第37回 2004年5月の『人民日報』(2004年7月31日)

 

20040501

 

(1)政府部門が経済引き締め策関連の措置を発表

⇒@中国銀行業監督管理委員会が、貸出リスク管理のための7つの措置を発表

 A国家発改委主催、固定資産投資整理工作テレビ電話会議開催

 B国家発改委、各級価格管理部門に価格上昇項目を抑制するよう要求

 特にAの会議では、かなり細かい方針が打ち出されたようです。あらゆる建設中、建設予定の項目を全面的の整理、審査し、鉄鋼、電解アルミニウム、セメント、党政機関のオフィスビル・訓練中心、都市高速鉄道、ゴルフ場、会議展覧センター、物流パーク、大型ショッピングセンター等、そして2004年の入ってのあらゆる新規項目を重点的に整理することが支持されました。

 Bはインフレ懸念対策です

 

20040504

 

(1)2003年の共青団員は7100万人

胡錦濤の重要な支持基盤の共青団の団員の数です。共産党員は6700万くらいだったので、共青団員の方が少し多いということです。

 

(2)国務院、山西省臨汾市隰県梁家河炭鉱430事故調査組設立

4月30日に発生した炭鉱ガス爆発事故で36名が死亡したようです。このような事故、後を絶ちません

 

20040512

 

(1)国家開発銀行、信用貸款の項目と貸付先の検査を厳格実施中

経済引き締め策の一環として、融資項目の見直し、新規禁止などが進められていますが、国家開発銀行がしっかりやっていることを示す記事です。

 項目を検査して整理します。もし違法が見つかれば、関連部門が要求を満たした(違反が改善された)と認めれば引き続き貸出を継続し、要求を満たさないものは停止しています。

 また、貸し付けを重点項目(道路、電力、公共施設管理、鉄道などのボトルネックになっている領域)や発展重点地域に集中させています。

 今年第1四半期の貸付額の伸びは2.59%に下がっており、他の銀行の伸びが5.29%であることと比べるとよく統制が効いていると言いたいようです。

 商業銀行としては基本的には貸し付けは選別して継続していきたいという立場で、一律の削減、停止には消極的な立場のように思われます。違反の改善されたかどうかの基準はきっと開発銀行側になりますから、どこまで厳密に行われているのか、この記事だけではわかりません。

 

(2)南京市で民営合資企業初の党委員会が設立

南京聯創科技股?有限公司という年間売り上げ額が10億元で、江蘇省内でも実力のあるソフト会社です。

 おもしろいのは、党委書記が、南京市元副市長で、市人代常務委副主任であるところがミソです。どこかの部門の「批准」を受けて書記に就いたようです。

 市の元ハイレベルの指導者を抜擢したことの意味はいくつか考えられます。市の関係部門へのパイプ役としての期待、または上級党部門や周辺に対する安心料としてです。どちらかと言えば、後者かなあ。パイプ役としてはすでに力がないような気がします。

 しかし、これが先例となって、今後他の企業でこうした動きが表れるとしたら、市の党政幹部が退職後の再就職先、天下り先を確保したと言えるかもしれません。

 

(3)「農業税」とは何か

農民の所得アップのために負担となっている農業税の廃止の動きが出ています。しかし農業税とは何かを理解しておくために、説明がされています。

 @基本状況

 1994年から実施された分税制により、地方固定収入(地方税)に含まれる。省レベルの政府が徴収、管理(分配)する。

 2000年から実施された費用を税に変える(税費)改革により、現在の農業税は、正規の農業税としての7%と、さらにこれの20%分を農業付加税(1.4%)として加えた計8.4%となっている。農業付加税は村レベルに留保される。

 徴収は村単位で行い、各農家の額が公示され、農家がそれを了承したら納税通知書が配布され、村に納税する。

 その他、農業特産税というのがあるが、これは2004年中に廃止される(タバコ葉税は存続する)

 A廃止へのステップ(2004年)

 農業税は2004年から5年間かけて廃止する予定。2004年の引き下げは以下のようになっている。

 (a)(実験地区〉黒龍江、吉林完全廃止【0%】

 (b)〈穀物生産地区〉河北、内モンゴル、遼寧、江蘇、安徽、江西、山東、河南、湖北、湖南、四川正規の農業税が3ポイント下げ4%、その20%分の農業付加税(0.8%)を加え【4.8%】

 (c)〈その他〉正規が1ポイント下げ6%、農業付加税(1.2%)を加え【7.2%】

 沿海地区や条件の整っている地区は、さらに下げる、または廃止してもよく、各省が決めてよい。

 

20040513

 

(1)河南省鄭州市で、許認可事項が簡素化され「サービス型政府」を目指している

投資環境が大幅に改善された報告です。

 @2002年以降で1991項目が廃止され、さらに317項目を圧縮する予定、A国内、外資を問わずあらゆる企業に、あらゆる投資領域を開放

 この結果、鄭州市のGDP成長率は14.7%増、新規進出外資系企業が98社と前年に比べ46.3%増、利用外資(実行ベース)は112.6%増になりました。

 一見、許認可項目の削減など行政の対応の改善で外資の伸びが大きくなったようです。しかしいつも疑問に思います。許認可項目の削減が投資の拡大をもたらしているのか。外資は許認可が緩くなったと感じているのか、それが投資の決定に影響しているのか、研究のテーマにしたいものです。

 

(2)「党代表常任制」とは何か

政治制度改革の一環として実施されている「党内民主」の要素の1つです。

 現在、安徽省で党代表常任制の実験が行われています。実験が行われている4つの県のうちの1つ蒙城県を例に、党代表常任制について理解してみます。

 蒙城県全体で約3.6万人の党員が、3日間の選挙を経て、278名の第1期の常任制党代表を選出します。彼らはこれまでの中国共産党蒙城県代表大会の代表に相当し、今回から常任制党代表ということになったのです。彼らの任期は5年です

 これまでは代表大会は5年に1度開催でしたが、常任制では年に1回年会が開かれます。そして、党代表は2年に1度の自分の選挙区の党員、もしくは党員代表に対し活動報告を行い、満足度評価を受けなければなりません。もし満足度が50%に達しなかった場合、罷免される可能性があります。

 これまで事実上5年に1回でよかった党代表の活動を活発化し、党員の監督を受けるわけで、民主的な制度のように思われます。本当のところどうでしょうか。

 

20040514

 

(1)河南省が農業税を7%から4%に引き下げの効果

引き下げにより、農業税収入は51.2億元から29.28億元に削減されます。これは、2002年に比べ21.93億元の減少です。

 この結果、農民の負担は42.83%削減されます。これに政府から直接農民に11.6億元の補填が行われるので、実際に農民が直接受ける恩恵額は33.53億元です。実質65.4%になります。

 またこれまで夏秋2回行われていた税徴収が夏の1回になり、農民と政府双方の手間が省けます。

 このように計算どおり削減されると農民負担は相当軽くなりますが、村は付加費収入が減りますから、中には違法な費用徴収を増やしたり、補填金の一部を村の財政に組み込んだり、自分の懐に入れるケースも出てくるでしょう。そこまで上級部門が監督できるかどうかはちょっと疑問です。しかし農民にしてみれば、65%も削減されなくても、30%とか40%でも削減されれば、ハッピーなので、とりあえずは丸く収まるのでしょうか。

 

(2)広東省懐集県で15名の出稼ぎ労働者が政協委員に選出

出稼ぎで成功した「出稼ぎ労働者エリート」を出身県の政協委員に選んで、県の発展のために貢献してもらおうという話です

 珠海デルタ地域に出稼ぎして、そこで企業を興して大成功している人たちに県に戻ってきてもらうために県の経済部門が「回帰プロジェクト」を打ち出して、外資並みの優遇条件を出したり、「外出労務協会」を作って彼らとの関係強化を図っています。

 その中で、出稼ぎ労働者エリートの第1人者陳本克が2003年に最初の政協委員になりました。彼は成功後。90年代からすでに県に戻り、学校を建てたり、橋や道路補修に寄付をするなど県に貢献しており、それが評価されて政協委員に選ばれました。

 県は名誉職のつもりだったようですが、本人はその後も貴重な提案を続け、その中で出稼ぎ労働者を地元に戻し投資させ実業を起こさせることを奨励する」という提案を行いました。結果、「回帰プロジェクト」を推進し、また14名の政協委員選出にもつながっていったのです。

 彼らは新しい経済エリートですが、政治参加へのあこがれのようなものがあるのでしょうか。戻ってきてもらうために、県当局が政協委員のポストを準備するというようにも見えます。今後出戻りエリートに対し、政協委員の枠を増やす予定です。

 陳本克について言えば、自分の利益実現のためではなく、共同富裕のために政治参加するという、理想的な政治家に描かれています。その手段として、政協委員のポストというのはより近道なのかもしれません。なかなかおもしろい話でした。

 

20040517

 

(1)中央台湾工作辧公室と国務院台湾事務辧公室が、現在の両岸関係問題で声明を発表

20日の台湾総統就任式を控えた大陸側の見解表明です。基本的に陳水扁の台湾独立志向を非難する点に変わりはありません

 今後4年間について「誰が政権に就こうとも、世界で中国は1つであること、大陸と台湾は中国に属することを承認し、『台湾独立』の主張を放棄し、『台湾独立』の活動を停止して初めて両岸関係は安定した発展の光ある前途が現れることができる」とこれまでの主張を繰り返しています

 以上の条件の下での交流の7項目を提示しています。

@対話と交渉の再開

A適当な方法で関係を密接にし、問題を解決する

B全面的、直接的な双方向の「三通」の実現

C経済協力の緊密化−グローバル化、地域統合への共同の対応、台湾の農産品の大陸での市場獲得の可能性も出てくることに言及

D人的交流

E両岸関係が良好で初めて島内の社会安定、経済発展が実現する

F話し合いを通じて、台湾の国際的な活動空間に関する問題を解決する

CEFなどは興味深いと思いますが、所詮条件付きですからどこまで進展可能か疑問です。

 

(2)江蘇鉄本鋼鉄有限公司の違法建設項目事件の教訓に関する論評

過熱経済に対する措置の象徴的な事例とされているこの事件(過去に詳細は掲載済み)ですが、江蘇省では積極的に取り締まりを進め、この事件からいかなる教訓を得るかといった記事が、昨日、今日続けて掲載されています。

 この企業って民営企業だったんですね。江蘇省当局は、「民営企業発展とこの企業の取り締まりは別のもの」と言っていますが、多少の違法行為や、経済発展自体が民営企業に依存していたことから、引き締め政策は民営企業にとってはけっこう痛手になるかもしれません。

 

20040520

 

(1)浙江省と重慶市が経済社会協力発展システム構築で合意

省レベルの政府間の協力システムを構築する動きが増えています。

 浙江省が重慶市の三峡ダム付近のfu陵区と万州区の開発、ダム建設にかかる住民移転や再就職に6280万元を寄付したり、学校や病院の無償建設を行っています。また浙江省の企業が重慶市に60億元以上の投資を行っています。協力項目は103に上り、契約額は143億元で、うち浙江省からの投資が134億元で94%に上っています。

 協力は、浙江省から重慶市への一方的なものです。また三峡ダム関連の協力は中央から浙江省に対し求められた「政治的任務」ということです。

 1995年からの第9次5カ年計画で中西部を発展させるために、中央政府は特定の沿海の富んだ地方が特定の中西部の遅れた地方を支援する「対口支援」を推進しました。これが省レベルの政府間協力のはしりだと思いますが、最近珠江デルタ周辺や上海周辺の省レベルの政府が経済協力のために会合を開くケースが増えています。先日も浙江省と四川省が協力に関する協議を行いました。

 中国の将来を予測するとき、よく連邦制が話題に上ります。これはなかなか現実味が薄いと思いますが、現実的な必要性からの省レベルの政府強力の推進は、長期的な地方統合の萌芽になるかもしれません。今回の浙江省と重慶市の場合は中央の肝いりのようですが、こういった省レベルの政府協力の状況を把握していくことは、将来の地方統合を予測する上で、意味があるかもしれません。

 

20040524

 

(1)マクロ調整が初歩的効果を上げたことに関する論評

過熱気味の経済状況に昨年夏以来中央がマクロ調整措置を講じてきましたが、21日の国務院常務会議でこの措置が初歩的な効果を上げたという認識を発表したことから、それに関する論評が掲載されました。基本的には国務院常務会議の見解を繰り返しているものです。

 各地区、各部門が積極的に中央のマクロ調整強化の政策措置を実施し、すでに初歩的な成果を上げた。初歩的な成果とは、@固定資産投資の伸び率の低下、A一部産業に対する投資の低下、B穀物価格の安定、C重要生産資料の価格上昇の低減

 しかし、まだ十分な成果とは言えないので、現在の主要な任務として、次の6点を挙げています。

@貨幣信用貸出の調整を強化

A石炭、電力、石油、輸送などの需給アンバランス是正

B土地市場の管理整頓、建設用地の統制の厳格化

C固定資産投資項目の整理

 D構造調整を加速させ、ハイテク、農業など弱いところ、教育、生態環境など社会事業への傾斜、西部大開発、東北振興の支持

 E対外開放の拡大

 党と中央が昨年の夏ごろ以来、金融面を中心に措置を講じてきて、ここにきてようやく成果が現れたということです。

 興味深い言及は、金融措置だけではなく、土地管理の強化や投資項目の再検査、江蘇省の鉄本鋼鉄公司の違法建設に対する地方政府や関係者の責任追及など措置の多元化が見られるという点です。こうした措置は行政措置にあるものですが、地方政府が業績を強調するあまりにバランスを欠いた投資や許認可を行った結果が今回の過熱につながっており、こういった政治状況では行政措置が有効に働いている、逆に言えば市場の原理では統制できないということを表しています。

 

(2)福建省の非公有制企業の9割が党組織を設置

福建省では、2006年までに従業員50名以上の非公有制企業には党員を配置し、従業員100名以上の企業には党組織を設置する「50100計画」を2004年から実施しています。

 2003年末までに党員は5万8466万人、党組織が4989に達し、組織率は98.3%に上っています(しかしどういう条件での組織率かは不明です。98.3%も組織されているのなら、「50100計画」なんてやらなくてもいいだろうから)。

 福建省の泉州地区では、非公有制企業への党員の派遣と再就職活動を結びつけ、党が企業の中核を担っています。

 

20040525

 

(1)国台辧、陳水扁520講話にコメント

5月20日の台湾総統就任式以来初の中国当局の陳水扁の総統就任演説へのコメントです。

 人民日報に掲載された記事では、第1に就任式前の5月17日声明を整理し、台湾問題に対する中国当局の基本的な立場原則を確認しました。第2に、5月20日の演説に対する基本論点を上げ、第3に5月20日演説を分析、批判しています。

 第1については、上記20040518の項

 第2については、@「現在の両岸関係発展のカギは『1つの中国』の原則を受け入れるかどうかにある」「520演説には全編にわたり『台湾は独立国家である』という含意に満ちている」

 第3については、520演説には、陳水扁を独立派と見なす際の根拠となってきたキーワードである「台湾独立」や「国名」の変更、「2つの国論」、「台湾独立を問う住民投票」といった文言は見あたらないが、論調は台湾独立志向であるとしています。

 そして最後に、『憲法制定』に主権、領土、独立といったことに及ぶ議題を盛り込むかどうかについて、陳水扁が「例えば『まだ大多数の共通の認識を得られていない』『個人の建議』などのあいまいな言い方を使ったことによって、彼(陳水扁)が今後『台湾独立』で分裂させるための伏線を隠し、空間を準備した。これによって、台湾情勢の緊張の根源を消し去ることができず、アジア太平洋地域の平和と安定に影響する隠れた危険は依然存在する」としています。

 基本的に陳水扁の演説の内容がどうであろうと、陳水扁を独立派として位置づけようというコメントです。そのことは、今後4年間に中国当局は陳水扁政権と対話は想定していないとことを意味しています。政治的な交渉はなかなか難しいでしょう。

 

(2)国務院が第3回行政審査認可項目の廃止を発表

政府のミクロ経済への直接干渉を弱め、市場システムを有効に機能させるために200110月からスタートした審査認可制度改革では、200210月と2003年2月に審査認可項目の取り消し、調整を決定してきました。

 今回の3回目では、495項目で廃止・調整を行いました。

 過去3回の総計では1795項目を廃止、調整しました。これは全体の50%に上ります。

 審査認可項目の削減の情況は地方政府などもよく発表しています。しかし、いつも思うのですが、これがどのような領域で、どの程度の効果を上げているの。廃止される意義はもちろん大きいのですが。なんかみんな横並びで、どうでもいい審査認可項目が廃止されているようで。