第64回 2005年10月の『人民日報』(2006年1月2日)

 

20051001

(1)中央政治局第25回集団学習開催

議題は「海外の都市化発展モデルと中国の特色ある都市化の道」。講師は同済大学唐子来教授と北京大学周一星教授。

 

(2)于山の文章「ヒルが小泉に『温度上昇』を督促」を掲載

米国のヒル国務次官補が米国上院の公聴会で「日中、日韓の良好な関係が米国の利益に符合する」と発言したことを取り上げ、日中関係に対して論評したもの。

 文章は、日中関係の「政冷」(政治関係の冷え込み)は小泉首相就任により生じたもので、日中関係は1972年の国交正常化以来「広い分野で温度を下げている」という最も厳しい局面を迎えていると言う。そして実際「温度上昇」は難しくない、小泉が実際の行動をもって「冷え切った空気」を作り出さなければ、東北アジアの大気候の「温度は低下しない」し、日中関係は「冷から暖へと転じる」と述べている。

 日中関係の改善が米国の希望であるというように、米国の圧力を借りようとしているようでちょっと興味深い。そうしてでも中国が日本との関係改善を希望しているというサインだとすればいい傾向と言えるかもしれない。こうした米国の圧力を利用するというやり方は昨年の台湾総統選挙でも見られた。

 しかし「実際の行動」を求めている点ではこれまでの主張と変わらない。「実際の行動」とは、あくまでも日本に譲歩しろ、つまり中国のいうとおり行動しろ、と言っているにすぎないため、決して楽観できない。中国の日本に対する「実際の行動」を注視したい。

 

20051013

(1)胡錦濤が南京での第10回全国運動会開幕式に出席

北京五輪も近いし、体育への関心の高さをアピールするための出席か。

 

(2)唐家セン国務委員が野中広務日中友好協会名誉顧問と会見

野中は前日曾慶紅中央政治局常務委員と会見しており、日中関係の重要な政治的パイプといわれてきた「曾慶紅−野中ライン」のさながら再確認といったところでしょうか。しかし野中は政治家としては終わった人だし、曾慶紅も胡錦濤の後塵を拝している感があるので、「曾慶紅−野中ライン」もどのくらい日中関係改善に寄与できるか疑問だ。旧知の友と会ったぐらいのものだろうか。

 唐家センは会見で、4月に胡錦濤が提起した対日関係に関する「5点主張」に言及しており、中国の対日スタンスの基準がこの5点主張にあることを確認している。つまり、中国の対日スタンスに変更はないということだ。ちなみに報道によれば曾慶紅はこの5点主張に言及していない。

 

20051014

(1)呉邦国中央政治局常務委員兼全人代常務委員長が中国農業大学、中国農業科学院を視察

5中全会が終わってすぐに農業関係の機関の視察に行っている。いわゆる「三農」問題を共産党が重視していることのアピールするため。

 

(2)曾慶紅中央政治局常務委員兼国家副主席がイラン外相と会見

イラン核問題のIAEA枠内での解決という中国の原則を再確認した。

 

20051017

(1)武大偉外交部副部長が佐々江外務省アジア大洋州局長兼6カ国協議日本代表と会見

 

(2)江蘇省の公務員の新規採用で試験による公開採用が95%以上に達する

 

20051019

(1)外交部が2324日に予定していた町村外相の訪問の延期を通達

「現在の厳しい情勢から時期がよろしくない」というのが理由。

関連して清華大学の劉江永の評論「小泉の弁解は自己矛盾している」が掲載されている。劉は3つの矛盾を挙げ、小泉首相のA級戦犯を祀る靖国神社への参拝を非難している。

 

(2)「公安部門行政許可工作規定」が121日から施行

公安部門の仕事ぶりに対する人々の不満が非常に多いようだ。今年上半期に公安部門は「信訪」(異議申し立て)に積極的に対応しようという一連のキャンペーンを展開したが、公安への不満が多いことへの対応のようだ。この規定も行政許可に関する業務をきちんとやろう、できなければ、人々から投書があれば処罰規定もあるといったことが含まれている。

 

20051020

(1)曹剛川中央軍事委員会副主席兼国防部長が訪問中のラムズフェルド米国防長官と会談

曹剛川が中国の軍事力発展状況を説明する中で「中国の国防費は為替レート調整をして320億jで、これは実際の数字で国防収支を隠す必要もなければ、その可能性もない」と言及している。中国の国防費の不透明さの問題を公にして、その真偽を正すことで、国外に国防費の透明性をアピールする狙いがある。

 

(2)「中国的民主政治建設」白書発表

政治に関する白書の発表は初めてのこと。中国の考える民主政治とは何かをアピールするのが狙い。これによって、中国の考える民主政治とは何かを知ることができる。納得するかどうかは別にして、体系的にまとめられている。稿を改めて整理してみたい。

 

20051021

(1)国家統計局が20051-9月期のGDP成長率を9.4%と発表

相変わらず高い成長率である。中身を吟味しなければならないが、引き締め政策が功を奏していないように思われる。こんなに高い水準が続いて大丈夫なのか。

 

(2)中央先進性教育活動領導小組第10回会議開催、賀国強組長兼中央組織部長が指示

5中全会と中央政治局常務委の重要指示、中央党建工作領導小組会議の精神を真剣に貫徹するよう指示した。

 また114日の胡錦濤の重要論述をしっかり学習するよう指示している。この重要論述はこの教育活動の胡錦濤の考えを示しているものでかなり重要らしい。

 

(3)「中国発展の道国際学術シンポジウム」の内容を掲載

中央翻訳局比較政治経済研究中心と中国社会科学院などの共催によるシンポジウム。

 中国の発展モデルについてシンポのある参加者の発言は何となくうまく体系的にまとめている。それは以下の通り。

 中国の発展モデルの特徴と成功経験

@国内改革と対外開放はコインの裏表で、互いに補完し合いうまくいく、互いに補っていっそう長所を発揮する

A国情に基づき、経済グローバル化に積極的に主動的に参加すると同時に、自らの特色と自主性を維持する

B改革、発展、安定の関係を正確に処理する

C市場に必要な経済体制改革を堅持すると同時に、強力なマクロ統制で補完する

D漸進改革を発展方針の主とし、同時に必要な突破性の改革を進める

中国モデルの啓示

@今後の発展の中で経済建設を中心とし、同時に全面的協調的持続可能な発展を追求する

A発展を促進させると同時に、社会公平維持をさらに突出した位置に置き、人と人、地域と地域、都市と農村のバランスのとれた発展を追求する

B経済体制改革の全面的推進、社会建設と管理の強化と同時に、社会主義民主政治の発展に力を入れ、人民民衆と各方面に積極性、主動性、創造性をさらに発揮させる

もう少しおもしろいかなあと記事を読み始めたが、結局内容自体は現状肯定的なものにすぎない。しかし胡錦濤政権の方針には合致しておりうまくまとめてある。

 

20051024

(1)第10回全国運動会閉幕式に温家宝首相が出席

開幕式の胡錦濤に続き、閉幕式には温家宝が出席するとは何とも力の入れようがスゴイ。オリンピックはなんとしても成功させなければという意気込みが伝わってくる。

 

(2)重慶市政府が「重慶市政府重大決策程序規定」を制定

政策決定の議決、公開、評議・審査、公聴、フィードバック、評価、責任追及などを規定し、決定、執行などの責任規定を設定している。

 地方政府では初の規定だが、こうした規定は結局どのように運用されているのかがわからないので、立派な規定ではあるが、どのくらい役に立っているのだろうか。

 

20051027

(1)胡錦濤国家主席がシンガポール首相と会見

普通の外国要人との会見なのだが、「東アジアサミットを重視している」と胡錦濤が発言したことに注目。なぜならば中国側が東アジアサミットとか東アジア共同体といったアジア諸国との地域統合に関心を持っているかどうかということが最近私の周りで議論になったからです。胡錦濤自身が「東アジアサミット」に言及したのは珍しい。

 

(2)上海協力機構首相会議が開催され、温家宝首相が出席

参加国の首相が政府間災害救助相互協定、銀行間協力(連合体)協議、実業家委員会理事会第1回会議紀要に調印した。非政治分野の協力関係がかなり進んでいることを伺わせる。

 

20051028

(1)温家宝首相がカザフスタン首相、キルギスタン首相、パキスタン首相、モンゴル首相、イラン第一副大統領、インド外相と会見

上海協力機構(SCO)の会議先での会見だが、カザフスタン首相、キルギスタン首相はSCOメンバーだから当然として、パキスタン首相、モンゴル首相、イラン第一副大統領、インド外相という非SCOメンバーと会見したのは意外。昨年のいくつかのSCOの会議にアフガニスタンとモンゴルがゲスト参加していたのは確認しているが、パキスタン、イラン、インドまでもが今回のSCOの会議に参加していたということだから、地域協力機構としてのSCOの力は侮れない。