情というものにはいろいろあって
友情、愛情、恋情、純情、慕情、熱情、切情
春情、色情、欲情
はては、痴情、などというものもあり
情が薄いことを、薄情
情のないことを、無情
では私のこの情は？
純情などどこかに捨ててきた
世に言う友情とは端から違っている
したわしい、そんな穏やかなものではない
愛情、それもある
だがそう呼ぶのはきれいすぎる
この身を焦がすは激情
あれを恋うせつないまでの思いは恋情か、切情と呼ぶのか
私の心をあらわすにはひとつでは足りぬ
「何か言いたいことでもあるのか」
言いたいことが多すぎて
大きすぎて
言葉にならぬのだ
「黙っていてはわからぬ」
そうであろうな
ならば聞かせてやろう、真情を
ただの一言では到底足りぬが
言わぬよりはよかろう
「お前が好きだ」
見る見る赤くなる顔に、思い切り顔を近づけて、続けて言った。
「……冗談だ」
顔をそむけて、たちの悪い冗談だ、とつぶやき、歩み去るお前。
お前の言葉は私を切り裂く
真情を真情であると言えずに
冗談だと言ったのは私
それを真に受けたのはお前
joke.
情苦。
お前の言葉が
熱い
痛い
お前の与える痛みが思い出させる
この私もまた、生きているのだと
つまりはお前に寄せるこの情による苦しみは生きている証
生きながら死んでいるようなこの生に真のいのちを与えるもの
私は生きている
生きてここにいる
そして
ときにこうしてあふれる想いを口から逃がしてやらねば
内なる炎に焼かれて私はお前に焦がれ死ぬ
焦がれ死ぬことを厭うのか、私は？
お前ゆえに死ぬのはそう悪くないではないか
私が死んだところで誰も困らぬ
……あえて言えば、困るのは私だ
お前の顔が見られなくなるのは
お前の声が聞けなくなるのは
困る
まだ見ていたいから
ときどきはお前の眉をひそめさせるような
たちの悪い冗談を言うことにしよう
好きだ
愛している