第47回 2005年1月の『人民日報』(2005年2月14日)

 

20050105

(1)「2004年数字座標」掲載中、各地方の経済統計を紹介

「科学発展観」を重視する中で、数字ばっかりではないと言いながら、年頭より2004年の統計発表が続いています。昨日から始まった「2004年数字座標」では各地方の経済統計が次々と紹介されています。これでは、みんな「やっぱり数字か」って思うでしょう。そう簡単に数字からの脱却はできません。

 

(2)黄菊が1月1日から4日まで広西チワン族自治区を視察

温家宝も1日から3日まで、陜西省銅山市を視察しています。銅山市は昨年11月に大型の鉱山事故が起きたところで、被災者への慰問と安全対策の指示のためです。黄菊も生活困難者の慰問やASEANとのFTAでの経済交流の窓口としての当自治区の視察が目的です。中国は旧正月の方が重要ですが、新年から中央指導者が積極的に地方視察を行っています。

 

20050111

(1)周永康公安部長が来訪中の村田国家公安委員会委員長と会見

日中双方の公安部門の協力関係を確認。特に日本における中国人犯罪多発に鑑み協力強化か

 

20050112

(1)中央規律委員会第5回全体会議開催、胡錦濤が重要講話

この時期恒例の会議。党員の汚職を厳しく取り締まり、汚職を減らそうという決意表明の会議。かけ声ばかりがむなしい会議です。

 

(2)賈慶林政教主席が全国対外宣伝チベット工作会議代表と接見

民族区域自治制度とチベット地域の経済社会発展状況の宣伝強化を指示したようですが、こんな会議があること初めて知りました。

 

(3)「人権知識百題問答」連載開始

人権重視をアピールするためのもの。第1回目のお題は「人権とは何か」でした。

 

20050113

(1)国務院常務会議開催、「非公有制経済発展を奨励、支持、導くことに関する若干の意見」などを討論、原則採択

主な奨励、支持、導く内容:

@平等競争、一視同仁の法治環境、政策環境、市場環境を構築すること

A市場参入を拡大し、非公有資本がインフラ、独占産業、公共事業、法規で禁止されていない産業に導入されること

B財政、税金、金融の支持を強化し、企業への融資ルートを拡大すること

いくら非公有制経済を発展させるといっても、党や政府なりの正式な文件がないと不安なもので、ようやく非公有制経済支持の政府の文件が出ました。

 

20050114

(1)全国国有資産監督管理工作会議開催

 

(2)温家宝、米商務長官と会見

人民元切り上げ問題も議論か。『人民日報』は会談内容まで言及なし。

 

20050115

(1)新時期保持共産党員先進性専題報告会開催、胡錦濤が重要報告

中央政治局委員が勢揃いするほどの重要会議

胡錦濤が6項目の基本要求:

@理想信念を堅持し、絶えず中国の特色ある社会主義建設のために奮闘しなければならない

A勤勉な学習を堅持し、『三つの代表』重要思想を実践する能力を確実に高めなければならない

B党の根本的な目的を堅持し、終始変わらず公のための立党、人民のための執政を行わなければならない

C勤勉な工作を堅持しまじめにこつこつと一流の工作業績を残さなければならない

D党の規律の遵守を堅持し、努力して党の団結統一を維持しなければならない

E「2つの務必」を堅持し、共産党人の政治の本来の姿をいつまでも保たなければならない

胡錦濤の報告では、「マルクス主義」の文言が連発されており、少し保守的な傾向がありか

 

20050117

今朝、趙紫陽元中国共産党総書記の死去が伝えられました。1980年代の改革・開放政策を進めてきたリーダーの1人ですが、1989年の天安門事件で失脚後は表舞台に出ることなく、すでに過去の人となっています。そのため、今回の彼の死が中国政治に影響を与えることはないでしょう。

天安門事件からすでに16年が経ち、胡耀邦死去の時にように趙紫陽の名誉回復を当局に求める学生や知識人はいないでしょう。汚職や経済格差などで当局に不満を持つ人もいるでしょうが、これを機に当局に反対行動を起こす人もいないでしょう。天安門事件を率いたリーダーの末路を人々はまだ覚えています。当局もそうした動きが起こることを想定し、すでに警戒態勢をとっているでしょう。趙紫陽を担いで党内で反胡錦濤の動きが出ることもないでしょう。いまの指導部は大なり小なり天安門事件によって台頭した人たちですし、現体制を支持しています。諸外国も中国との経済関係を思えば、中国当局を刺激するような趙紫陽支持のメッセージを送ることは考えられません。強いていえば、海外で反共産党活動をしている中国人の亡命知識人らが騒ぐかもしれませんが、中国国内への影響は極めて小さいでしょう。海外からいくら騒いでも、中国国内には何の影響も与えません。

 

(1)中共中央が腐敗防止のためのシステム構築実施綱要を印刷発行

今年1月3日に印刷発行された綱要の全文が掲載されました。全21項目からなります。

 

20050118

(1)中央先進性教育活動領導小組第2回会議開催、中組部・中宣部「『江沢民論加強和改進執政党建設(専題摘編)』を真剣に学習する」通知

⇒党員の執政能力を強化する一環として、党員の先進性を高めるための学習活動が今年から展開されますが、その指導グループの会議です。

グループ長の賀国強が「胡錦濤専題報告会での重要講話と江沢民の執政党建設に関する重要論述を真剣に学習しよう」と指示を出しました。

また、中央組織部と中央宣伝部が最近刊行された執政党建設に関する江沢民の著作集を真剣に学習するよう通達が出ました。

江沢民の影響力はまだまだ衰えていないのでしょうか

 

(2)江夏「セット改革を一緒に進めなければならない」という文章を掲載

農民の負担を軽減するために昨年、5年間で農業税を廃止するという政策がだされました。そして各省で廃止を繰り上げ達成するという報告が最近出ています。1つが繰り上げ達成するという方針を出すとそれに追随するという中国の地方政府の悪しき習慣です。

それはさておき、文章はこうした動きに対し、農業税を廃止しても、基層政府の財政が好転するわけではないので、機構改革などをセットでやらないと効果は現れないと警告しています。ごもっともな話です。

 

20050119

(1)外交部、交渉による釣魚島問題の解決に言及

防衛庁が東シナ海などでの有事への対応方針を発表したことによる

 

(2)人権概念はどのように生まれたのか

ブルジョア階級が提起した人権とプロレタリア階級が提起した人権は異なるという

 

20050120

(1)中央政治局常務委、牛玉儒同志の先進的事績報告を聴取

⇒胡錦濤の提案で開催

牛玉儒は、内モンゴル自治区党委常務委員兼フフホト市党委書記で、すでに死亡。牛の功績を共産党員の先進性教育活動の一環として学習しようということで、共産党のトップ9名が出席して開かれており、重要な会議。恐らく今後1年半続く先進性教育活動で牛が象徴的な存在として扱われるのでしょう。これから各地方で牛玉儒同志を学習する活動がスタートです。

こうした模範人物を象徴としてたてるという相も変わらぬ方法で思想教育をやってますが、それが効果のないことは実証済。これしかやり方がないという思想教育の限界です。

 

(2)国務院常務会議で、河南省10.20ガス爆発事故責任者を処分、炭坑安全生産工作を研究

⇒担当副省長に警告処分ほか23名に処分

安全生産工作に対し5項目の措置

幹部に対する問責制度が実施されています。

 

20050121

(1)グレナダと国交回復、15年ぶり

 

(2)マルクス主義について特集を掲載

 

20050124

(1)党中央辧公庁が、中央組織部と国有資産監督管理委員会党委員会が出した中央企業党建設工作の強化と改善に関する意見」を転送発令

党中央が中央所属の国有企業における党建設を強化しようという通達。党の影響力を強めようという動き。その面で強化しようとしているのか−がこの意見に盛り込まれている。

 

(2)河南省が郷鎮編制を省が統制し、5年間は増員しないことを決定

農民税を廃止しても周辺の改革が必要。その一環。

 

20050125

(1)中央政治局会議開催、中国共産党が指導する多党合作と政治協商制度建設を強化する問題について研究

「中国共産党が指導する多党合作と政治協商制度建設をさらに強化することに関する中共中央の意見」の審議稿を討論。これは共産党と民主諸党派との関係を定義した1989年の意見の改正版にあたる。

全国政協がまもなく開かれるので、共産党と民主諸党派との関係の見直しを提起するには絶妙なタイミングと言える。前回の意見からすでに15年以上経ち、両者を取り巻く環境も大きく変わったのでこの辺で見直すことは適当。

しかし、「人類の政治文明の有益な成果を参考にしなければならないが、他国の政治制度モデルを絶対にそのまま適用したり、模倣しない」と共産党の一党支配の下での関係定義という点では変化なし。あまり期待してはいけないかも。

 

(2)魏礼群「党の執政能力建設強化することが社会主義市場経済の舵取り能力を絶えず向上させる」を掲載

魏礼群は国務院研究室の主任、政策決定における重要人物の1人だと思う

 

20050126

(1)中央政治局第19回集団学習、新時期共産党員の先進性を保持することに関する研究

今年の共産党の最重要活動について、党のトップが専門家から話を聞きました。講師は中央党校教授の李忠傑。

 

(2)国家統計局、2004年の経済成長率を9.5%増と発表

2003年に比べ0.4ポイントもアップしてしまいました。マクロ調整をして引き締めたはずなのに。

ある程度の経済成長がないと、失業問題や農業問題、経済格差の問題には対応できませんから。しかし、ある程度というのはどのくらいでしょうか?9.5%増は高すぎるのか?

 

20050128

(1)「義鳥モデル」が労働組合の権利維持という難題を解決する、という報告が掲載

浙江省義鳥市総工会(市の労働組合総本部に相当)が、立法法律維権会を発足し、専門機構、人材、経費の欠如という問題を解決し、労使問題を解決していく、という取り組みが成功しており、労働組合が労働者の権利を保護するという役目を果たすモデルを提示しているというもの

 

(2)広東省と浙江省で土地管理の違法事件で、責任者が処分を受けた

行政指導者の問責制の導入で、今回土地管理の方面で処分者が出たというもの。

 

20050129

(1)江沢民の「祖国統一の大業の完成と継続を促進するために奮闘しよう」重要講話発表10周年記念大会開催、賈慶林が重要講話

この演説で、江沢民は対台湾関係改善「8項目提案」、いわゆる「江八点」を行った。

このところ台湾に対し、中国は「反分裂国家法」を策定するという強硬な姿勢を見せる一方で、旧正月に中台間直行のチャーター便運行を認めるなど柔軟な姿勢も見せている。胡錦濤政権は「江八点」をどう位置づけるのか?

 

(2)人民銀行が化学肥料のシーズンオフの商業備蓄に対する融資を支持

春の化学肥料需要に備え価格を安定させ、農民負担を軽減するため、政府が利息を負担する等の措置をとっている

 

20050130

(1)趙紫陽葬儀、賈慶林が出席、「六・四」で重要な過ちと指摘

17日に死亡した趙紫陽元中国共産党総書記の葬儀が行われた。葬儀には共産党内序列第4位の賈慶林中央政治局常務委員が参列した。

新華社は趙紫陽に対し、改革開放の前半期に大きな貢献をしたが、1989年の政治風波では大きな過ちを犯したと評した。

現在の中国共産党の出発点となっている1989年の「六四天安門事件」の責任をとって要職を解任された趙紫陽の葬儀に序列第4位という高位の指導者が参列したことは、党内に趙紫陽への再評価を求める声があったことが伺われるし、また知識人や一般市民の趙紫陽支持の声への配慮と思われる。しかし、胡錦濤政権が再評価をすることはあり得ない。なぜならば今の共産党指導者のほとんどがこの事件をきっかけに現在の地位を得たからで、自己否定を意味する。

当初は賈慶林ではなく序列第五位の曾慶紅が参列予定だったのではないだろうか。曾慶紅は死去前に趙紫陽を見舞っており、事実上の葬儀委員長であることを意味している。他の指導者は趙紫陽の問題に関わりたくないはずだ。だからこそ事実上政治的に終わっている曾慶紅を充てたのではないだろうか。仮に趙紫陽死去をきっかけに何か起きても、それを曾慶紅に責任転嫁できるからだ。たまたま曾慶紅が外遊中で、賈慶林が参列したまでのこと、だろう。

 

20050131

(1)「さらに農村工作を強化し農業総合生産能力を高める若干の政策に関する中共中央、国務院の意見」を2005年の中央1号文件として発表

昨年に続き三農問題重視の姿勢を鮮明にした

 

(2)王道涵の代理が、3日に死亡した台湾海峡交流基金会の辜振甫董事長の弔問のため2月1日から2日まで台湾を訪問することを発表

王と辜は中台民間交渉の中台双方の代表

台湾との関係改善のシグナルともとれる