第58回 5中全会コミュニケの主な内容(2005年10月12日)

 

5中全会が11日閉幕した。会議終了後に発表されたコミュニケによれば、5中全会の議題は次の2点だったようだ。

(1)胡錦濤の中央政治局工作報告

(2)「国民経済と社会発展の第115カ年規画の制定に関する中共中央の建議」の審議、採択

 これまでの中央委員会全体会議でも胡錦濤の中央政治局工作報告は行われたがその内容が公表されたことはない。そのため今回の報告も公表されることはないだろう。

 建議については、後日公表されため、その全容はわからない。しかし、1012日付『人民日報』に掲載された関連社説とコミュニケから建議の主な内容がわかる。以下、整理しておこう。

 

●第115カ年規画期の「6つのやらなければならないこと」(6つの必須)の原則

(1)経済の安定、かなり速い発展を維持しなければならない

(2)経済の成長方式を転換させなければならない

(3)自主創新能力を高めなければならない

(4)都市と農村、区域の協調発展を促進しなければならない

(5)調和社会の建設を強化しなければならない

(6)改革開放を絶えず深化させなければならない

 

●第115カ年規画期の経済社会発展の主要目標(訳は「人民網日本語版」20051012日より)

(1)構造改善、効益化、消耗抑制を土台に、1人あたり国内総生産(GDP)を2010年までに2000年の倍にする

(2)資源利用効率を大幅に引き上げ、単位GDPあたりのエネルギー消費を、「第10次五カ年計画」終了時より20%前後引き下げる

(3)自社の知的財産権と有名ブランド、比較的強い国際競争力を持つ優れた企業を育成する

(4)社会主義市場経済体制を比較的整った状態にし、開放型経済を新たなレベルに引き上げ、国際収支をほぼ均衡させる

(5)9年制義務教育を普及させ、確実なものにする。都市部の雇用増加を維持し、社会保障システムを比較的整った状態にし、貧困人口を引き続き減少させる

(6)都市・農村住民の所得水準と生活の質を幅広い範囲で向上させ、物価水準をほぼ安定させる。住居・交通・教育・文化・衛生・環境などに関する情況を大きく改善する

(7)民主法制と精神文明の構築において新たな進展を目指す。社会治安と安全生産環境をさらに改善し、調和社会の構築で新たな進歩を目指す

 

●第115カ年規画期の経済社会発展と改革開放の主要任務

(1)社会主義新農村の建設

(2)産業構造の改善昇級の推進

(3)区域協調発展の促進

(4)資源節約型、環境友好型社会の建設

(5)体制改革の深化と対外開放水準の向上

(6)科学教育による国の振興戦略と人材による強国戦略の実施

(7)社会主義調和社会建設の推進

 

●科学発展観の位置づけ

 第57回でも書いたように「科学発展観」の扱われ方に注目したが、「建議」にはどのように盛り込まれたのだろうか。

115カ年規画を制定するにあたり、「ケ小平理論、『三つの代表』重要思想を指導とし、科学発展観を全面的に貫徹し実現しなければならない」「科学発展観をもって経済社会発展の全局を必ず統率しなければならない」としている。そして「発展を指導する世界観であり方法論を集中的に体現したものであり、社会主義現代化建設の指導思想に対する重大な発展である」としている。このことから科学発展観がケ小平理論、「三つの代表」重要思想の次に位置する胡錦濤政権の体系的な指導理論と位置づけられたようであり、注目しておかなければならない。

最後に人事はいじらなかった。しかし、繰り返しになるがそのことは胡錦濤の政治的な力が小さいことを決して意味しない。むしろ慎重さを選んだということだろう。