第48回 2005年2月の『人民日報』(2005年3月6日)
2004年2月は、旧正月もあって党や政府の活動は途切れ気味でしたが、全人代に向けての世論作りをはじめ、非公有制経済支持の文件が発表されたり、党員の先進性保持教育活動がスタートしたりと大事な出来事もありました。また外交では北朝鮮の核をめぐり、米国やロシアと協議をすることも増えました。
20050201
(1)李肇星外交部長がライス米国務長官と電話会談⇒新任国務長官との挨拶
20050202
(1)1月25日から2月1日にかけて、温家宝主催の「政府工作報告」草案に対する意見交換座談会が4回開かれる
⇒招集されたのは、民主諸党派、全国工商連責任者、無党派人士、経済社会領域専門家学者、科学技術・教育・衛生・文化・体育界代表、企業界代表など
本当に役に立っているのか、それともパフォーマンスか、議論の分かれるところ
(2)2004年末の国有企業の下崗人員は153万人
⇒前年に比べ107万人減少
減少の要因は、@再就職工作が強化されたこと、A下崗労働者基本生活保障から失業保険への転換が加速したこと(つまり下崗人員というカテゴリーをなくしている途中)
20050204
(1)国務院辧公庁が「農民の都市での就業環境をさらに改善する工作に関する通知」を発表
⇒農村からの出稼ぎ労働者の権利保障などを進めるよう求める通達
まもなく来る旧正月の後、農村から出稼ぎ労働者がどっと都市に出て行くので、それに合わせ、政府が対策を発表したもの。
旧正月前に農民に対し、政府は出稼ぎ労働者のために一生懸命やってるよ、というアピールの側面もある。
(2)胡錦濤、パンチェン・ラマ11世と接見
⇒胡錦濤は、@愛国主義の発揚と民族団結と祖国統一への貢献、A時代に適応した自身の修養、Bチベット仏教と社会主義の適応―などを求めた。
昨日、テレビでこの模様を見ましたが、パンチェン・ラマ11世もずいぶん大きくなりました。時が経つのは速いものです。
20050207
(1)賈慶林、北京の牛街を視察、宗教関係者を見舞う
⇒牛街は北京市の宗教街。共産党が重視している宗教関係者を旧正月前に担当の国家指導者である賈慶林が挨拶に行くという年中行事の1つ。
20050208
(1)党中央・国務院主催春節祝賀会開催、胡錦濤主催、温家宝あいさつ
20050209
(1)胡錦濤、貴州省を視察、労働模範や民衆と交流
⇒春節前に指導者が民衆と交流して、党は人民のことをいつも考えていますよ、ということを示す好例のパフォーマンス。最高指導者自らがかつての赴任地である貴州省の貧困地域に行きました。胡錦濤が人民と餅つきをしているシーンがテレビで流れていました。これに人民が喜ぶわけです。
20050215
(1)黄菊副総理が福建省を視察、呉官正中央規律委員会書記が山西省を視察
⇒春節休み中の中央指導者の地方視察。党内序列第5位の黄菊は暖かい福建省にずっといたようで、いい春節休みを過ごしたなあという感じ。胡錦濤の言うことをよく聞いて、副総理として、大活躍ですから8日から14日までと長期間の福建はご褒美か。党内序列第8位の呉官正は貧しい山西省と対照的。その分10日から14日までと短かった。別に罰というわけではないと思う。貧困地域重視を示すため。
(2)李肇星外交部長、ロシア外相と電話会談。朝鮮半島核問題で協議
⇒北朝鮮の核製造済発言で、李肇星も春節休みもゆっくりできず、かわいそう。
20050217
(1)中央共産党員先進性保持教育活動指導小組が第1期活動に参加する単位に学習培訓工作を深めるよう要求する通知
⇒これから1年半党中央が気合いを入れて行う思想教育活動が、春節明けでとうとう動き出すという号令の通知。やれやれ。
(2)国務院第3回廉政工作会議開催、温家宝が講話
20050218
(1)李肇星外交部長、米国の新しい6カ国協議代表、韓国外務次官と会見
⇒北朝鮮をめぐる斡旋外交が活発化してきました
(2)成思危「民主集中性を貫徹し、三つの関係を立派に処理しよう」
⇒@集団指導と分担責任制の関係、Aトップとナンバー2の関係、B体制とシステムの関係
ごもっともな意見だが、現実は?
20050223
(1)中央政治局第20回集団学習開催、議題は社会主義調和社会建設について
⇒社科院社会学研究所李培林研究員、景天魁研究員が講師。
(2)「全国の都市、農村(城郷)で情勢政策宣伝教育を集中的に展開しよう」と題する社論を掲載
⇒社論を出すくらいなのできっと重要な活動。
矛盾の突出した時期、つまり最近人々の不平不満が充満しているので、人々に現在の情勢、当局の政策をきちんと伝え、理解させるための教育活動。
当局は矛盾突出に対する危機感は強く、上記の調和社会建設に力を入れるのも同様。成果が出ないとヤバイが難しいかなあ。活動は一杯ブチ上げるけど、あんまり真剣にやらないから効果ないし。
20050224
(1)党中央政治局常務委員会が9つの座談会開催し、常務委員会の活動に対する意見、建議聴取
⇒「『三つの代表』重要思想を実践することを主要目的とする共産党員の先進性を保持するための教育活動を立派に実践するために、省級党委書記、中央・国家機関関係部門責任者から第16回党大会以来の常務委員会の活動に対する意見と建議を聴取。
この時期なので全人代の政府活動報告案に対する意見聴取かと思ったら違いました。この手の党の思想教育キャンペーンをうまくやっていくための意見聴取はこれまで聞いたことがありません。
注目は中央政治局常務委員会の活動に対する意見や建議を聞こうということ。常務委員会の構成メンバーとは胡錦濤をはじめ党内序列トップ9人からなる最高意志決定機関に対し意見できるのだから、党内民主の一環としては画期的かもしれない。内容までは伝わらないが、各省レベルのトップや省庁のトップが対象なので、いろいろ不満が出てれば面白い。しかし、会議のために会議ならば実のないものです。保身に動けば何も言えないだろうし。
(2)国務院常務会議開催、炭鉱安全生産工作をさらに強化することに関する研究
⇒2・14遼寧孫家湾炭鉱ガス爆発事故で主管副省長を停職検査、集団責任者を調査結果を待って処分することを決定。
20050225
(1)国務院が最近「個体私営など非公有制経済を奨励、支持、導くことに関する若干の意見」を通達したことが判明
⇒内容概略
1.市場参入を緩和する
(1)参入を認める分野−@独占産業、A公用事業、インフラ、B社会事業、C金融サービス、D国防科学技術工業
(2)奨励−国有経済構造調整、国有企業再編
(3)奨励・支持−西部大開発、東北地区など伝統的工業基地振興、中部地区台頭への参加
2.財税金融支持の拡大
@財税措置、A貸付条件、B直接融資のルート、C金融サービス、D信用担保システムの確立
3.社会サービスの完備、充実
@社会仲介サービス、A創業サービス、B企業経営者と従業員の訓練、C科学技術開発奨励サービス、D国内外市場の開拓、E企業信用制度
4.非公有制企業と従業員の合法的権益の保護
@私有財産保護制度の整備、A企業の合法的権益の保護、B従業員の合法的権益の保障、C社会保障制度の建設、D企業工会組織の健全化
5.企業の質的向上
@国の法律、法規、政策、規定の執行、A企業経営管理行為の規範化、B企業組織制度の完備、C企業経営管理者の質の向上、C条件を満たす企業の大型化の奨励、D専門化提携、産業集積の発展
6.政府の非公有制企業に対する監督管理の改善
@監督管理方式、A労働監察と労働関係の協調の強化、B国の行政機関と事業単位の費用徴収行為の規範化、C非公有制経済の発展に対する指導の強化、D良好な世論の創造、E真剣に工作を実施する
⇒非公有制企業の大半である中小企業に対する様々な政府の支持措置があげられている。政府のお墨付きを示す重要文書。実際に運用されれば非公有制企業の発展に大きく貢献するでしょう。カギは地方政府や既得権益を持つ省庁が積極的に対応するかにかかっています。
(2)任仲平「小康社会を全面的に建設する中で先鋒模範作用を十分発揮しよう−中共党員の先進性保持を論じる」と題する論文掲載
⇒『人民日報』中央評論部の論文。例の教育キャンペーン支持の論文
(3)陳恵豊「政協の民主監督効力をしっかり保証しよう」
⇒全国政協辧公庁研究室副主任の論文
20050228
(1)遼寧省人民代表大会主任に李克強が当選
⇒同省党委書記の李克強が人民代表大会のトップにも就きました。党委書記と人民代表大会主任の兼務が省レベルの地方の最近の傾向。遼寧でもそうなった。
(2)広州市で市県級の5長の相互横すべりが進んでいる
⇒5長とは、@規律検査委書記、A組織部長、B法院院長、C検察長、D公安局長のこと
法制部門の権力のたらい回しというか、相互監督の効かない体制です。しかし、これが体制の安泰につながるという現実もありそうです。