指示の学習を指示

胡錦濤の指示の内容は以下の通り。

 「農村基層党組織に対し、農村の実際と結合し、社会主義新農村の建設という主題をめぐって正面的な教育を適切に展開し、党組織と党員隊伍の中に存在する突出した問題を解決し、改革発展の安定に影響する主要な問題を解決し、大衆が最も関心を持っている問題を解決し、是非とも実際の効果を獲得するよう要求する」

 農業問題解決のための政治動員を図っており、農業問題重視の姿勢を鮮明になっている。

 

20051130

(1)中央共産党員先進性保持教育活動指導小組が最近「第3期共産党員先進性保持教育活動指導意見」を公布したことが判明

3期は基層レベルが対象なので農村基層に力を入れることを強調。

 

(2)李学挙民政部部長の文章「中国の特色ある都市の発展の新構成を構築しよう」を掲載

これも中央閣僚による胡錦濤支持を表明するための文章。

 李学挙は胡錦濤が中国共産主義青年団中央の第一書記だった時の組織部長であり、一緒に活動した側近の1人といえる。