第38回 2004年6月の『人民日報』(2004年7月31日)

 

20050601

 

(1)陜西省咸陽市で一般市民による市政府常務会議の公聴の申請を開始

情報公開、民衆の政治参加の形態として、人民代表大会の公聴や特定の問題の公聴会への民衆の参加が増えています。それはいいことでしょうが、市政府の常務会議まで公開しなければならないのでしょうか。一時のブームで過剰に地方政府が反応してしまう好例です。

 

(2)中央企業の人材構造

中央企業、二級企業の責任者は全国に2.4万人いますが、専門技術者は273万人います。しかし、専門技術者のうち修士以上の学位を持っているのは2.1%、高級技師の地位にある人は労働者全体の0.16%にすぎません。

 中国の企業経営者や技術者のレベルが高いということがよく言われますが、実際はたいしたことはない、ハイレベルは非常に少ないと言えます。

 人材が中央企業から流出していることも問題です。53の主要な中央企業を調査した結果、1998年以来71,766名の経営管理者(マネジャークラス)が企業を離れ、その数は同期間の大学新卒者の合計の31%、現在の経営管理者数の10.8%に相当しています。この数字の意味も細かいことをいえばよくわかりませんが、多くの経営管理者が企業から流出していると言うことをいいたいわけです。その分、国内外から優秀な人材を招へいして穴埋めをしています。

 流出した人材がどこへ行くのかはわかりませんが、このことをマイナスに考えるのでなく、国有企業の経営管理者の人材の流動が盛んになるということで、企業にとってプラスになるととらえた方がいいのでしょう。

 

20040603

 

(1)中央組織部が2003年末の党や政府の幹部に関する統計データを発表

2003年末での全国の機関幹部が653.7万人、国有企事業単位管理者が529万人、専門技術者2774.5万人。

 @全体:33.3万人に減少

   機関幹部0.8万減(2002年末比、以下同じ)

国有企事業単位管理者27.4万人増

専業技術管理者59.9万人減、 

 A行政レベルごとの年齢構成に特徴が見られる

   省レベルの党・政府の指導者群

    平均年齢:53.5才、うち60歳前後:21.4%、55才前後:35.3%、45才前後:8.6

   ()レベルの党・政府の指導者群

    平均年齢:49.1才、うち50才前後:39.4%、45才前後:24.1%、40才前後:12.5

   県レベルの党・政府の指導者群

    平均年齢:43.1才、うち45才前後:29.8%、40才前後:37.4%、35才前後:14.1

 B幹部の公開選抜や競争による昇任が拡大している

   全国で2003年に行われた地庁司局長級以下の幹部の公開選抜は3877

    うち地庁司局級幹部:143人、県処級幹部:1304

   競争により昇任した幹部は5.7万人

    うち地庁司局級幹部:91人、県処級幹部:7631

 

20040605

 

(1)国務院常務会議、湖南省の違法建設の報告を受け、責任者の処分を決定

商業施設建設のために、湖南省嘉禾県政府が強制的な住民立ち退きを実施した事件で、湖南省と建設部が厳重な調査を実施し、違法に認可した責任者を処分しました

 さらにこの日、もう1つの違法建設事件が公表されました。2002年9月陜西省周致県政府が違法に認可し、2000万元でディベロッパーと6000ムーの土地建設開発契約を結び、2330万元を受け取り、その後の土地収用に農民に対し強権を発動した事件です。

 この2つの事件は、現在実施中の過剰投資を抑えるためのマクロ調整措置の一環で、違法建設事件の責任者処分を中央レベルで行い、広く宣伝することで、各地方政府への見せしめにしようという意図です。

 

(2)浙江省寧波市で外資に対する審議認可改革を進め、外資進出が増える

審査認可項目を減らし、審査認可権を下放し、1日3件のペースで新規の外資進出が増えています。

 このように具体的な成果が報道されると、審査認可改革は意味があるのだなあと実感できます。

 

20040611

 

(1)アフガンでプロジェクト請負中の中国人労働者が武装グループに襲撃され、11人が死亡、4人が重傷。胡錦濤が外遊先のハンガリーから対応を指示。

日本の新聞では、911以降、中国当局が新疆の独立派への弾圧を強めており、そのことへの報復措置という見方が出ています。

 これまで、テロの攻撃対象にはならなかった中国ですが、とうとう来たかという感じです。これには中国も黙ってはいないでしょう。国際的に反テロ活動への支援を強めていくでしょうし、それは米国との関係強化につながるかもしれません。また国内でも特に新疆での分離独立活動への取り締まりが強化されるでしょう。物騒な感じです。

 

20040614

 

(1)5月の経済統計発表。マクロ調整の効果が出るものの、まだ問題あり

これまで毎月の経済統計はその抜粋が記事として掲載されてきましたが、1年や半年といった区切りの月以外の国家統計局が発表する統計が正式な形のままで掲載されるのは異例です。権威づけをして、統計発表することで、マクロ調整の重要性をアピールしようという狙いかもしれません。

 5月1ヶ月だけを見ると、固定資産投資が18.3%増と、前の月に比べ16.4ポイント下がりました。都市部、主要産業で投資の伸びが低下しています。貨幣供給量の伸びもM2で対前月比1.6ポイント、M11.4ポイントとそれぞれ下がり、貸款も減少しています。全体としてマクロ調整の効果が出ていると言えます。

 しかし、まだ手を緩めるな、と問題点が指摘されています。1つはエネルギーや運輸などのボトルネックが解消されていないことで、石炭の在庫が増えないこと、輸送が間に合わないこと、石油価格の上昇による電力コスト上昇などにより、電力不足が深刻であることに変わりはありません。もう1つは固定資産投資も全体的に伸びが下がっているものの、依然として鉄鋼、セメント、アルミニウムなどへの投資の伸びは大きいことです(各76.6%増、55.3%増、38%増)。

 この統計を受け、『人民日報』ではマクロ調整に関する評論員論説の連載が再び開始されました。これまでのマクロ調整の成果、さらなる調整の強化、指導者の科学発展観(業績評価観)の転換に言及されましたが、興味深いのは「一部の地方、部門の問題から全面的な観察・深い分析・長期的考慮による正確な把握の必要」が指摘されている点です。これまでのマクロ調整のスタンスとはちょっと違うような気がします。温家宝総理は湖北省を視察し、周辺中部地区5省の指導者を集め、マクロ調整の強化を指示しました。また、経済全般を担当する黄菊副首相も今年第1四半期の固定資産投資伸び率No.1の内モンゴル自治区を視察しました。

 

20040624

 

(1)温家宝、山東省を視察(22)

マクロ調整の継続を指示

 ハイアールなど企業を視察

 

(2)商務部など6部門が「市場経済活動中に地域封鎖を実施する規定を整理することに関する通知」を発表

全国統一市場形成の障害である地域封鎖に関わる規定を整理するよう求めた通知。省レベルの指導機構が責任を負い、国務院の関係部門が監督検査グループを派遣し、来年1月末までに工作を終了させる

 これは政治問題です

 

(3)国家発展・開発委員会副主任が記者会見し、マクロ調整の7つの成果、5つの矛盾を発表

 

20040625

 

(1)江西省九江市廬山区の村で村務公開が進む

江西省九江市廬山区賽陽鎮金橋村で村の政策(村務)決定の「実況中継」(公開)が大きな成果を上げている。つまり、重大な政策決定では、党員や村民代表と村幹部が直接討論し、議題に関わる民衆の意見を広く募集し、最終的に採決して決定する。

 最近は、村の経済発展のために、これまでの花卉栽培以外の産業として、新たに300ムーの土地を使って米国スモモの生産を行うかどうかを議論し、行うことを決定した。

 これまでの村務公開は内容が詳しくない、知りたい内容が公開されないなど村務公開が不十分であることに民衆の不満が大きかった。そのため、2003年初めから村務の透明化を図り、決定への民衆参加を拡大し、「実況中継」に至った。その結果、昨年は陳情が対前年比40%減、農村の非生産性の出費が80%以上削減できたという効果を上げた。

 民衆の政治参加の事例。陳情が多いことは農村幹部にとっては不都合なこと、脅威だということで、それを回避するための措置が結局は政治参加になるのだろうか。

 

(2)国務院常務会議が農村税費改革試点工作を研究

 

(3)2004年の西部大開発の新規重点10項目、800億元が確定したことが判明

 

20040630

 

(1)湖北省赤壁市で郷鎮機構改革が進む

機構改革の狙い:@コストの最小化、A効率の最大化、B郷鎮の機構設置の規範化

 具体的には、

 @263の村を150に合併し、村民小組を30%削減

 A党政指導グループを兼職にし、郷鎮の指導グループ構成員を7-9名にする

 B事業機構を120から24に削減する

 C機構編成上の人員管理を規定し、財政面で裏付けし、会計検査を行い、違反した場合は責任を追及するなど