プレイボーイの真実


闇の守護聖は見境がないのだという噂が立つようになって久しい。
どう見境がないのか。およそ手当たり次第といった勢いでベッドを共にする相手をとっかえひっかえしている、というのだ。

手始めに自邸に働く者たち、そこから宮殿や王立研究院、図書館、その他諸々の機関に勤める者たちに手を広げ、今では聖地でクラヴィスの毒牙にかかっていない女性は女王陛下と補佐官くらいなものではないか、と言われているほどだ。聖地にいる女性でクラヴィスに声をかけられないというのは、女性と認められていないも同然というくらい、クラヴィスは女に声をかけまくっていた。しかもその誘いの台詞というのがふるっている。オスカーのように甘い言葉を湯水のように垂れ流すスタイルとは違って、あっさりと「寝ないか」の一言のみ。それこそ「体だけが目当てです」と言わんばかりの直球勝負の誘い文句なのである。

非常に簡潔なその誘いの言葉は有名で、声をかけられる側の女はもちろん、男だって噂に聞いて知っている。男たちは「本当にたったそれだけで女がついてくるのか? 顔がいいからってそりゃないだろう」とやっかみ混じりの懐疑の目で見ており、そして女たちはと言えば、
「まさか、そんな一言だけでベッドインするなんて。信じられないわ。いくら守護聖様のお誘いだからって、私はそんなに軽い女じゃない」
と、既にクラヴィスと寝た女たちをいささか蔑んでいたりする。良識ある人間なら当然感じるように、実際誰もが「そんなばかな」と思っているのだ、それが自分の身にふりかかるまでは。
にもかかわらず闇の守護聖に実際にそう声をかけられて拒む女はまずなかった。

なぜかその短い誘いの言葉には切実な響きがこもっており、とても断る気にはなれずに誰もがつい首を縦に振ってしまう。するとあろうことか、無表情がトレードマークのクラヴィスが淡い微笑を浮かべてありがとうという言葉を口にする。庇護欲と言うか母性本能と言うか、とにかく人の心に眠っている何かを揺り動かすはかない笑みに惑わされて、「つい」「うっかり」頷いただけだった女もここですっかり陥落。「この方には私が必要なんだわ!」という突如湧き起こった情熱のままに、手を取られて寝室または執務室奥の控えの間へというのが通常のパターンだ。
しかし、このようにしてクラヴィスと寝た女たちは皆知っていることだが、クラヴィスは誘った相手と性交渉はおろかキス一つ交わしたことはない。女性とベッドインして、抱き枕よろしく抱きしめて、そのまま本当にうとうとと眠り始める。「寝ないか」は文字通り、言葉通りの意味であり、決して男女関係を指すものではないのだった。
だがクラヴィスと「寝た」女は思う。

誘っておいて、何もせずに眠っておしまいになるなんて……。私には女としての魅力がないのかしら?
私だけベッドで相手にされなかったなんてこと、絶対に言えない。
たとえ仲のいい女友達にだって打ち明けられないわ……。

長年にわたってあれだけの数の女に声をかけて寝ておいて、そのうちの誰一人として真の意味でクラヴィスの女となった者がいないなんて思いもよらないことではないか。てっきり自分だけがこういう目にあったに違いないと悩んだあげく、誰もがこの屈辱的な秘密を墓場まで持っていく決心をするに至る。
何しろ闇の守護聖、人目があろうが何だろうが気にせず声をかけるので、たいていの場合「あ、彼女クラヴィス様に誘われてたわよ」という目撃者がいるのだ。言いふらすつもりはなくても、闇の守護聖と寝たということは知れ渡っていると考えていい。誘われたにもかかわらず女失格の烙印を押されたなんて、決して口外できるものではない。女たちは自らのプライドのために沈黙を守る。だからクラヴィスが誘った女の誰とも性交渉を持ったことがないという事実は明らかにされることなく、「闇の守護聖は女好きのプレイボーイ」という噂だけが一人歩きし、聖地中に知れ渡っていた。
ところがこうして多くの女を困惑させ嘆かせ悩ませている当の闇の守護聖はと言えば、そんな女たちの気持ちを知ってか知らずか、
これほどに眠いというのに、誰と寝てみてもよく眠れぬな…。
なんてことを思って、毎日せっせと違う女に声をかけ続けていたのである。

本人も、女にだらしないという周囲の噂を知らないわけではなかった。しかしクラヴィスにとってそんなことはどうでも良かった。何しろもっと深ーい悩みがあったのだ。
生来の寂しがりである彼は一人寝が大嫌いだった。と言うよりも人がいないと眠れない。誰にも明かしていなかったが、実は人の体温を感じながらでないと眠れないというやっかいな体質だ。女を誘って抱き枕代わりにして何とか眠っても、眠りの質が良くないために常に睡眠不足の状態にあった。そうした事情から、執務中だって眠さのあまり意識朦朧とすることがある。目を閉じてじっとしている姿は居眠りをしているとしか見えない。しかしはた目には居眠りのように見えていても、本人的には満足の行く睡眠なんか全然取れていない。ただぼーっとしているだけなのだ。だからどうしようもなく眠くなったら手近な誰かを誘う。ただし、周知のようにクラヴィスはもともと口数が少ない。ましてや自分が眠いときに声をかけているのだから、丁寧に事情を説明したりする余力などなかった。ひたすら眠くて寝たいだけ。

誰でも良い、誰か私を眠らせてくれ!

というせっぱつまった気持ちを表現する必要最小限の言葉が「寝ないか」だった。睡眠不足の男の魂の叫びが切実な響きを帯びているのも道理である。助けてほしいという思念を間近でキャッチしてしまった女たちがこぞって転ぶのも無理からぬことなのかもしれなかった。女たちの「この方には私が必要」という思い込みも、あながち間違いではない。クラヴィスが眠るためには、誰かが必要なのだから。
とにかく。クラヴィスはそういう理由で誘っているので、抱き枕となって自分を寝かせてくれる相手ならば性別は問わない。実のところ男だろうが女だろうが気にしない。動物ではだめだが(だから一緒に寝るためのペットを飼うという手段も不可)、人であればそれでいい。しかし一緒に寝てくれと男を誘うのは、女性を誘うのとは違う、ある意味もっと深刻な問題を引き起こすだろうことはさすがに予測できたので、もっぱら女性のみにターゲットを絞って誘いをかけていた。自分を熟睡させてくれる女性に巡り会えることを願って。男女問わず声をかけまくる無節操な変態と思われるよりは女好きと噂されるほうがましだ。

クラヴィスは、「私に心地良い眠りを与えてくれる人間が現れたらそれは運命の相手だ、絶対に結婚する」と心に決めていた。純粋と言うか一途と言うか、たったそれだけを選定基準にして結婚相手を決めようだなんてバカと言うか、そこまで追い詰められているなんて気の毒にと言うか、とにかく彼は真剣に思いつめ、女好きという周囲の評判とは裏腹にまじめに運命の相手を探し求めていた。だがこれまで何百人どころか恐らく千人以上もの女性と寝たのに、誰が傍らにいてくれても熟睡したという満足感を得ることはできなかった。幼い頃に母の隣で眠っていたときのような満ち足りた気持ちで朝を迎えたいものだともう何年も思い続けているが、それは叶わないままだった。そんなわけで万年睡眠不足の闇の守護聖、いつもぼーっとしていて不機嫌なのである。

昼寝が短いのは仕方がないと諦めもつく。だが夜の寝室に女性を誘い込んでも、朝までぐっすり眠れたためしがない。たいがいは寝入って二、三時間後に目が覚めてしまう。世の中には一日三時間も眠れば充分、短い睡眠でも全然問題ないといううらやましい体質の人間もいるが、あいにくクラヴィスはそうではなかった。そしてさらにまずいことに、いったん目が覚めるともう眠れない。そうなれば連れ込んだ女の立てる寝息すら憎らしい。私は眠れないでいるというのに、その私の傍らで気持ち良さそうにすうすう寝くさってこのクソ女、と闇の守護聖らしからぬ下衆な言葉遣いで心の中で罵った挙句さらに苛立ちを募らせ、ますます目が冴える。平和な顔で眠りを貪っている女など、自分のベッドから蹴り落としたいほどに妬ましく、憎たらしい。それを実行に移したことはないが。自分が眠れないというのが理由で、自ら誘った女性に対してそんなことができるわけがない。その外見から無表情無感動無感覚の冷血人間のように思われているクラヴィスだが、根本のところでは優しい。ただいつも眠くてぼうっとしていて、反応が鈍いだけなのである。
そして今宵も連れ込んだ女の寝顔を眺めてため息をつき、夜中の寝室で肩を落とすのだった。

私にはもう二度と子どもの頃のような健やかな眠りが訪れることはないのだ…。


+ + +


そんな闇の守護聖の深刻な悩みなど知りもせず、このクラヴィスの評判を快く思っていないものが約二名。一人は炎の守護聖、もう一人は光の守護聖である。
潜在的にはクラヴィスは聖地中の男にやっかまれていると言ってもいいが、守護聖のことを表立って悪しざまに言う者はない。彼の立場に臆せず声を上げることのできる者と言えば同輩の守護聖くらいだ。

オスカーは、プレイボーイだという評判を自分と二分する男の存在がとにかく気に入らなかった。目障りなことこの上ない。もともと気が合うとは言い難い相手、というよりも何かにつけ気に障ることばかりだ。それがなぜか女性陣に評判がいいのがますます気に入らない。職務怠慢で昼行灯の闇の守護聖が、ジュリアスの右腕として仕事に邁進しなおかつ女性への配慮も怠らない自分と同程度の評価を受けているなんて。
これは余談だが、闇の守護聖は同じ女性を二度と誘わないとまことしやかに囁かれている。そんな、ある意味極道な仕打ちをしているという噂にもかかわらず、女たちの間でクラヴィスの評判は悪くない。「あの放っておけない感じがたまらない」ということらしい。

俺は誠心誠意女性を大切にしての人気だっていうのに。あの男ときたら勝手気ままにつまみ食いをして、それでいて恨まれたり憎まれたりしないってのは、いったいどんな魔法だ? どう考えても不公平ってもんじゃないか。

一方ジュリアスは、ただ単にクラヴィスの不品行に腹を立てているだけだったのだが、不思議なことに華やかな女性遍歴を誇るオスカーに関しては「ああいう男だ」と納得している。なぜかクラヴィスの行状だけが気にかかる。首座として守護聖の行動を憂えているというのならば、当然オスカーの女好きも槍玉に挙げて然るべきところだ。けれども自分の中にそういう矛盾が存在することに、ジュリアスははっきりとは気づいていなかった。

そして皆様ご存知の通り、光の守護聖と炎の守護聖は親密度が高い。寄ると触ると、という頻度ではないにせよ、時折りジュリアスが「クラヴィスの不名誉な評判は全く困ったことだ」とこぼす。ただしあまり突っ込んで話すとオスカーの身辺にまで話が及ぶかもしれない。それはまずい展開だと無意識のうちにそこを避けつつジュリアスは一番親しいオスカーにしばし愚痴やら繰り言やらを洩らしては、何とか心の平穏を保ってきた。オスカーとしては、話を振ってくれた首座にここぞと常日頃からの闇の守護聖への不満をぶちまけて鬱憤を晴らしたいところだ。だがあまり調子に乗って闇の守護聖の行状について饒舌にあげつらうと自分に火の粉が降りかかりかねないので、「ジュリアス様のおっしゃる通りです(、あの男には本当にいらいらするぜ!)」と力をこめて頷くにとどめて、こちらも多少なりとも溜飲を下げていた。
このように双方の暗黙の了解の下、予定調和的に愚痴をこぼしこぼされ、心の中にたまったクラヴィスへの不満という内圧を少しだけ下げて聖地の平和の維持にこれ努める、そんな日々が続く中で、ついに運命の日はめぐってきたのである。

用事があって光の執務室を出ようとしたところ、執務室のまん前でクラヴィスが女官を誘っているところにたまたま出くわしてしまったジュリアスは眉間にしわを寄せた。それだけでは足りず、思わず声をかけた。昼日中から目の前で男と女が寝るの寝ないのと話をしているのだ。これが放っておけようか。
「クラヴィス」
「……あ、ジュリアス様」
女官は険しい表情の首座をおそるおそるうかがい見て、困ったようにもう一度クラヴィスに視線を戻して、「申し訳ございません、今のお話はなかったことに。では失礼いたします」とそそくさと下がって行った。
「何だ、何か用か」
せっかく承諾の返事を得かけていたクラヴィスは不機嫌この上ない。だって、チョー眠いし。
「なぜそなたはそれほどに見境がないのだ」
「何の話だ…」
「今も女性に声をかけていたではないか」
「それが何か」
「そのように不誠実なことを繰り返していて、よいと思っているのか」
クラヴィスが同じ女性に二度声をかけることがないとも聞いて知っていた。
「私が誰と寝ようと…お前とは関係あるまい」
「私と直接の関係はないが、そなたの不品行は目に余る!」
「……寝ることのどこがいけないのだ? お前は寝ないのか」
誰彼なく声をかけてベッドインするなんてとんでもない、と憤慨したジュリアスの返答は当然こうだ。
「私はそのようなことはしない!」
クラヴィスは目を開いているのも辛い状態であるにもかかわらず、思わず大きく目を見張った。何しろ昏倒しそうなほどに眠いから、自分に関する噂のことなんか彼の念頭にはない。「寝る」という言葉の解釈について、ジュリアスとの間に食い違いがあることに気がついていないのである。
「それは…何とも不思議な話だ。人は眠らなければ生きていけないものだと思うが…」
話がここにいたって、ようやくジュリアスは何か誤解があるのかもしれないと思い始めた。
「どういうことだ。そなたは女性を誘って……寝ているのであろう?」
「そうだ。だが誰と寝てもよく眠れなくてな」
よく眠れない。
クラヴィスのその言葉に、ジュリアスは今の今まで夢想だにしなかった新たな可能性を見た。
「ひとつ確かめたいことがある。そなたはこれまで寝た女性たちと、どういう寝方をしていたのだ? 普通、そういう場合の『寝る』は性交渉を指すと思うのだが」
ようやくジュリアスと話が食い違うわけがわかって、ざっと十年ほど女好きという噂を放置してきたクラヴィスは、このとき初めて釈明した。
「単に眠っていただけだ。私は傍らに自分以外の人の体温を感じていないと眠れない質なので」
「それではそなたの不品行の噂は……誤解だと言うのか。これまで誘った女性達に対して不埒な真似はしておらぬ、と?」
「言い訳して回るのも面倒でな…噂は広まるに任せている」
「何といい加減な」
ジュリアスはため息をついた。いくら口数の少ない男だからって、自分の下半身の名誉に関わる噂を放置しておくなんて、ジュリアスとしては信じがたい話だ。
「私がこれまでどれほどそなたの不品行について心を痛めてきたか、わかっているのか。……いや、そのようなことはもうよい、済んだことだ。これまでそなたに意見しなかったゆえの行き違いに過ぎぬ。それにしても、実態がそういうことだったとはな」
「もう行ってもよいか。他の誰かを誘わねば眠れない」
「待て、まだ執務時間内だ。勝手に寝るな」
手当たり次第女に手を出しているわけではなかったことがわかったのは良かったが、それでも執務時間内に眠っていたという事実は残る。その上、首座に見咎められた今も寝るつもりでいるらしい。首座としてそれはやはり見過ごすことのできない職務放棄だ。ところがクラヴィスは小さなあくびを洩らすと、もうだめだとばかりに目を閉じた。
「だが…眠くてたまらぬ…すまぬが肩を貸してくれ」
言うなり、闇の守護聖は執務室前の廊下でジュリアスにもたれかかって、うとうとし始めたのだった。立ったままで。
「こらクラヴィス、起きぬか。立ったまま寝るものではない」
なんて言ってみても、一向に目を開こうとしないクラヴィスにため息。幸いそこは光の執務室のまん前だ。本格的に眠りかけているクラヴィスを引きずって、何とかジュリアスは控えの間にしつらえられている仮眠用ベッドに放り込んで「仕方がない、勝手に寝るがよい」と出ようとした。ところが。
「ジュリアス…」
眠たげな、今にも落ちそうなまぶたを必死に押し上げてクラヴィスが見ていた。切実さのこもる声で「ここにいてくれ」と言われて、つい。首を縦に振ってしまったのだ。これまでにクラヴィスに声をかけられた女たち同様に、首座ともあろう者が。
もうほとんど眠っているようなクラヴィスを見て、すぐに寝入ることだろうから、それまでそばにいれば満足するだろうと思ったのだった。

一瞬の後、ジュリアスはそんな自分の考えが甘かったことを知った。手を引かれてベッドに引き入れられ、何が何だかわからないうちに抱き込まれていた。
そう言えば体温を感じていなければ眠れないなどと言っていたのだったか。
執務室の前で立ったまま寝始めたときも、私にもたれかかり頬が触れ合うような体勢だったな……。
ぼんやりとそんなことを思い、至近距離からクラヴィスが寝入る様を見ていた。しみじみと寝顔を眺めてみて、ずいぶんと整った顔立ちであったのだな、と見慣れていると思っていた男の美貌に思わず見とれた。こんな間近でゆっくりとクラヴィスの顔を眺めたのは初めてかもしれなかった。ブランケットの中に二人分の体温、その上抱きしめられていて、とても暖かく心地良い。激務に疲れていた彼自身もいつの間にやらうとうとし始めて、結局小一時間ほどクラヴィスと共にベッドで眠っていたものらしい。
びくりとしてハッと目覚めると、目の前のクラヴィスもゆっくりと目を開いた。幾度か瞬きをしてジュリアスの青い瞳と目が合って、クラヴィスは驚いたように目を見開いた。そしてその表情は次第に柔らかな微笑へと変わった。あまりにも幸せそうな笑顔につられて、ジュリアスも思わず知らず笑顔になってしまったほどだ。そこへ、
「お前だ」
といきなり言われて、今度は目を白黒させることになった。
寝起きのはっきりしない頭で「何のことだ?」と問えば、「私が求めていたのはお前だったのだな」などと言う。
「いったい何の話をしている」
「今……久方ぶりによく眠ったという満足を感じている。午睡でこれほどの充足感とともに目覚めたのは何年ぶりだろうか。これもお前のおかげだ。今宵からは共に寝てくれ」
何なのだ一体。
ジュリアス、ぽか〜んとして声も出ない。
「これまでの長い時間、私は共に寝て熟睡できる相手を探し求めてきた。まさかお前がその相手だったとは」
実に晴れ晴れとした顔で言われて、「そうか、それは良かった」と。口にした。
寝起きのボケた頭でついうっかり。
今まで見たこともないほど上機嫌なクラヴィスにつられて、そう答えてしまったのだ。そしてその答えを聞いたときのクラヴィスの顔たるや何とも言えず嬉しそうで、がしっと抱きつかれて、感動に震える声でありがとうという言葉までもらってしまっては、やっぱりさっきの話はなかったことにしてくれとは言えなくなった。
「私はようやく運命の相手に巡り会えたのだな…。これで…もうよく知らぬ相手に声をかけずに済む。これほども身近にいたというのに今まで気づかなかったのは痛恨の極みだが…この至福の眠りを得るための試練だったと思えば安いものだ」
クラヴィス、これから毎晩ジュリアスと寝る気満々である。運命の相手とまで言っている。この分では結婚してくれと言い出しかねない。
一方ジュリアスは、半分ボケた頭で「なぜこのようなことになってしまったのか……」とボケたことを考えていた。

光の執務室の奥の間で筆頭守護聖二人が小一時間過ごしたというこの事件は聖地中の噂になり、「女だけでは飽き足らずついに闇の守護聖が首座まで毒牙にかけた」と聖地雀たちはかまびすしい。しかもそれを裏付けるように、その後クラヴィスは女に一切声をかけなくなった。聖地雀の間で「これはいよいよクラヴィス様が真の恋に目覚めたに違いない」と噂され、今ではプレイボーイなクラヴィスと堅物のジュリアスとの恋の行方がどうなるのかと取り沙汰されている。






【memo】
内容はクリスマス関係なしだけど、一応 2008年クリスマス企画 だから
壁紙もホワイトクリスマスをイメージして、雪で。

壁紙: Pearl Box
■BLUE ROSE■