第57回 5中全会のポイント(2005年10月8日)

 

 今日から始まる中国共産党第16期中央委員会第5回全体会議、いわゆる5中全会。だいたい年に1回開かれる共産党にとって重要な会議である。

今回のテーマは、すでに発表されているとおり来年から始まる第115カ年計画、2020年までの中長期計画のアウトラインになる綱要の発表にある。しかしそこから胡錦濤の権力基盤の強弱を見極めたい。私にとっての会議のポイントはまさにこの点にある。

 

●綱要は総花的な内容、「科学発展観」の盛り込まれ方に注目

綱要の内容は、総花的なもので、マクロ目標、農業、企業改革、産業構造転換、地域発展などいろんな項目が重点として盛り込まれる。そのため何に重点が置かれるのか非常にわかりづらいものとなるのは最近の傾向である。「計画」から「規劃」に名称が変わる5カ年計画としてはそれでいいのかもしれない。別の言い方をすればもうあってもなくてもいいものということだ。その中で、それらを総括するキーワードは、持続可能な経済成長を目標に置いた「科学発展観」ということになるだろう。2002年の胡錦濤政権発足後、「親民路線」「人を基本とし」「調和社会」などいろんな言葉で胡錦濤政権の方向性が形容されてきたが、ここに来てどうやらそれらを含めた形で「胡錦濤=『科学発展観』」で収斂されてきたように思われる。この「科学発展観」というキーワードは江沢民時代に提起された「3つの代表」重要思想の発展型と位置づけられるものの、胡錦濤の独自色を出すためのキーワードということになるのだろう。第115カ年計画は胡錦濤が政権掌握後初の5カ年計画であるため、「科学発展観」がどのように盛り込まれるか、胡錦濤の政権基盤の強弱を図る上でのバロメーターになると見ている。

 

●陳良宇よりも李克強の人事に注目

中国国外のメディアが5中全会で注目をしている人事だが、何も変わらないと見ている。

昨年来の経済引き締め政策に異議を唱えてきたと言われる上海市党委員会書記の陳良宇が交代するかどうかが特に注目されている。陳良宇の後任に胡錦濤が腹心を送り込めれば、胡錦濤が江沢民の牙城である上海を掌握したことを意味し、胡錦濤の権力基盤の強化につながるという見方がある。しかし、いまや中国1の経済力があり、これまで地元のたたき上げが書記になってきた上海のトップに胡錦濤といえ腹心を送り込むことはなかなか難しいだろうと考える。それは胡錦濤の力が弱いということとは別の問題である。また陳良宇は中央政治局委員であり、次期中央政治局常務委員入りが堅い大物である。そんな人物を上海のトップから外すと、副首相として中央入りさせるしか処遇の仕方がないだろう。副首相にもってくると首相の温家宝は仕事がやりにくいだろうし、今の時期の中央入りは2007年の第17回党大会に向けての人事で陳良宇の力が大きくなり胡錦濤もやりにくいのではないだろうか。それならば、2007年までは上海に置いておいた方が得策と考えないだろうか。以上のようなことが考えられるため、5中全会での陳良宇の交代はないだろう。

遼寧省党委書記で、胡錦濤の腹心の1人と見られる李克強の中央政治局候補委員入り、中央辧公庁主任への転任説も中国国外メディアから伝えられている。これも遼寧省のトップになって1年も経たないのに交代するということに違和感を覚えるため、なかなか難しいかと思っている。しかし、胡錦濤が第17回党大会で李克強を重要な役職に起用したいと考えるならば、やるかもしれない。この人事ができるかどうかこそ胡錦濤の力を図る上でのバロメーターになるかもしれない。しかしできなかったからといって胡錦濤の権力基盤が弱いことを意味しない。胡錦濤が無理をしなかったということである。

 もし人事で何か動くとすれば、もとより5中全会自体とは直接関係ないのだが、中央政治局委員で天津市党委書記の張立昌が天津市党委書記の職を解かれるかもしれない。最近胡錦濤が天津市を視察しているし、天津市党委書記の職があまりに長すぎる。交代のタイミングとしては適当かと。