第101回 2011年6月の『人民日報』（2011年11月6日）
【20110601】公選公推、賃金集団交渉の問題点
Hao淼「”公選ブーム”を冷静に見る」という文章が掲載された。広く推薦で候補者を募集し、投票で幹部を選抜し任用するという「公推公選」による幹部選抜任用制度が普及している。しかし問題もあるということを指摘する文章。
問題は2つある。1つは突然やってきて試験を受けて、成績がよくて官職に就くという「空中ブランコ」と、もう1つは試験テクニックを磨く「試験の達人」。
「公選ブーム」を前に、「試験もできて、実力もある」優秀な幹部をどうやって選ぶかがカギで、理性的な思考と科学的な操作が必要と指摘する。具体的には、(1)成績よりも実績が重要、(2)試験よりも考察(実際の調査)が重要、(3)弁舌よりみんなに称賛されているかどうかが重要。
もう1つは、張刃「賃金集団交渉は、国有企業が模範を示すべき」という文章。
賃金問題は非公有企業でひどく、国有企業は比較的調和的という人もいるが、そんなことはない。国有企業は、大型企業と中小企業では賃金が全く異なる。また派遣労働者も多く、正規労働者との賃金格差も問題。だからこそ、国有企業こそ、賃金集団交渉をきちんと実施、その模範を示すべきだと指摘する。
政治改革の成果ともいえる「公推公選」による幹部選抜任用制度と賃金集団交渉制度の問題点を指摘している。これらの問題は重要なのだが、指摘が表面的な気がする。
【20110602】評論部がまたまた「社会」向け連載をスタート
1面トップは「中部崛起の『戦略的支点』を構築しよう」という湖北省の経済改革の成果を宣伝する記事。胡錦濤が湖北省を視察中で、それに合わせたのだろう。
国務院常務会議で、7月1日から城鎮居民社会養老保険の試点をスタートさせることを決定した。これは重要な決定。
評論部がまたまた連載をスタートさせた。連載名は「いかに社会の関心に応えるか」というもの。今日掲載されている文章のタイトルは「良性な相互行動の中で“良いガバナンス”を探ろう」というもので、次のようにある。
「ここ数年の状況を見ていると、概してすぐに公衆の質問に応え、社会状況、民意に正確に対応しており、良性な相互行動の中で、政府の公信力を高めることができる。ここから言えることは、群衆の要求、メディアの監督はまさに党と政府の貴重な執政資源である」
社会の声を聞いて、党、政府はそれに応えることで、社会からの信頼を高めようということを主張する連載で、前回5回で終わった「社会心理に関心を寄せよう」の連載（第100回で紹介）に続くものだ。内容もあまり変わらないようなので、前回の連載を5回で止めず、続ければよかったのに。
連載が長くなると読まれなくなるので5回くらいで区切って、新シリーズをスタートさせたのか。それとも前回の連載が思いの外、国内で反響を呼んだので、二番煎じか。社会の声を聞くことは大切なことだし、党や政府に対しもっと社会の声を聞けという啓蒙の意図があるのか、それとも評論部は社会の側に立ってメッセージを発していますよというアピールもあるのかもしれない。
前回の連載への対抗的な意味合いを持っているのかもしれないので、連載を注視する必要はある。しかし、今日の段階では、それは読み取れない。私には、評論部がちょっと調子に乗りすぎているとしか思えない。
【20110603】大学生の就職先確保を指示
国務院が全国大学卒業生就業工作テレビ電話会議を開催した。5月31日に国務院が「大学卒業生の就業工作をさらに立派に行うことに関する通知」を通達したことにちなみ、各地方、部門に通知の徹底をするために開かれた会議だ。張徳江副総理・中央政治局委員と劉延東中央政治局委員が出席した。
このタイミングでの通知通達について「この1カ月くらいが大学卒業生の就業指導と就業サービスを立派に行うカギとなる時期である」からと説明した。
指示は「大学卒業生の就業を促進することは、わが国の就業工作の第一の任務であり、科学的発展の実現を深く貫徹し、思想と行動を中央の政策決定に統一するよう配置し、工作を強化し、しっかりと政策実現をつかみ、多くのチャネルで就業ポストを開発し、就業指導サービスを強化し、大学卒業生の就業工作目標の実現を確保しなければならない」というもの。
通達を出した後、すぐにテレビ電話会議を開いているので重要な通達だ。卒業を控えているのに就職先が未決定者の大学生が多いということなのだろう。しかし、タイミングがよすぎる。六四天安門事件発生日を翌日に控え、党中央が大学生に強い関心を持っていることを示す意図と、大学生の管理を指示したのだろう。大学生が何かしないかと危機感をもっているのだろう。今、何かできるような度胸のある学生はいない。当局の警戒しすぎだが、そう思ってしまうほど自分たちの政権運営能力には問題が多いと自覚していることの裏返しでもある。
中国人民銀行が、地方融資プラットフォーム（平台）の資金借り入れ状況を発表した。具体的なデータはないが、14兆元ぐらいだろうとのこと。全国には地方政府の融資プラットフォームが1万件以上あり、そのうち県レベル政府のものが7割を占める。一部は運営メカニズムが不健全で、持続可能な発展能力に欠けるものがあるという。これはきっと問題になるもので、抑えておく必要がある。
【20110604】上海で過ごす「六四」
私に使用を許可されている大学の学生用ネットは、先月5月中旬から、海外サイトへのアクセスが制限され、ヤフージャパンや日本の新聞社のサイト、ライブドアなど多くのサイトへのアクセスができなかった。MSNは、ニュースのトップは表示されるがそこから個別ニュースには入っていけなかったり、Hotmailはアクセス不可だった。しかし、なぜかgmailはアクセスOK。アクセス可否の基準は分からないのだが、とにかく基本的に海外サイトへのアクセスはできなくなっていた。
しかし、6月4～6日の連休明けの昨日7日には規制は解除され、通常どおりのアクセスが可能になった。本当に分かりやすいネット規制だった。大学側が上級部門の指示で規制したのか、それとも自制的に規制したのかは分からない。しかし、学生用ネットが規制されていた間も、教師用ネットは規制されていなかった。つまり規制が学生向けだったことは明らかだ。
しかし、学生は先生のPCを借りることもできたし、大学近くの喫茶店の無料の無線LANでは接続は通常通りで、学生がPCを持ち込んでアクセスしていた。大学の学生向けのネット規制がまったくの形式であり、意味のないことだと分かるだろう。20年以上も経って、このご時世に、こんなバカげたことをいつまでやるのだろうか。
もう1つ、おもしろかったのは、6月4日の朝、学内の広い芝生の近くの並木道に、3人の男性が木にはしごを立てかけて、庭師のフリをして立っていたことだ。作業道具ももっていないし、作業着も着ていない。携帯電話を手にして、3人はただ話をしているだけで、作業をした気配もない。何か不測の事態が起きたときに対応するためのその筋の方々だったに違いない。
【20110605】「六四」に4人の中央政治局常務委員が北京を不在
6月4日に北京にいない中央政治局常務委員が多かった。呉邦国は外遊、温家宝は湖北省視察、賈慶林は3省市視察、習近平は外遊だ。9人中4人が北京にいなかった。去年までどうだったのか分からないが、6月4日だからといって、最高指導者が不測に事態に備えて北京に待機する必要はないということなのだろう。
小さないざこざは起きるかもしれないが、そうしたことは限定的で、個別に対応をしっかりしておけば問題なし。世間の「六四」に対する関心が極めて小さいことは、「中国版ジャスミン革命」の呼びかけへの反応を見ても分かる。いまや「六四」とはその程度のことなのかもしれない。
温家宝は干ばつという待ったなしの課題に対応していたのかもしれないが、呉邦国や習近平はあえて6月4日に北京にいることを避けたと考えるのは深読みなのだろう。
【20110607】文化にも信頼性と包容力が必要
広東省で初の公推直選による鎮党委指導部の選出が行われた。広東省梅州市梅県桃尭鎮で、277人の党代表と党員代表が、書記(定数1)2名、副書記(2)3名、委員(6)8名から直接選挙で選出した。書記と副書記の候補者は全県から、委員の候補者は全鎮から選出した。
来年の党大会に向けて、地方レベルの党指導者の交代が各地で始まっており、選挙をやったとか、こんな人が党書記になったとかの記事が連日出ている。広東省初ということで取り上げたが、いつもながら候補者選出のプロセスまで分からない。そのため、このことが画期的なことかどうか判断がつかない。
最終ページの文化面に「王蒙」へのインタビューが掲載された。王蒙は、1957年の反右派闘争で粛正された小説家で、改革・開放以後復活し、政府の要職にも就いている。掲載のインタビューでは、何となく党や政府の文化政策に対し批判めいた発言をしている。文化にも信頼性や包容性が必要で、文化を法規で規範化するな。中身がない娯楽も人々が暇つぶしで楽しんでいればそれでいいじゃないか、みたいなことを言っている。
「現在欠けているのは、本当の文化エリートによる、文化産業、事業、文化の生産、消費における一種のバランス、導き、抑制の作用である。欧州や米国、日本には、文化市場のバランスをとるという力がある。彼らは市場に反対しないし、市場を罵りもしない。流行歌手を罵らないし、流行歌手は大衆歌手といっしょに歌を歌う」とも言う。
あまり慣れていない領域の文章なので、途中で読んでいて飽きてしまったが。単なる文化論かもしれないが、王蒙の発言だけに何か含んでいそうで新鮮。
【20110608】学生の政治への関心は相対的に高くない
今年で20年目を迎えた教育部が実施する2011年大学生思想政治状況調査結果の一部が掲載された。15の省区市、140学校、2万5千人あまりの学生を調査したもの。掲載されたデータは以下の通り。
(1)共産党の指導に対する設問
問「党の執政能力のさらなる強化に対し」－答「非常に楽観的」＋「わりに楽観的」：89.6％
問「共産党に入りたいか」－答「入りたい」：8割近く
問「中国の特色をもつ社会主義事業のさらなる発展、総合国力の強化、国際的地位の向上に対し」－答「非常に楽観的」＋「わりに楽観的」：98.1％
問「2020年までに中国は全面的に小康社会を構築するという目標を実現することができるか」－答「非常に楽観的」＋「わりに楽観的」：86.8％
(2)社会主義の核心的価値体系との一致を見る設問。問「次のことに同意するか」
答「誠信は人としての根本である」：95.2％
答「孝は人としての根源であり、あらゆるものの中で最も重要なものである」：94.2％
答「一滴の水の恩を、泉を湧きだたせることで報いる」（小さな恩に大きく報いること）：86.9％
答「ボランティア活動に参加したい」：85.9％
(3)そのほか
「思想政治教育の各工作への満足度」：安定した中での向上
「補導員の活動」「学内文化活動」「家庭経済困難学生への支援工作」への満足度：各90％以上
今年で20年目ということは、1989年の六四天安門事件以降、当局が大学生の意識を把握するために始めた調査といえる。だいたい高い値になることは想像がつくが、その分相対的に低い値は目立つ。1つは共産党に入りたい学生が8割を切っていること。思想政治教育に対する満足度の値が示されていないことはあまり高い値出なかったことをうかがわせる。
【20100609】人代代表「独立候補者」はいない
全人代法制工作委員会の責任者が、今年2011年から来年2012年にかけて全国の県レベルと郷レベルで実施される人民代表大会（人代）代表を選ぶ選挙について解説した。県と郷の人代代表は有権者の直接選挙によって選ばれる。
「ネットによれば、『独立候補者』の身分で末端の人代代表選挙に参加したい人がいるが、これについてどう評価するか」との質問に対し、次のように答えた。
「わが国の県と郷の人代代表候補者は、各政党、各人民団体、選挙民によって法に従い手続きに沿って、選ばれ推薦された『代表候補者』が、討論、協商を経て、或いは予備選挙を経て確定した『正式な代表候補者』だけである。いわゆる『独立候補者』はなく、『独立候補者』は法律に依拠しない。」
一部の欧米メディアが、政党や団体の推薦によらず人代代表に立候補することをネット上で明らかにした何人かの人を「独立候補者」と取り上げて伝えた。まず、これについては、全人代責任者が言うように、「独立候補者」というカテゴリーはなく、彼らは「選挙民10人以上の推薦」で立候補が可能とする法律に沿って立候補するだけのこと。
しかし、ここで全人代責任者は問題をすり替えている。欧米メディアがわざわざ「独立」というのは、彼らの立候補には、共産党や官製の団体の推薦に寄らず、「共産党を監督するため」という目的があるからだ。その点を素通りして、全人代責任者は手続き論で「独立候補者」は存在しないと否定した。しかし、全人代責任者は間接的に、「独立候補者」がそう簡単に人民代表になれるわけではないことも示した。それは、「討論、協商を経て、或いは予備選挙を経て『正式な代表候補者』を確定」という規定を紹介している点だ。
立候補した人がすべて「正式な代表候補者」として住民に直接選挙されるわけではない。それでこそ民主的な選挙なのだが、実際には事前の「討論、協商」過程で選別され、共産党にとって都合の悪い立候補者はほとんどが「正式な代表候補者」にはなれない（この「討論、協商」過程はブラックボックス化されているが、私はかつて拙著でこの過程を紹介したことがある）。当局はこれで「民主的な選挙」と言っている。
「独立候補者」に期待する気持ちは分かる。しかし現在の一党支配のもとで、「独立候補者」は意味がない。しかし、この「独立候補者」のうち、実際に何人が「正式な代表候補者」、さらには「人民代表」になったかを検証すれば、議論してもかまわないだろう。そして、「独立候補者」自身が、排除されたことを理由に、ブラックスボックス化されている「討論、協商」を広く問題にすれば、それはそれでおもしろい。
【20110610】11.15特大火災で上海市長はお咎めなし
昨年2010年11月15日に上海で発生した「特大火災」に対する国務院の調査グループの報告、処分が発表された。注目は、韓正市長が処分されるかどうかだったが、副市長への処分に止まった。これまで、いくつかの省で「こんなことで」という省長の引責解任があったが、この「特大火災」では、市長の引責はなかった。引責解任の基準などないということだろう。
李建国全人代副委員長が駐中国日本大使と会見した。李建国は、昨年2010年9月の尖閣諸島海域での中国漁船による衝突事件で、訪日が中止になった人。その人が日本大使と会見したこと、その記事が掲載されたことで、中国側の対日関係改善の意思が示されていると思う。
【20110611】28の地方が省エネ目標を達成
国家発展改革委員会と国家統計局が、28の省・自治区・直轄市が第11次5カ年計画の省エネ目標をクリアしたと発表した。そしてGDP単位あたりのエネルギー消費の値が19.1％低下した。
第11次5カ年計画の目標達成の状況がキチンと報告されたので注目した。環境に関する目標達成の可否は指導者の評価項目でもある。28の省区市で目標をクリアしたということは、ほとんどの指導者は評価で問題なしということを意味する。新疆は別の評価基準があるらしいので、残りの2つの省区市はダメだったということか。そうなるとその指導者は問責とか引っかかるのだろうか。28の省区市でクリアしたことも信じがたい。
最近、郭伯雄中央軍事委員会副主席が蘭州戦区を調研視察した。「胡主席の国防と軍隊建設に関する主題主線重大戦略思想」を深く学習し貫徹し、その内容と要求を正確に把握しなければならない」と指示した。靖志遠第2砲兵司令員が同行した。
来年2012年の第18回党大会で、胡錦濤が党中央軍事委員会主席に留任するのかどうかというところが関心の1つにある。同副主席の郭伯雄や徐才厚の動向から何か読み取れないかと注目しているのだが、なかなか分からない。ただ、胡錦濤が自らの冠をつけて軍事思想を体系的にまとめ、軍内に浸透させようとしている。今日の郭伯雄の調研視察でも、胡主席の思想をちゃんと学習しろと指示をしている。最近は徐才厚も同様だ。このやり方は江沢民と全く同じ。胡錦濤が江沢民のやり方をまねているようであり、党中央軍事委員会主席に留任する気でいるのだろう。
もう1つ、2人の副主席が地方軍区の視察に誰を同行させているかで、今後の軍の人事を占おうと思っている。しかし、視察のたびに同行者が異なるので、一概に誰をひいきにしているということが言えない。
【2011013】省党委書記に会計検査
中国共産党創立90周年を7月1日に控え、俄然党史に関する宣伝記事が増えてきた。そんな中での注目記事は2つ。
1つは中国の会計検査院にあたる審計署が「“第12次5カ年計画期”会計検査工作発展計画」(意見請求稿)を公開し、広く意見を求めることになった。
会計検査工作の焦点は、政府が汚職の根源として圧縮を支持している、「三公」、すなわち(1)公費による海外渡航、(2)公用車、(3)公務接待に対する会計検査の強化が1つ。そして、会計検査の対象を拡大している点で、これまでの一部の中央官庁の部長に加え、省レベルの党委員会書記まで拡大するという。
どれも難しい。しかし、ここ数年の審計署は、チクっと中央官庁や地方政府の予算の使い方の問題点を指摘してきた。中央官庁の部長や省レベルの党委員会書記に直接的なダメ出しをすることはないだろうが、問題点を指摘するだけでおもしろい。指摘を受けた部長や書記は恥ずかしい。
今年3月の全人代で突如飛び出した保障住宅1000万戸建設プロジェクト。その実施状況が報道されており、全国で計画の34％が着工済みだが、6省区で20％足らずだという。タイムラグがあって、年の後半に着工が本格化するが、地域間でバラツキが見られる。資金難、土地収用における保障制度の詳細がまだ決まっていないこと、着工手続きが複雑なことなどの問題が明らかにされているが、11月末までには100％着工されるとの見通し。
誰もが拙速感をもったこのプロジェクト。やっぱり、地域間のバラツキが顕著に見られる。いかに全人代での発表が準備不足だったか。慌てて責任者の李克強が会議を開いていることも今日の『人民日報』で紹介されている。
【20110614】胡錦濤が習近平に対抗
1面の真ん中に胡錦濤とカザフスタン大統領との会談の記事が大きき掲載されている。写真2枚が掲載される念の入れようだ。エネルギー問題などがあり、確かに重要な会談かもしれないが、これほどの扱いにするのには違和感がある。私には、この会談の重要性故ではなく、入れ違いで外遊から戻ってきた習近平に対抗しているようにしか見えない。外遊中、習近平の記事がけっこう載っていたから。
江西省修水県で、村民自治の新モデルとして村民事務理事会ががんばっているという宣伝記事が掲載された。内容はどうでもいい。気になったのは「村民事務理事会」という組織だ。また農村に新たな組織ができた。いくつ組織を作ればいいのか。
【20110615】今年6度目の預金準備率引き上げ
1面は、胡錦濤の外遊先での首脳会談の記事3本（タジクスタン大統領、キルギスタン大統領、イラン大統領）で大部分を占めている。しかも3本とも写真付きでインパクトがある。これでも飽き足りないのか、2面にもカザフスタン首相との会談記事が写真付きで掲載されている。習近平を意識しているのかどうか、実際のところは分からないが、とにかく過剰とも思われるほどの胡錦濤アピールだ。
昨日14日午前、国家統計局が5月のCPIが5.5％上昇したと発表した。34カ月ぶり、2008年4月以来の高値となった。これを受け、午後に人民銀行が6月20日から預金準備率を0.5ポイント引き上げると発表した。今年に入り6回目の引き上げで、去年からでは12回目になる。御用エコノミストの郭田勇、巴曙松のコメントも紹介されている。
現在の経済運営は2007年から2008年に酷似している。2007年、中国人民銀行は、6回の利上げと11回の預金準備率の引き上げを行ったが、経済過熱を抑えることができなかった。その結果、2007年末に「引き締め気味」の金融政策に転換するのだが、2008年4月まで高いインフレ率を抑えることができなかった。その時、中国人民銀行の金融政策への批判が展開され、マクロ経済政策をめぐる人民銀行と国家発展改革委員会、さらには党中央・胡錦濤と国務院・温家宝の対立も見られた。
預金準備率の引き上げは、今年に入り6回目、去年からでは12回目になるが、結果的にインフレは収まっていないとなると、今回も人民銀行の金融政策への風当たりは強いだろう。
【20110616-1】メディアの役割
評論部が連載している社会関心に関する文章の第3回が掲載された。タイトルは「“媒介素養”は執政水準を体現する」で、「民情は“敵情”ではなく、むしろメディアは社会の早期警戒器である。メディアが熱点事件や敏感問題を報道したり、注目することで、当面一部の地方政府は一時期耐え難いかもしれない。しかし、長期的に見れば、人民群衆の利益の保護、社会進歩の推進にとって利するところが大きい」という内容。
メディアの役割の重要性を主張した文章だ。しかし、「あなたたち『人民日報』はその役割を果たせていませんよ」というメッセージのようにも思える。自己矛盾する文章のように思えるが、暗にその不満を主張しているのならば、評論部も大したものだが。
国務院の人事が公表され、江小娟さんが国務院研究室副主任から国務院副秘書長に昇進した。かつて社会科学院財貿研究所にいたころ何度かお会いしたことのある優秀な女性エコノミスト。ずいぶん偉くなったものだ。この時期に国務院副秘書長に抜擢されたということは、当然経済担当の副総理格の指導者との関係が密になるということで、新政権以降の経済運営でも重要な役割を果たすことになる。
【20110616-2】弱者を助ける「グレーな」組織の脅威
「四川同郷会」という組織が興味深いので紹介したい。
6月6日に広東省潮州市潮安県古巷鎮というところで、出稼ぎ労働者をめぐる騒動が起きた。14日の時点でまだ破壊や焼き討ちの騒動は収まっていないほど、長期化していた。この事件については、上海紙『東方早報』には連日、情況や論評が掲載されている。
この事件自体は、出稼ぎ労働者に対する雇用者側の賃金未払いが発端で、それに対する抗議行動が発生し、それがエスカレートして、当局側と衝突するというよくあるものである。
しかしこの騒動で注目すべきは、四川省出身の出稼ぎ労働者のバックに「四川同郷会」という組織があったことである。『東方早報』の記事によると、潮州にある「四川同郷会」が1人120元で若者を雇い、彼らがバイクに乗って、棍棒を手に持ち、多くの人たちを騒動に煽ったという。この「四川同郷会」は、同郷の人の代理で雇用者側と賃金や賠償の交渉を行う。しかし、有料で交渉によって得た金額の50％を手に入れる。潮州には、安徽や江西など各地の「同郷会」が存在し、いずれも同郷の被害者に代わって賃金や賠償などのお金を徴収するのが「業務」だという。
ある出稼ぎ労働者は、カネと権力を有する地元の経営者に対しては、集団で対抗するしかなく、「同郷会」は必要という。他方、記事は、専門的に代理となって賠償請求する運営モデルの「同郷会」は法律のギリギリのところにあり、グレーな組織だと否定的だ。そして記事は、各地の「同郷会」が存在することは、潮州の労働権益保障が疲労していることを示しているとも指摘する。
出稼ぎ労働者の権利をどう保障するかという問題に対し、当局は教育や医療などの領域では制度改革を行っていることをよく宣伝している。しかし、私が見るに全く進んでいないのが、彼らの権利表出のチャネルの整備である。実はこれが最も大事なこと。これは出稼ぎ労働者に限らず、弱者に不満があるとき、誰に、どこに言えば、真剣に対応してくれるのか。この制度が全く整備されていない。その結果が往々にして、弱者を実力行使に追い込み、各地で騒動を起こしている。この構図は全く変わっていない。
そんな中で、「四川同郷会」という組織は非常に興味深い。もちろん、有料サービスなのでビジネスライクかもしれない。また暴力行為も辞さないところもある。評論は、こうした点を批判する。しかし、「集団で対抗するしかない」弱者にとって、「同郷会」という組織は、まさに神様のような存在である。たとえ50％を支払ったとしても、一銭ももらえないよりもいいに決まっている。
権利表出のチャネルを整備しない結果が、「同郷会」であることは仕方のないことである。このことは、共産党にとって、実は大きな脅威である。たとえ、それが「グレーな組織」であったとしても、弱者の権利を保障する「組織」が存在している。そしてそれが潮州の中で、各地の同郷会と横のつながりを作ればどうなるだろう。また他の地域にある「四川同郷会」と横のつながりを作ればどうなるだろうか。またこれをきっかけに違う形でもっと透明性のある合法的な組織ができるかもしれない。
共産党にとって、個人や学者が民主化を叫んでいるうちは痛くもかゆくもない。しかし、自らと同じような横や縦の組織ネットワークが他に存在することは脅威である。それは法輪功事件で実証済みだ。しかもそれが同郷による組織となれば、宗教団体などとは異なり、否定のしようもなく扱いが余計にやっかいだ。
小さなほころびは、早く対処すればたいしたことにはならない。しかし放っておけばほころびはやがて大きくなり、結果取り返しのつかないことになる。社会管理もいいが、共産党は同郷会が拡張していく現実をどう理解し、それにどう対応するのだろうか。
『人民日報』では6月15日付で関連の論評が掲載された。廬勇の「流動時代は融合の大作の芝居を立派に演じよう」と題する文章だ。その内容は以下のようなもの。
「最近、一部の地方で連続して地元民と外来出稼ぎ者の摩擦事件が発生した」
「異なる地域、異なる階層の人々が生存と利益のために矛盾を発生させたとき、各方面の利益に配慮し、とりわけ弱勢群体の利益要求を有効に表出させ、正当に権益を保障することが差し迫ったものになっている」。
同様のテーマのテレビドラマを取り上げ、「曲折を経て、衝突と転化の中で、融合を実現し、涙と笑いの中で登場人物の命運は喜びの最終回を迎える。われわれの社会発展はこのような人々を感動させる“大作の芝居”になるのだろうか。それには、社会管理者から社会の構成員までの協力の創造と出現が必要である」
弱者の利益表出の重要性は自覚しているようだが、社会管理が重要という。本質は社会管理ではない。テレビドラマのような簡単なものではない。
【20110617】胡錦濤のロシア訪問
連日、胡錦濤外遊の記事が1面を大きく占めている。16日からロシア公式訪問が始まり、メドベージェフ大統領との会談の記事が1面中央を占め、プーチン首相との会見も大きく扱われた。2面も関連記事が独占し、ちょっと異常さを感じる。
メドベージェフ大統領との会談では、22項目からなる「現在の国際情勢と重大な国際問題に関する聯合声明」に署名した。胡錦濤は「最も重要なことは、相手の国情に符合した発展の道をしっかりと支持し、相手の主権、安全、発展利益、特に核心的利益の維持の努力をしっかりと支持し、相手の発展振興をしっかりと支持し、世界の多極化と国際関係の民主化の推進に惜しまず力を入れなければならない」と述べ、貿易総額を2015年までに1000億㌦、2020年までに2000億㌦に引き上げることや、エネルギー協力を強化し、原子力発電、石炭、電力、新エネルギー、新技術などの領域での協力を拡大し、中ロのエネルギー戦略協力パートナーシップの構築に努力することで合意した。
【20110620】あきれた地方政府の暴動対応
6月6日、広東省増城市新塘鎮で、出稼ぎ労働者による違法営業の露店を強制的に立ち退かせようとして、当局が店主の妊婦に暴力を振るったことに、抗議する大規模な暴動（新塘事件）が起きた。この出稼ぎ者が当局への非合法の場所代の支払いを拒否したためという話もある。地元政府はこの暴動を厳しく取り締まっているわけだが、どうもうまく進んでいない。
北京の『新京報』は、鎮政府が昨日19日の地元機関紙『増城日報』を通じて、新塘事件の手がかりに懸賞をつけ、手がかりを提供した出稼ぎ労働者には定住を認めるという通告を発表したことを伝えている。懸賞の金額は、手がかりを提供することから関係者を公安機関に連行するなど程度に応じて、5000～10000元と幅がある。通報者が出稼ぎ労働者ならば、「優秀出稼ぎ労働者」の称号を与え、増城市に移って戸籍を与えるとした。
『新京報』は、同時に「戸籍賞を“出稼ぎ労働者通報者”に与えることは適切か」との学者の評論を掲載している。評論は「戸籍制度の敷居こそが、社会矛盾の潜在的要因の1つであり、もしこれ（戸籍制度）を矛盾の「解決」に用いようと考えるならば、行動が目的に反している」という。
この暴動については、上海紙『東方早報』でも報じられてきたので知っていたが、鎮政府がこのような解決方法を通達したことは本当に情けない。これが県レベルの指示か、鎮政府独自の判断か、分からない。しかし、いずれにせよ、問題の解決どころか、むしろ矛盾をさらに煽る恐れのある解決方法しか思いつかないというのは、やはり地方レベルの幹部の政治指導能力の低さを表している。おそらく、これまで直面したことのない状況に、どう対応していいのか、全く分からないのだろう。
評論が指摘するとおり、戸籍制度の問題が根本的にあるため、戸籍制度の再構築が必要なことはいうまでもない。しかし、とリあえずどのように事態を収束させ、どのように社会を安定させればいいのか。地方幹部がまずは考えなければならないことだろう。それが、こんな方法しか考えられないのでは、今後こうした暴動は増えるし、収まらないだろう。
それにしても、この手の報道が出るといつも思うことがあるのだが、こうした暴動は本当に増えているのだろうか。今まであまり伝えられていなかっただけで、報道が増えているだけではないかという見方はできないだろうか。報道が増えていることと暴動が増えていることとはイコールではない。全国各地でこうした事件はこれまでにも起きているはずで、今に始まったことではない。
むしろ、最近は広東省の暴動だけを中国の地方メディアが狙い撃ちしているような気がしてならない。もちろん、そう考えるのには、他の政治的な意図を勘ぐっているからだ。この勘ぐりへの反論は難しくないかもしれない。やはり考えすぎか。
【20110621】広東省の暴動への中央の反応
広東省増城市の出稼ぎ労働者絡みの暴動について、20日付の上海紙『東方日報』が3ページにわたって報道していた。
6月21日付『人民日報』には、理論面に馮国勤上海市政治協商会議(政協)主席の「政協の優勢を発揮し、群衆工作を立派に行おう」と題する長文と、総合面に李立国民生部長の「創先争優の旗印高く掲げ、調和的な社区建設を深化させよう」と題する長文が掲載された。前者は今年2月の胡錦濤の社会管理強化を指示する重要講話を挙げ、社会管理における政協の役割を説いた文章。後者は社区の社会サービスの整備、強化の重要性を説いた文章だ。
上海市の新聞が広東省での暴動を連日詳しく報道していることはやっぱりヘンだ。
『人民日報』は、これまで直接的に広東省の暴動は報道していないが、今日の2つの文章も直接的ではないが関連したものと思われる。その理由は、前者の長文は、暴動の解決方法が社会管理の強化にあるという中央の方針に沿ったものだからだ。そして、上海市が広東省を狙い撃ちしているという私の見方に沿えば、上海市政協主席が書いていることを注視すべきだろう。 後者の長文は、暴動の争点が出稼ぎ労働者の戸籍がないことにより権利が認められていないことに対する不満だという中央の分析に沿ったものだからだ。末端の社会サービスの整備、強化は、まさに出稼ぎ労働者の諸権利を認めることと等しい。これも民生部長自らが書いている点を注視すべきだろう。
しかし、以上の認識からは、私は中央がこの暴動をキチンとみていない、認識していないのではないかと思っている。社会管理の強化は決して解決策ではない。しかし「社会管理」は、胡錦濤が今年2011年2月に掲げた政治スローガンであり、これを定着させなければならない。また、暴動の争点を権利が認められないことへの出稼ぎ労働者の不満だとは思わない。そもそも増城の暴動は、末端公務員が妊婦に暴力を振るわなければ起きなかったからであり、末端公務員の資質の問題だからだ。
私には、中央がことさらに出稼ぎ労働者の不満を「出稼ぎ者と地元住民」の対立という構図に矮小化して、「社会管理の強化」が重要だということに収斂させることで、胡錦濤の政治スローガンを盛り上げ、正当化しようとしているのではないかと見える。
それに加え、上海市の広東省たたき。それが意味するところは、薄煕来vs. 汪洋の権力闘争で、兪正声の上海市が、汪洋の広東省をたたくことで薄煕来の重慶市を持ち上げ、何か利益を得ようとしている。こうした見方、ちょっと深読みのしすぎだろうか。
【20110623】検察と政府の交流はOKか
共産党創立90周年記念日を控え、テレビもいつ、どのチャンネルに変えても革命関連の番組ばかりだ。そこで気がつくのは、1921年に共産党ができた当時から、毛沢東がその中心にいるような描き方をしていること。毛沢東は早期から共産党の中心にいたのだろうか。「革命＝毛沢東」の構図をことさらに強調し、恣意的に歴史が作られている感じがする。
さて、理論面に群衆工作に関する文章が並んだ。
(1)湖南省中国特色社会主義理論体系研究中心「指導幹部は群衆学習を重視し、うまくやらなければならない」
(2)中央党校中国特色社会主義理論体系研究中心「カギは群衆工作能力を高めることにある」
(3)天津市党校課題組「群衆工作を立派に行う貴重な精神の財富」
(4)劉愛軍総参謀部管理保障総合局長「終始人民群衆の立場を堅持しよう」
(5)李育波広東省珠海市闘門区副区長「信訪安定維持工作の科学的水準の向上に努力しよう」
このほか、海南省党委員会が群衆工作部を設立したこと、最高人民検察院が若い検察官を信訪部門に派遣し訓練することを表明したこと、貴州省貴陽市が群衆工作中心を設立したことも報じられた。
「×××中国特色社会主義理論体系研究中心」はダミーの部署、またはペンネームで、各地、各機関が「中国特色社会主義理論体系研究中心」というペンネームで『人民日報』に順番に文章を発表することを義務づけられているようだ。だから今日の中央党校文章も定期的な発表かもしれない。広東省での騒ぎのことが念頭にあり、党が群衆工作に力を入れることをアピールするためか、意図的に集中して掲載した感がある。また群衆工作を行う部門を設置した地方や機関のことも複数宣伝されている。これで各地が右に倣えでこうした機関を設置しそうだ。
中でも最高人民検察院が検察官を政府機関の信訪部門に派遣するというのが目についた。検察の独立、監督機能を考えると政府部門に入り込むことはおかしい。検察と政府部門の癒着が生まれるだけで、司法の独立がないことを裏付けている。それだけ群衆問題が深刻で必死なのか、何かやっているパフォーマンスが必要なので何も考えずに検察官を政府部門に送り込んでいるのか。
【20110624】総書記時代の江沢民の映像を満喫
中央テレビのメインニュース「新聞聯播」では毎日、共産党の歴史を振り返るコーナーがある。古い映像が流れるので、興味深く見ている。歴史はずいぶん進み、一昨日22日と昨日23日は江沢民づくし。外交と「3つの代表」重要思想のこと。久しぶりに江沢民の映像を「満喫」した。江沢民もなかなかアピールしている。まだまだ侮れない。
それに反し、胡耀邦や趙紫陽は全く見ていない（胡耀邦は見逃しているかもしれないが）。歴史評価は堅持されている。
【20110625】党員数が8000万を突破
中央組織部が、中国共産党の組織情況を発表した。2010年末の中国共産党の党員数は8026.9万人。前年比227.4万人増加した。2010年の新規入党者数は307.5万人。そのうち、学生の新規入党者数は123.6万人で前年比9.4万人増加した。新規加入党者数全体に占める学生の割合は40.2％となった。
党員を辞めたのは3.2万人。そのうち大部分は追放処分による。中組部副部長によれば、「こうした措置を通じて、党の先進性と純潔性を保証することで、党は終始旺盛な生命力と活力を維持している」。
2010年も党員は順調に増え、とうとう8000万人を突破した。これは全人口の6％にあたる。共産党、党幹部に対する不満はさまざま聞かれるが、党員になりたい人は増えている。その証拠データとして、私が注目するのは新規入党者数。2010年には前年比で10万人増えている。
さらに注目するのは、今後の共産党を支えていく学生の新規入党者数だ。新規加入者数全体に占める割合が前年比で1.8ポイント上昇し、とうとう4割を超えた。多くは共産党の理念など信じていないし、共産党を好きではない。しかし、自分の立身出世のためには、党員であることが有利であるという現実的な判断であるが、こうしたことを私は10年前にすでに拙著の中で指摘した。そうした考え方が今も学生の間で健在であることを示す数字だ。これを見ただけでも、共産党の未来は安泰である。
今回の発表で興味深いのは、辞めた党員の数を発表したこと、そしてその大部分が追放処分であることを明らかにしたことである。3.2万という数字は党員全体の1％にも満たない。この数字が多いか少ないか、なかなか難しい判断だ。新規入党者数がその100倍の300万以上もいるわけだから、3.2万など痛くもかゆくもない数字だと思う反面、追放処分された党員が3万近くいるというのは党組織の強さに疑問を投げかける数字だと思う。
【20110628-1】個人所得税法修正案の審議開始
全人代常務委第21回会議が始まった。個人所得税法の再修正案の審議が中心になる。
27日は、前回の会議で審議された個人所得税修正案の再修正案が提案された。所得控除額を2000元から3000元に引き上げる点に変わりはないが、低所得者層の負担軽減のために累進課税率の最低税率を5％から3％に引き下げる点が新たに修正された。
会計検査院にあたる審計署は、2010年の中央と地方の財政収支会計検査報告を行った。注目は地方政府が設立する融資プラットフォームの債務状況だ。全体として、地方政府の債務負担は償還能力を超えていないとしている。しかし、一部地区では債務償還が土地の譲渡収入に大きく依存しており、一部の地域や業種の債務規模は大きく、債務負担は重く、「借款、管理、使用、返還」などで制度に沿わない問題が存在するとしている。
個人所得税修正には、4月の修正案審議以降、パブリックコメントを募集し、20万を超えるコメントが寄せられた。直接に利害に関わることから人々の関心も高い。税金を「取られる」ことに対しては、個人はかなり真剣に注目をしている。そのため、今日28日から始まる審議が注目される。
地方融資プラットフォームの債務問題も注目されている。審計署の報告は現状では地方政府の償還の能力の範囲内としているが、同時に問題点を指摘しており、早晩大きな問題になることを予測させる。
【20110628-2】温家宝が民主と自由を語るが・・・
イギリスを訪問中の温家宝が、王立協会で演説した。その中で次の部分に注目した。
「未来の中国は、民主法治、公平正義の国家を十分実現する。･･･人民民主は社会主義の命であり、民主がなければ社会主義はない。真の民主は自由と切り離すことはできない。真の自由は経済的権利と政治的権利の保障と切り離すことはできない。率直に言うと、現在の中国社会にはまだ汚職腐敗、分配の不公平、人民群衆の権益侵害といったさまざまな弊害が存在する。これらの問題を解決する根本的な方法は、絶えず政治体制改革を推進し、社会主義民主法治国家を構築することである」
「人権を尊重、保障し、法に基づき社会構成員全体の平等は参加、平等な発展の権利を保障しなければならない。政府権力に対する制約、監督メカニズムを健全化し、人民が付与する権力が人民のために福利を謀ることを保障しなければならない。･･･条件を創造し、人民に政府を監督、批評させ、政府を怠けさせず、腐敗を回避しなければならない。人民の責任感と民主の精神が社会の進歩をもたらす。人民が社会管理と公共事務に参加すればするほど、社会進歩の推進は大きくなる」
北京を離れると軽口になる温家宝なので、西側国家のイギリスの演説でも何かおもしろいことを言わないかなと思った。しかし、今回は比較的慎重な言い回しのようだ。
民主と自由は切り離すことはできないこと、自由は政治的権利の保障と切り離すことができないこと、絶えず政治体制改革を推進することといった発言は、本来ならば論議を呼ぶだろう。しかしこれまで温家宝はこうした発言をしても、結局誰の支持も得られず、具体的に行動できない「オオカミ少年」なので、おそらく今回も同じだろう。
政治改革の行き着くところが腐敗撲滅だという認識は、共産党のロジックである。その意味では、温家宝の発言は新鮮味がなく、期待はずれであった。
この温家宝の演説に対し、私がよく見ている中国国内の政治関連サイトの書き込みを見たら、意外とたくさんフォローがあった。その大半は温家宝の見解を支持するもので、政治体制改革への期待が寄せられている。しかし、中には「外国向けの講演で、国内でも講演しろ」とか、「中国の将来を語っても、あくまでも将来。今をどうするのか」とか、懐疑的な書き込みも見られる。ただ、温家宝を批判するものはない。
【20110629】胡錦濤が党の先進性建設の強化を強調
党中央政治局第30回集団学習が開かれ、中国共産党が党の先進性を維持し、発展させることを討論した。講師は、曲青山(中央党史研究室教授)と楊鳳城(中国人民大学マルクス主義学院教授)。
胡錦濤は、「党の先進性建設を強化することが、党の建設を強化、改善という長期的任務であり、永遠の課題である」と述べ、先進性建設で必要なこと3点を挙げた。
(1)マルクス主義の基本原理と中国の具体的な現実を結びつけてきた歴史経験を深く認識し、十分運用する
(2)人民大衆に頼ってきた歴史経験を深く認識し、十分運用する
(3)党の建設を自覚的に強化し、改善してきた歴史経験を深く認識し、十分運用する
共産党創立90周年を控え、これからの共産党がどうあるべきかを共産党のトップ層が確認した会議といえる。その結論、方向性は、党の先進性を強調することで、先進性建設に邁進するということ。7月1日の記念式典の胡錦濤演説の基調になるのだろう。
「先進性」とは何か。この記事ではよく分からない。上記(1)～(3)では、(2)の人民大衆に頼る点を挙げていることが目についたが、中身はパッとしない。これからの党の方向性は、「守る」こと以外に何があるのだろうか。7月1日の胡錦濤演説に注目したい。
1つ指摘しておきたいことは、党中央政治局の集団学習は党中央政治局会議の後に開催されるが、その報道パターンは、開催翌日に党中央政治局会議が報じられ、その次の日に集団学習が報じられる。しかし、今回は党中央政治局会議の報道がない。通常の報道パターンとは異なる。あまり深読みしてもしようがないか。
【20110630】非共産党員の幹部登用は多いのか
中央統一戦線部副部長が記者会見を行い、統一戦線工作や民主党派について語った。
まず、中国の政党制度について、確認。「中国は、“一党制”を実行しているのでもなければ、“多党制”を実行しているのでもない。中国共産党の指導する多党合作制である」
次に、民主党派の位置づけを確認。「中国共産党は指導的地位にあり、民主党派は野党でもなければ、反対党でもない。参政党である」。
非共産党員の政治参加の現状を紹介。
(1)全国の県処級以上の指導者ポストに3.2万人
(2)最高人民法院、最高人民検察院、国務院の部・委員会の弁公・局ポストに19人
(3)省レベルの人代・政府・政協の指導者ポストに207人
(4)副省長・自治区副主席・直轄市副市長にも配置
基本原則に変わりはない。非共産党員の政治参加の現状については、全体に占める割合が分からないので、この数字の持つ意義は判断しかねる。当然共産党としては、たくさんいることをアピールしたいのだろうが。データとして確認しておくにとどめよう。