フランスクライミングツアー

 

 

フランス マルチの旅(2004年11月4日〜12月12日)

若月 和美

 

 

 わたしはフランスのマルチ・ピッチが好きで,ずっとパートナーを探していた。スポーツ・クライミングの世界の人はヨセミテには興味
があるみたいだけど,フランスのマルチには興味がない人が多くパートナーに困っていた。そこに,ヨセミテで知り合った京葉山の会
の小川弘資さんが興味をもってくれて,38日間フランス・マルチのツアーに行くことが出来た。

 

 

Ponteilポンテイユ(ブリアンソン村)

 

 

 ここにはたくさんマルチがある。晴れ男の小川弘資さんのおかげで,この季節にしてはめずらしく暖かく,11月初旬にもかかわらず
ポンテイユというエリアで「Le Clos Tramouillonレ・クロ・トラムイヨン9ピッチ最高グレード6a+」(写真1)を登ることができた。

 

 

 200mなのに地元のクライマーが2時間で登れると太鼓判をおすので念を押すと「それはプチ(小)200mだから。」という。200mは
200mだろうと思うが半信半疑でとりつくと,超快適なアプローチとフリクションの良い岩で,本当に2時間で登れた。下降路も分かり
やすく30分でおりられた。天気も良くて素敵な一日だった。

 

 

 早く終わったので,友達が近くのアイスのエリアを案内してくれた。冬になったら,いたるところ凍るらしい。巨大な滝が美しい。

 

 

Archianeアルシエンヌ(ディワ地区)

 

 

 村の周りが巨大な壁で迫力がある。2004年10月22日に400mを登ってなかなか良かったのでまた来た。泊まりはベネビズ村にある
山のアパートで1泊ひとり13ユーロ。

 

 

 11月11日。ブリアンソンから一転して寒波が押し寄せ,壁につららがぶら下がる中を登ることになった。今日のルートは「Les
Fruits De La Patience10ピッチ200m最高グレード6c」(写真2)だが,昨日既にアプローチ敗退している。宿のご主人が開拓者に電
話で聞いてくれたので取り付きはわかったけれど,ルートの途中でもボルトを探して右往左往。5ピッチ100mを登るのに5時間かかり
時間切れで敗退した。わたしは15mも間違ったところを登ってクライムダウンもできなくなり,8cmほどのフレークにスリングを引っ掛
けて降りてきた(写真3)。印象深いルートだ。朝の気温は−3〜4℃で.寒かった。弘資くんがやたら「これはスポーツクライミングじゃ
ない。」と連発していた。

 

 

Aiguilles De Beneviseエギーユ・ドゥ・ベネビズ(ディワ地区)

 

 

 12日はアルシエンヌに行かず「Strapazon Perillat5ピッチ160m最高グレード6c(写真4)」を登ることにした。アプローチはベネビ
ズ村から徒歩50分なのだけど,二人とも疲れていたのでできるだけ林道を車で進み,徒歩20分ですんだ。途中隣のルートを登ってし
まったが,3時間でぬけることができた。下降はラッペルで30分。気分の良いルートだった。

 

 

Preslesプレール(Vercorsベルコース山群)

 

 

 エイグランが厳しかったので,フランスっぽい安易なエリアに行こうと決め,寒いけどプレールに向かった。山小屋は個室で快適だ
し,ぬけてから徒歩で帰れるので楽だ。加えて,岩にはトポの順番通りにルート名が書いてあるので迷うことはない。登ることだけに
集中すれば良いというこの安易さがフランスらしくていい。

 

 

 今日のルートは「Ecole Buissonniere 11ピッチ250m(写真5)」寒くて小雪がまっていたが,弘資くんがランナウトを物ともせずに登
ってくれて4時間でぬけた。下りは徒歩20分。

 

 

Aiglunエイグラン(Alpes-Maritimesアルプ・マリティム県)

 

 

 最近フランスのクライミング雑誌でも紹介されたアリババという難しいマルチがあるエリアだ。11月は暖かい南フランスだ!と思い,
やってきた。

 

 

 やはり駐車場から30分以内の歩きで一枚岩があり,わかりやすい。この日は慣らしの意味もあって簡単な「Les Chevreuils De
Calendal 9ピッチ220m最高グレード6a+」を登った。取り付きに名前があるので分かり易い。帰りも歩きで30分くらい。わたしは教え
てもらって初めてコンテをした。2時間でぬけられた。

 

 

 11月18日は「Saga 9ピッチ250m最高グレード6c+」に挑戦した。の,はずだったが取り付きを間違えて1ピッチ目を7b+を登ることに
なった。弘資くんが自分が行くからこれでいいよ,と言うので彼に任せた。豪語したとおり彼は核心を得意のA1でさくっとぬけて,私
たちは無事SAGAにもどることができた。あとは少し怖くていい感じに楽しかった。

 

 

Saint-Jeannetサン・ジャネ(Alpes-Maritimesアルプ・マリティム県)(写真6)

 

 

 エイグランの山のアパートの人がここよりも暖かいと言って紹介してくれたのが,ニースから車で30分ほどのところにあるサン・ジャ
ネの岩場だ。ニースの北西に顕著な岩が見えるのですぐ分かる。

 

 

 岩場までの山道はトポだけでは分かりにくかった。道には岩場をしめす矢印(写真7)が小さく書いてあるので,よく見れば簡単にい
ける。マルチのエリアはゴルジュを上がった上の段にあった。ここでもプレールほど完璧ではないながらも,ルート名が書いてあると
ころが多いのでわりにルートが見つけ易い。

 

 

 11月21日は日曜のせいもあって岩場は混みこみだった。「Pour Qui Sonne Le Glas 11ピッチ250m最高グレード6c」を登った。カ
ムを使うルートだったが,2,3個しか使わないですんだ。フランスはほんのちょっぴりランナウトに耐えたらすぐにボルトがあるので,
それほどカムは必要ない。下りは例によって黄色のペンキでマークされたハイキング路を30分ほど下ればサン・ジャネ村のアパート
だ。楽チン。

 

 

 疲れていたので22日は短いルートを選んだ。「Si Le Grain Ne Meurt 4ピッチ100m最高グレード6c+」なかなかムーブが面白かっ
た。

 

 

 今回のツアーで極上の1本を選ぶとするなら11月24日に登った「Jardins Secrets 7ピッチ200m最高グレード6c」だ。ここでは3ピッ
チ目で弘資くんが6cをオン・サイトした。このピッチを含めなんとも言えず面白みのあるルートで,その上ボルトがしっかりしている。
きれいなラインだった。4時間でぬけた。このころには弘資くんもフランスのスタイルの慣れて,タブル・ロープとツイン・ロープを分け
なくなってきていた。フランスは100mロープを折って50m長で使い,クイック・ドローに二本かけていく人が一般的だ。

 

 

 25日は少しレベルを上げて「Histoire d'Eau 8ピッチ200m最高グレード6c+」に挑戦した。難しさのレベルがED(ウーデー)−だった
が,ED+と言ってもいいくらい緊張感を強いられるルートだった。わたしはプロテクションが10mほどとれないまま悪いトラバースをし
た後,集中が切れてしまった。こういうときアルパイン・クライマーは強いなあと思った。

 

 

 二人ともHistoire d'Eauのダメージがあって28日は楽しく気楽に登れるルートを選んだ。このエリアで大人気の「La Mallet 13ピッ
チ200m最高グレード6b」をコンテで登った。昼ごはんを食べてから出かけたが,1時間10分でぬけたので3時半にはアパートにもど
り,おやつを食べてから昼寝をした。この気楽さが止められない。

 

 

Les Calanquesレ・カランク(マルセイユの東)(写真8)

 

 

 今回の目玉のつもりで来たが,サン・ジャネが良過ぎて,ここにはちょっとしか行かなかった。地中海のそばでロケーション的には
最高なのだが,Luminyルミニーというメインのエリアが車上荒らしで有名なのとアプローチが徒歩1時間以上,さらにキャンプ場やア
パートなどから駐車場まで車で30分から1時間もかかり,サン・ジャネの甘やかされた生活の後ではつらかった。

 

 

 12月4日「Les Fleurs Du Mal 5ピッチ120m最高グレード7a(写真9)」を登った。地中海をバックに気持ちよく登れた。下降はラッペ
ル3回。もちろん岩は良かったが,他の条件を比べるとわたしにとっては今回もっとも点が辛い。

 

 

総合判定

 

 

1位 サン・ジャネ,2位 プレール,3位 エイグラン,4位 アルシェンヌ,5位 レ・カランク,季節外れのため判定外 ブリアンソン

写真1:Le Clos Tramouillon

Le Clos Tramouillonの核心(10B)

写真2:Les Fruits De La Patience

写真3

写真4:Strapazon Perillat

写真5:Ecole Buissonniere

Ecole Buissonniereを登る若月和美

写真6:Saint-Jeannetの岩場

写真7

写真8:Les Calanquesの岩場

写真9:Les Fleurs Du Mal

Les Fleurs Du Malを登る小川弘資