第33回 2004年2月の『人民日報』(2004年3月19日)

 

 出張、年度末の原稿締め切りで、掲示板の書き込みはすっかり滞ってしまいました。今年度末の仕事は、今年の5月刊行予定のアジ研の看板『アジア動向年報』の中国の政治と外交の項目の執筆、主査をしているアジ研の研究会「市場経済転換期の中国の政治過程」の中間成果報告書と外務省日中知的交流支援事業の報告書の執筆、編集でした。けっこうもたつきましたが、ようやくメドがつきましたので、掲示板の更新も本格再開しました。

 

20040203

 

(1)温家宝が安徽省・湖北省を訪問し、鳥インフルエンザの予防・治療工作を検査(〜2月1日)

温家宝自ら被災地を訪問し、指示を出しました。

 温家宝が北京に戻ってきたタイミングで、全国鳥インフルエンザ予防・治療総指揮部第1回全体会議が開かれ、総指揮の回良玉副総理が7つの指示を出しました。

 

(2)胡錦濤がガボン大統領と会談

経済技術協力協定に調印しましたが、この協定は事実上中国からの資金援助協定です。

鳥インフルエンザで大変だというのに、のんきに外遊をしているようですが、外遊先からも指示を出しているようですし、それなりに対応しているようです。というよりも、それほど中国では深刻な問題と思われていないのかもしれません。

今日北京の友人と話したところ、「発生しているのは南の暖かいところでしょう、北京は寒いからまだまだ関係ない」と全くの人ごと。しかし、これから暖かくなったときの影響については心配していましたが。SARSの時もそうでした。「あれは広東のことでしょう」と。ちょっと気になります。

 

20040204

 

(1)外交部が日本の陸上自衛隊のイラク派兵にコメント

⇒「日本の隣国として、日本が真剣に歴史の教訓を吸収し、軍事安全領域で慎重に事を運び、平和発展の道を進むことを今後も堅持するよう希望する。これが日本の根本利益に符合し、地域の平和安定を維持するのに有利である」と述べています。

 特に注目すべきは、中国の対日観で、「日本が軍事安全領域で一連の突出した措置をとってきたことで、日本国内と周辺隣国は日本の軍事政策の方向性対し深い関心を寄せている」と今回のイラク派兵を位置づけています。

 これをさらに具体的に表しているのがやはり今日付の『人民日報』に掲載された「日本の安全観は重大な変化を見せている」と題する東京特派員の論説です。それによると変化は「『他国に頼った国際秩序建設』から『危険を承知の上で世界秩序に参与し、それを維持する』、『金を出す、汗を出す、人を出す』から『血を流す』準備をする」に重大な政策変更があった」としています。

 

20040205

 

(1)一部産業の過度の投資を厳しく抑制することに関するテレビ電話会議開催

⇒現在問題になっている一部の産業の盲目的な投資と重複投資を抑制することを指示する会議です。特に問題となっている産業は鉄鋼、アルミニウム、セメントです。

 投資の増加が速すぎ、供給過剰で、製品構造も不合理で、「高消耗、高汚染、低産出」の問題を指摘しています。

 これに対し、国務院は近く検査員を重点地域に派遣し、指示を守っているかの厳しい検査を行うそうです。本腰をあげて、過剰投資を抑えにかかるということです。

(2)第2回6カ国会会談について戴秉国に対するインタビュー記事掲載

⇒外交部副部長の戴秉国のインタビューです。

 中国はこの会談に対し、「会議が開かれ、うまくいき、今後も継続されることを希望する」

 共同文書については、参加各国が共同文書に会談の成果を盛り込みたいという初歩的共通認識を持っている。

 各国が製を持って建設的な態度で臨めば、信任を確立し、分岐を縮小し、共通認識を拡大し、解決に向かうだろう。

 とにかく、長い道のりです。

 

20040220

 

(1)新華社がケ小平の「1つの国家 2つの制度」を掲載

1984年6月22日・23日のケ小平の談話です。これはすでにケ小平文選第3巻にも掲載されているものです。この談話の掲載は香港基本法発布14周年にちなんだものと説明されていますが、わざわざ今日、再掲載したあたりに意味があるわけです。

 大事なのは新華社の編集者の言葉で、「『1つの国家』は『2つの制度』の前提である、(中国、香港、マカオ、台湾が−筆者注)「『一国二制度』を認めるには、まず『一国』つまり中華人民共和国であることを認めなければならない」の部分です。

 人民日報の評論員が「一国二制度が香港の長期的繁栄・安定の根本的な保証である」と言うものの、それは総統選挙を1ヶ月後に控えた台湾住民に対し、台湾の長期的繁栄・安定の根本的な保証も「一国二制度」にある、だから台湾独立志向のある陳水扁への投票を控えようと呼びかけたものです。台湾総統選挙までのちょうどあと1ヶ月という今日、こうしたケ小平の論文が再掲載されるのにはそれなりの理由があるのです。

 

(2)国際副刊で日本特集

掲載された論文は3本です。その内容は

 @日本経済は回復の見通し

Aイラク派兵、ミサイル防衛システムの構築、防衛大綱の見直しという安全保障政策の重大な調整が行われている。その背景には政治の右傾化とテロへの危機感であり、後者は理解できるが危険な道に進むことが憂慮される。

B日本はどこに向かうか。政治大国に道を進もうとしている。カギは憲法改正にある。

 日本に対する見方を示しています。日本の国際貢献に対し憂慮しているのですが、国際環境の変化に伴い日本も変わる、しかし中国ではそれが歴史認識問題につながっていくので、日中関係が新たな段階に入るのはなかなか難しいです。

 

20040221

 

(1)ケ小平「1つの国家 2つの制度」再掲載に対する反応

香港のマスコミや親中派の支持する声を紹介しています。マカオに対する言及までありましたが、台湾の反応については掲載されていません。だからといって、ケ小平談話の再掲載が台湾総統選挙向けではないと言うことはできません。

 

20040222

 

(1)王毅外交部副部長、米国務省朝鮮半島問題担当特使と会見

25日からの第2回6カ国協議を前に米中間の最後の打ち合わせです。

王毅は協議の目指すところを、意見の食い違いを減少し、共通認識を積み重ね、問題解決の具体的な目標を確定することであると述べています。

 

(2)温家宝、省部級主要幹部専題研究班終了式で重要講話

党中央主催の科学発展観を樹立し、確実なものにするという専題研究班です。地方の省長や中央省庁の部長クラスの主要幹部に対し、胡錦濤体制の考え方を周知するための学習会です。何を地方や省庁のトップとして、どうすることが成績として評価されるのか、受講する方も、最高指導部の意向を知るいい機会です。ここで「政積」に対する認識を変えることができれば、中国も変わるのですが。