第45回 中共中央「党の執政能力建設強化に関する決定」の内容(2004年11月24日)

 

 今回は、少し前のことになるが、9月19日の中国共産党第16期中央委員会第4回全体会議、いわゆる4中全会で採択された「党の執政能力建設強化に関する決定」の内容を見ておきたい2004年9月27付『人民日報』に掲載された全文をもとに内容をまとめるが、「⇒」は私のコメントを記したものである。

 

1.党の執政能力建設強化の重要性と緊迫性

(1)「党の執政能力建設強化は、中国の社会主義事業の盛衰成敗と関係し、中華民族の前途の命運と関係し、党の生死存亡と国家の長期的安定に関係する重大な戦略課題である」

⇒党の執政能力建設強化がいかに重要かを強調

(2)新たな情勢、新たな任務に直面し、党の指導方式、指導体制、工作システムが完全ではない。

新たな情勢、任務への対応は「三つの代表」重要思想が提起されたときも指摘されており、その当時と同じ意味なのか?それともそれ以降の新たな情勢、任務か?また、「三つの代表」重要思想ではダメなのか、それとも発展させたものか?前者なら江沢民批判を念頭に置いているかも。

(3)どこが問題か

@指導幹部や指導グループの思想理論水準が高くない、法に基づく執政能力が高くない、複雑な問題解決能力が高くない、素質と能力が「三つの代表」重要思想、小康社会を全面的に建設するという要求に適応していない

A党員幹部の事業心、責任感が弱い、思想作風が正しくない、工作作風がしっかり身に付いていない、大衆から離れているなどの問題が際だっている

B党の基層組織が弱く、一部の党員が先鋒的な模範の役割を発揮できない

C腐敗が一部の地方や部門でかなり深刻である

 

2.55年間の党の執政の主要経験

(1)中長期的に引き継がれるべき主要経験6ヵ条=党の執政能力建設強化の重要な指導原則

@時とともに進むことを堅持し、発展するマルクス主義を用いて新たな実践指導する

⇒時代状況に沿った変化の容認

A社会主義の自己整備を進めることを堅持し、社会主義の生命力と活力を強化する

B発展という党の執政と興国の第一任務をしっかりつかむことを堅持し、発展を中国の全ての問題の解決のカギとする

C公のための立党、人民のための執政を堅持し、党と人民大衆の血肉の関係を終始維持する

D科学的執政、民主的執政、法による執政を堅持し、党の指導方式と執政方式を絶えず完全なものにする

E改革の精神で党の建設を強化することを堅持し、党の創造力、凝集力、戦闘力を絶えず強化する

 

3.党の執政能力建設強化の指導思想、全体目標、主要任務

(1)指導思想:マルクスレーニン主義、毛沢東思想、ケ小平理論、「三つの代表」重要思想

(2)全体目標

@公のための立党、人民のための執政党になる

A科学的執政、民主的執政、法による執政の執政党になる

B真実を求め実務につとめ、開拓し新しいものを創りあげ、政治に勤め成果を高め、清廉で公正で不正収賄をしない執政党になる

C「三つの代表」を実践し先進性を永遠に保持し各種の風波試練に耐え、マルクス主義執政党になる

(3)主要任務=社会主義の物質文明、政治文明、精神文明の共同発展を進めるために、以下の指導発展能力を高める

@社会主義市場経済を制御する能力

A社会主義民主政治を発展させる能力

B社会主義先進文化を建設する能力

C社会主義調和社会を構築する能力

D国際情勢に対応し国際事務を処理する能力

⇒以下は、この@からDを具体的に説明している

 

4.発展を党の執政と興国の第一任務とすることを堅持し、社会主義市場経済を制御する能力を絶えず高める

(1)チャンスをつかみ、発展を加速させるという戦略思想を強固にし、経済建設という中心をしっかりつかむことを動揺させない

(2)人を基本とし、全面的に協調し持続可能な科学発展観を堅持し、経済社会発展をさらに推し進める

―重視すること

@三農問題

A内陸開発

B再就職、社会保障

C文化社会事業

D環境

(3)社会主義市場経済の改革の方向を堅持し、終始時代の先頭に立ち改革を指導し計画する

―正確に処理すべきこと

@公有制と非公有制の関係

A収入格差

B市場システムとマクロ調整の関係

C中央と地方の関係

D経済体制改革とその他の改革の関係

(4)対外開放の主導権を掌握し、全面的に対外開放の水準を高める

(5)社会主義市場経済発展の要求に合わせて、党が経済工作を指導する体制のシステムと方式を完全にする

―地方党委の指導

@当地の現実と結びつけ、経済社会発展の基本的な考え方と工作重点を確定し、経済社会の重大事務に対する総合的な協調を強化、改善し、中央の方針政策、各配置の貫徹実現を確保する

A重要問題は党委の集団討論で決定し、日常的な工作は政府や部門が職責権限によって政策決定し管理する

B党委は法による政府活動を支持し、職能転換、行政体制改革、正規分開などを支持する

⇒地方党委員会の指導に特に言及。地方が言うことを聞かないことへの対応

 

5.党の指導、人民を主人公とすること、法により国を治めることを有機的に統一することを堅持し、社会主義民主政治を発展させる能力を絶えず高める

(1)社会主義民主の制度化、規範化、手続き化を推進し、人民を主人公とすることを保証する

@民主的な方法を拡大し、公民の秩序ある政治参加を拡大する

A人民代表大会制度の堅持、完備

B人権の尊重、保証:広範な権利と自由を保障

C多党合作、政治協商制度の堅持:完備、民主党派、党外人士の登用

D民族地域自治制度の堅持、完備

E党外知識人、非公有制経済人士、その他の社会階層人士に対する工作を立派に行う

F基層民主の拡大、基層大衆の権利の保障

(2)法に依って国を治めるという基本方針を貫徹し、法に依る執政の水準を高める

=党の指導が法に依って国を治める根本保証

@立法工作に対する党の指導の強化:党の主張を法定手続きを経て国家意思とし、制度上、法律上党の路線方針政策の貫徹実施を保証する、指導者の恣意的判断を戒め、憲法と法律の権威を保証する

A政法工作に対する党の指導の強化、改善:司法活動に対する監督と保証

⇒党の決定を強化するための方法

(3)政策決定システムを改革、改善し、政策決定の科学化、民主化を進める

@広範な意見の聴取

A専門家への諮問

B公示、公聴会等の制度の実施、人民大衆の参加の拡大

C実施者に対する責任追及制度

D多種多様な政策決定の諮問システムの構築

⇒党の政策決定の多元化

(4)権力行使に対する制約と監督を強化し、人民が付与した権力を人民のために利益を謀ることに用いることを保証する=監督のチャンネルの拡大、健全化

@党内監督

A巡視制度

B報告制度、評価制度:民衆評議、会計検査

C規律検査の強化

D人代、政府専門機関、政協による監督

E社会による監督の強化:摘発権、告訴権、上告権

⇒党に対する監督強化

(5)党が全局を一手に握り、各方の協調を行うという原則に沿って、党の指導方式を改革し、完全にする

@党委の人代、政府、政協への指導核心作用の発揮:党組の指導強化

A効率、コスト削減:党政機構設置の規範化、党政指導者の交叉任命、党政重複機構の撤廃、行政体制改革の推進

B工会、共青団など各種団体への指導の強化:党と大衆の架け橋の役割

⇒党の指導の強化

 

6.マルクス主義がイデオロギー領域での指導地位にあることを堅持し、社会主義先進文化建設能力を絶えず高める

(1)理論創新を積極的に進め、マルクス主義理論の研究、建設を強化する

@社会主義市場経済の要求に適応し、文化発展を制約する体制的障害をさらに取り除く

(2)文化体制改革を深化させ、文化生産力を解放、発展させる

(3)世論動向をしっかりと把握し、社会世論を正確に導く

@党がメディアを管理する原則を堅持し、世論を誘導する技量を強化し、世論工作の主導権を掌握する

(4)新たな方式、新たな方法を探索するよう努力し、思想政治工作を強化、改善する

@愛国主義を中心とする民族精神と改革創新を中心とする時代精神の高揚

A集団主義、社会主義思想の高揚

B異なる社会集団の思想問題を現実的に解決し、先進を奨励しまた多数に配慮し、思想を統一しまた相違を尊重し、思想問題を解決しまた実際問題を解決しなければならない

(5)教育と科学の事業を優先的に発展させ、全民族の科学文化素質を高める

 

7.あらゆる積極的な要素を最も広範に最も十分に引き出すことを堅持し、社会主義調和社会を構築する能力を絶えず高める

(1)労働を尊重し、知識を尊重し、人材を尊重し、創造を尊重する方針を全面的に貫徹し、社会全体の創造活力を絶えず強化する

@旧労働者階級と新たな社会階層のバランス

A発達した地域、優勢産業、先に豊かになった人たちと発展の遅れた地域、斜陽産業、生活困難者のバランス

(2)各方面の利益関係をうまく協調させ、人民内部の矛盾を正しく処理する

@最も広範な人民の根本利益を政策制定、工作展開の出発点と到達点とする

A信訪工作責任制の整備、政策、法律、経済、行政などの手段と教育、協商、調停の方法を運用

(3)社会の建設と管理を強化し、社会管理体制の創新を進める

@党委の指導政府の責任社会の協同公衆の参加

A基層組織

B産業組織と社会仲介組織

C社会保障体系の健全化

D各種社会組織に対する管理と監督の強化と改善

(4)工作システムを健全化し、社会安定を維持する

@社会世論の収集分析システムの構築、民意反映チャンネルの開通

A緊急事態への対応システムの構築

B司法システムの役割の発揮

(5)党の大衆路線を堅持し、新情勢下の大衆工作を強化し、改善する

@大衆工作を改善し、党と大衆、幹部と大衆の関係を密接にする

 

8.独立自主の平和外交政策を堅持し、国際情勢に対する、国際事務を処理する能力を絶えず高める

(1)広い視界で世界を観察することを堅持し、科学的に国際情勢に対応し戦略的思考を進める水準を高める

@平和維持、発展促進の時代の潮流に主導的に順応し、世界の多極化、経済グローバル化、科学技術の発展の趨勢に正確に対応する

(2)対外方針政策をしっかりと貫徹執行し、国際事務処理の主導権を掌握する

@大国外交、周辺外交、発展途上国外交の関係を正確に処理する

A新安全観の樹立を促進する

(3)国際要素のわが国への影響を全面的に認識し把握し、国際社会との交流能力を絶えず高める

@平等互恵、共利共存(共に利益を得、共に生存する)を堅持する

A国際規則と国際慣例に早く習熟し、うまく運用する

(4)国家の主権と安全を終始第一とし、国家の安全をしっかりと維持する

@伝統的安全脅威と非伝統的安全脅威が入り交じる新たな状況に対し、国家安全意識を強化し、国家安全戦略を完備する

A各種の敵対勢力の浸透、転覆、分裂活動に用心し打撃を加え、国際経済の領域から来る各種のリスクに有効に用心し対応する

(5)軍隊

@国防建設と経済建設の協調発展を堅持し、現代化、正規化された革命軍隊を建設し、国防安全を確保することが党の執政の重大な戦略任務である

A党の軍隊に対する絶対指導を堅持する

B積極防御的軍事戦略方針を堅持し、中国の特色ある軍事変革と軍事闘争の準備を積極的に推進し、兵力削減の道を進み、情報化の条件の下での防衛作戦能力を高める

C厳格な軍隊統治、法による軍隊統治を堅持し、軍事法制建設を強化し、軍隊の正規化水準を高める

(6)香港、マカオの長期的な繁栄、安定を保持することが党の新たな情勢下での国を治め政治を処理する上で直面する斬新な課題であり、台湾問題を解決し、祖国の完全統一を実現することが党の背負う神聖な使命である

@「平和統一、一国二制度」の基本方針と現段階の両岸関係を発展させ、祖国平和統一の進展を推進する8項目の主張を貫徹し、両岸の人員の往来と経済文化などの領域の交流を促進し、台湾人民の工作をしっかり行い、台湾海峡地域の安定の維持に努力し、祖国統一の大業を推進する。最大の誠意をもって最大の努力をもって平和統一の将来を勝ち取り、「台湾独立」分裂勢力に断固として反対し抑制し、外国の干渉勢力が両岸事務を介入することに断固として反対し阻止し、台湾を中国から分裂させるあらゆる企てを断固として粉砕し、しっかりと国家主権と領土保全を守る

 

9.党の執政能力を高めることを重点とし、党の建設の新たな偉大な工程を全面的に推進する

(1)ケ小平理論と「三つの代表」重要思想で全党を武装することを堅持し、マルクス主義理論の水準を絶えず高める

(2)幹部人事制度改革を深化させ、うまく国を治め政治を処理する高い素質を持った幹部グループを構築する

@党が幹部を管理する原則の堅持

A民主推薦、民主評価、差額考察、就任前公示、公開選抜、競争昇進、全体委員会投票表決、党政指導幹部辞職などの制度の実効、整備

B党内選挙制度を完全にし、候補者氏名方式の改善、差額推薦、差額選挙の範囲と比率の拡大

(3)政治を不動のものとし、真実を求め実務につとめ、開拓し新しいものを創りあげ、政治に勤め政治に清廉で、団結協調する要求に沿って、各級指導グループの構築を指導集団の強化とする

@地方党委副書記の人数の削減、常務委員の工作分担責任の実行

A党委、人代、政府、政協の間の幹部交流

B人代、政協の指導者の人数の削減

(4)党の基層組織建設を強化改善し、党の基層組織を「三つの代表」重要思想貫徹の組織者、推進者、実践者とする

@村基層、国有企業、機関、社区の党組織

A新たな経済組織、新たな社会組織に党組織を構築する工作を強化し、党組織と党員の影響力発揮の方法とルートを探る

B労働者、農民、知識人、軍人、幹部以外の社会階層の先進分子の党員拡大工作を立派委に行い、党の階級基礎を強化し、党の大衆基礎を拡大する

C流動党員の管理の強化

(5)民主集中制を堅持、健全化し、党の団結と活力を強化する=党内民主の発展

@党員権利保障条例の貫徹=党内状況通報制度、状況反映制度、重大政策決定に対する意見募集制度の構築/党務公開の推進/党組織工作の透明度の強化/党員の党内事務への理解、参加

A異なる意見の平等な討論環境の構築

B常務委員会の全体委員会への責任負担、工作報告、監督の制度

C党代表大会体表提案制度

D党代表大会閉会期間中の代表の影響力のルートと形式を探り、代表提議の処理と回復システムの構築

E代表と選挙単位の党員との連絡の強化、党員の違憲や建議の聴取反映

F党の各級全体委員会の会議に、議題に応じて党代表大会代表に意見を求め、一部代表を会議に招く

G市、県で党代表大会常任制試点を拡大する

H基層党組域の指導グループ構成員の直接選挙の範囲を徐々に拡大する

I全党全国の指導思想、路線方針政策、重大原則問題では高度の一致を保持しなければならない

J全党各組織、全党員は党の全国代表大会と中央委員会の原則に服従し、中央の権威を維持し、党の規律を厳格にし、政令が滞りなく通じることを保証する

⇒党内民主のかなり細かい方策が出ているが十六大を超えるものではない

(6)真実を求め、実務に励む風潮を大々的に実施し、党と人民大衆の血肉の関係を保持する

(7)党風廉政建設を強化し、反腐敗闘争を深く展開する