第55回 2005年7月の『人民日報』(2005年10月1日)
この月は、失業者の再就職、農村での集団抗議活動など社会安定に関する記事に注目しています。
20050701
(1)国家知識産権戦略制定工作領導小組第1回会議開催
⇒今年1月にできたグループで、グループ長はあの呉儀副首相です。
国を挙げて本腰を入れて知的財産権に対する取り組みを行おうということでしょう。しかし、これはニセ物作りを止めさせようというのではなく、これからはモノを作るよりも知的財産権が商売になるということで、特許制度などを整備して、グローバルスタンダードにして、経済発展につなげていこうという戦略でしょう。
(2)国際周刊面で上海協力機構を特集
⇒30日から胡錦濤国家主席が上海協力機構首脳会談出席などのため、ロシアなどへ外遊に出てきます。また機構自体も設立4周年になります。それにちなんだ特集です。
20050704
(1)胡錦濤国家主席、ロシア「西シベリア連邦区」を訪問し責任者らと座談会
⇒当区と黒龍江省の経貿科技合作協定を締結。
胡錦濤が協力拡大のための4つの建議を提起。
20050706
(1)陳雲山中央台湾工作弁公室主任が来訪中の江丙坤と会見
⇒江は台湾の中国国民党副主席で、今年3月にも連戦主席訪中準備のために来訪しています。今回は情報産業関係の大陸訪問団の団長としてシンポジウム参加のため来訪しているようです。連戦主席が訪中したことで、国民党のトップクラスが訪中することが容易になったようです。一昔前では考えられないことで、国民党も落ちてしまったなあという感じです。
(2)何洪澤「代表性強化がカギ」
⇒「国連改革を語る」シリーズの2回目。
国連における発展途上国の存在感を高める必要があるという主張です。
たぶん昨日から始まったシリーズでしょうが、国連改革、とりわけ日本の常任理事国入り阻止にご熱心な様子で、中国にとっての当面の外交イシューの1つであるということです。
20050707
(1)7省区市就業再就業工作座談会開催、黄菊副首相が主催
⇒遼寧、吉林、黒龍江、天津、河北、内モンゴル、山東の関係者が集まって、就業問題について座談会を行った模様。黄菊が就業、再就職問題に力を入れて取り組むようカツを入れるための会議です。
こうした問題こそ、中国が力を入れなければならない問題だと思うのですが。
20050708
(1)李景田中央組織部副部長が先進性教育活動について語る
⇒李は中央共産党員先進性教育保持活動領導小組の副組長で、欧陽淞中央組織部部務委員が同小組メンバー兼同小組弁公室主任です。ということで欧が同小組を実質的に仕切っていることが分かります。
李は農村で発生する事件について次のように述べています。「われわれは、これを『集団性事件』と呼び、争乱とは呼ばない。・・・国民1人あたりの収入が1000ドルから3000ドルに達する時期は・・・『矛盾の突出期』である。・・・基層幹部について水準が高くない可能性があり、矛盾解決の能力が高くない可能性があり、その他の原因も加わって、一連の集団性事件が起きている。・・・先進性教育を通じて、これらの事件の発生を大幅に減少させると信じているが、当然全く発生しないという可能性も大きくない」。
農村での集団性事件の発生はやむを得ないという態度のようです。また発生の原因に基層幹部の質の低さを挙げています。
20050711
(1)習近平浙江省党委員会書記が北朝鮮訪問中に金永南朝鮮最高人民会議常任委員長と会見
⇒胡錦濤総書記の金正日、金永南への挨拶を伝達しました。
胡錦濤の挨拶を受けなければならないので、金永南が出てきたのでしょう。この代表団の役割は思ったよりも重要だったのかもしれません。6カ国協議に復帰するかどうか、という重要な時期であるだけに。
(2)海洋開発の特集掲載
⇒何本か文章が掲載されています。
20050712
(1)周永康公安部長兼国務委員が山西省、河北省を調査研究視察
⇒表向きは信訪工作の視察のようですが、河北省については例の定州市の農村での暴動事件の後始末だと思います。信訪工作は民衆の意見を聞くということですから、後始末も関連ありかと思うからです。
(2)山東省の郷鎮機構改革で行政編成を20.7%、事業編成を15.5%削減
⇒各省の改革成果披露の1つです。
この改革がコスト削減につながっているのでしょうか。検証の余地ありです。
20050723
(1)胡錦濤、温家宝らが全国青聯学聯会議委員・代表と会見
⇒常務委員9人全員が参加しているのには驚きました。この会議に出ている委員、代表が次世代リーダー候補ですから、指導部も力を入れているということでしょう。
(2)中央銀行貨幣政策委員会が貨幣政策諮問会を開催
⇒人民元の対米jレート2%切り上げ、固定相場制の改革を行った翌日に開かれたこの会議には、経済専門家が多数参加しています。珍しく参加者の名前が多数掲載されていました。
余永定(社科院世界経済与政治研究所所長)
巴曙松(国務院発展研究中心金融研究所副所長)
趙暁(国務院資産管理監督委員会宏観戦略部部長)
宋国青(北京大学教授)
鐘偉(北京師範大学教授)
趙錫軍(中国人民大学教授)
張曙光(天則経済研究所研究員)
梁紅(高盛(亜州)公司首席エコノミスト)
Gong方雄モルガン大通証券(亜太)有限公司首席エコノミスト)
哈継銘(中国国際金融有限公司首席エコノミスト)
陳興動(パリ百富勤北京公司首席エコノミスト)
李楊(社科院金融研究所所長)
など。
シンクタンクの研究者や学者だけでなく、民間の経済エコノミストも多数参加しているのが注目の1つです。この会議は、措置実施の翌日に開かれていますから、専門家たちに措置がいかにすばらしかったかを語ってもらい、措置の正当性を強化しようという狙いがあります。このことだけで彼らが胡錦濤政権の経済ブレーンであるとは言い切れませんが、これまで政権が彼らの意見を参考にしてきた可能性はあります。間接的なブレーンということは言えるかもしれません。彼らのこれからの研究成果にも注意を払う必要があるかもしれません。
20050726
(1)中央政治局会議開催、10月に第16期5中全会の開催を決定
⇒5中全会の議題は、@中央委員会への中央政治局工作報告、A第11次5カ年規劃に関する建議採択、です。
この中央政治局会議ではその他、現在の経済情勢と経済工作を討論しました。
(2)温家宝首相が税務系統の思想政治工作と幹部隊伍建設の強化に重要コメントを出したことが判明
⇒温家宝のコメントは全国税務系統思想政治工作会議で伝達されたものです。
温家宝が思想政治工作強化の重要コメントを出すほどだから税務部門がなんか大きな汚職でもやったのかもしれません。
20050728
(1)「行政執法制推進に関する国務院辧公庁の若干の意見」を発表
⇒法に依る行政を進める上での重要な指示です。
(2)国務院常務会議で、会計検査の整頓改革工作の設置を決定
⇒汚職の根源となっている政府部門の金の不正な使い方を正すために、各政府部門が今年11月までに国務院に改革状況を報告し、年末までに国務院が全人代に報告しなければなりません。
20050730
(1)先日死亡した経済学者、経済閣僚の薛暮橋を生前に見舞っていた指導者の序列で江沢民が第2位に掲載
⇒今年の春に国家中央軍事委員会主席を辞し、全ての公職から降りたはずの江沢民の序列がいまだに胡錦濤に次ぐ第2位にあることが確認されました。
これは党中央に対する江沢民の影響力がまだ侮れないということを示唆しているのかもしれません。
(2)最高人民法院が「農村土地請負制に関する紛争案件の審議に法律を適用する問題に関する解釈」を公布
⇒土地をめぐる訴訟が増えているため、最高人民法院が、法律適用の指針を提示したものです。
土地問題が深刻で、その解決が司法の場に持ち込まれるケースが増えているということは、当事者である一般市民が利益表出の手段として司法の場を選択していることを示唆しています。