新  婚


仲良く退任したクラヴィスとジュリアス、めでたく正式に婚姻関係にあるカップルとなった。同性同士でも結婚が認められ、それが奇異な目で見られることもない時代でラッキーな滑り出しだ。当然ながら寝食を共にし、朝起きたらおはようのキス、仕事に出かけるときには熱い抱擁を交わしてから、週末は二人で買い物、という具合に絵に描いたような新婚生活を送っていたのだが、体の関係だけはなかった。
どっちが攻めでどっちが受けかで大激論を交わしたあげく、同意が得られないままに抱擁&キス止まりなのだ。欲望はそれなりにあるのだが、受け入れる側にはなりたくないというのが本音だ。何しろどっちも男なんだから、「やられる」よりも「やる」方を受け持ちたいのである。愛し合っていて、その当然の帰結として相手の体まで求めたい気持ちもあるのだが、悲しいかなそっち方面のはけ口がない二人、仲が良かったはずが次第に険悪なムードになってきた。だってベッドも共にしてて、二人してムラムラ〜とかもやもや〜とかいうややこしい気分なのにそれを発散できないんだから。

このままでは破局だ…。
真剣に二人の将来を憂えたジュリアス、とんでもないことを言い出した。
「このままではうまく行くものもだめになる。いっそのこと賭けで決めようではないか」
「どういう賭けだ? お前が私に勝てるわけがないと知っていてそのような提案をしてくれるのか? …お前もようやく私に抱かれる気になってくれたということか」
さっそくジュリアスを抱き寄せてキスをしようとしたクラヴィスだったが、意外な拒否にあった。
「まさか。それでは賭けの意味がないではないか。最初からそれを肯んじるくらいならばこのようなことは言わぬ」
自分から抱いてくれとは言えないジュリアスが、賭けという手段を持ち出して自分に勝たせてくれるつもりかと早合点したクラヴィスだったが、どうやら違ったらしい。生来まじめなジュリアスは、こんな時だって(こんな時だからこそよけいに?)大まじめなのだ。
「…ほう? どういう賭けをしようというのだ?」
「そなたの身長・体重は?」
唐突な質問にびっくり目になりながら、クラヴィスは答えた。
「190センチ、73キロ」
「そして私が188センチ70キロ。つまり体格はほぼ互角ということだ」
「それが何か関係があるのか」
お姫様だっこというものを知っているか?」
「男が女性を抱きかかえるのであろう…」
何でそんなことをジュリアスが言い出したんだか、全然話の先が見えない。わけがわからんという風情のクラヴィスにジュリアスは賭けの概要を説明した。
「その通り。そこでだ。館の玄関から階段を上って寝室まで相手を抱いて運ぶことができた方がとなり、運ばれたほうが役、ということでどうだ?」
あまりな提案にめまいを感じつつも、クラヴィスはその案を検討してみた。
目の前にちらつくエサはあまりにも魅惑的だ。条件はちょっとキツイが、火事場の馬鹿力でなんとかならぬものでもない。試してみるか。
「よかろう…」
バチバチバチバチッ。
二人の間に高温の青い火花が散った。<あのねぇ…


その晩、まず提案者のジュリアスがクラヴィスを抱き上げた。8歩進んで敢えなくギブアップ。悔しそうにクラヴィスを下ろして肩で息をするジュリアスを引っ張って、次は私の番だなと言いながらクラヴィスは扉の前まで戻った。えいやっとジュリアスを抱き上げて8歩進み、こちらもやはりギブアップ。
「お前、けっこう重いのだな……はぁはぁ…」
「そなたこそ」
「なんだか疲れた…」
「そうだな」
「では寝るとするか」
「うむ」
二人連れ立って寝室に入り、巨大ベッドに仲良く横になるやすやすやと眠ってしまった。慣れぬことをして疲れたせいか、ムラムラももやもやもなく異様によく眠れたのだった。これでとりあえずは夫婦(夫夫と表記すべきでしょうか)の危機は脱したんだからまあいいか…。ともかく、なかなか思惑通りにことは運ばないようだ。

その後クラヴィスは何とかジュリアスを抱いて運べるだけの筋力をつけようと館の一室をジムに改造し、さまざまなマシンを運び込んで筋力アップにこれ努め、負けてはならじとジュリアスもそこでトレーニングにいそしむ……ということで、二人は互角のまま。毎夜賭けを続けている二人、階段に足をかけるところまで進み、数段上り、踊り場に到達し、毎夜少しずつ記録を伸ばしてだんだんにゴールは近づいてくる。だけど、このままだと二人は同じ日に相手をベッドまで運ぶことができるようになりそうな勢いである。
そのときはどうするつもりなんでしょうね、お二人さん?





■BLUE ROSE■