「ゴドーさん、お邪魔します」
「ああ、ゆっくり寛いでくれ」
成歩堂の携帯電話にゴドーから連絡があった、その翌日の日曜日。
新しい珈琲のブレンドが出来たから、飲みにこないかという誘いだった。
ゴドーは何かにつけ、成歩堂を自分のマンションに招く。
成歩堂もゴドーに誘われるのは嬉しいから、急な用事がない限りは優先していた。
それは、ゴドーと成歩堂は一応恋人という仲で。時間が合えば、時間の許す限り一緒にいたいと思うのは自然な事。
「あ、いい香り……。僕、ゴドーさんが煎れる珈琲だったら毎日でも飲みたいなぁ」
成歩堂はテーブルの椅子に座り、キッチンでゴドーが珈琲を煎れる様子を眺めている。
成歩堂の台詞を聞いて、ゴドーは手を止めた。
(……まるでプロポーズだな。まぁ意識しては言ってないんだろうが)
「嬉しい事言ってくれるねぇ、コネコちゃん。だったら一緒に住むかい?」
「えぇ!?……っと、その…」
瞬時に成歩堂の顔が赤くなった。その様子を見て、ゴドーがフッ……と笑った。
(まだまだコネコだな。こんな言葉だけで赤くなるとは……先が思いやられる)
一応恋人というのは、まだ純な関係だからで。
初々しい反応を見せる成歩堂が、ゴドーは可愛いと思っている。
そして、可愛いと思う度に抱いてしまいたい欲求にかられるのだが、この真っ直ぐな心の持ち主を汚していいのか悩むのだった。
「さて、出来たぜ」
ゴドーは出来たての珈琲をカップに入れ、成歩堂の前に置いた。
「いただきます」
成歩堂がカップを持ち、口をつけると。
「あ!……っつ」
「まるほどう!? 火傷か?ちょっと待ってろ」
ゴドーは急いで冷凍庫から氷を出した。
「大丈夫か?とりあえずコレでも舐めてな」
「うぅ……」
成歩堂は涙目になりながら上目遣いでゴドーを見た。
そして口を開けてチロリと舌を出すと、氷を口に入れた。
(っ……。そんな顔されたらヤバイぜ)
成歩堂は溶けた氷の水分を飲み込むと、ゴドーを安心させようとニコリと笑った。
(このコネコは……、わざと煽ってんのか?)
「ん、もう大丈夫です」
「まるほどう、舌出してみな。見てやる」
「えぇ?大丈夫ですってば。もう……」
それでもゴドーの言う通りに、おずおずと舌を出した。この従順なコネコが可愛いくて仕方ない。
そのままゴドーは成歩堂の舌をペロリと舐めた。
「わっ……。もう、ゴドーさんたら」
「さっきからそんな顔してたら、俺も自信ないぜ?」
「? そんな顔って…?」
(自覚ナシ、か。だが俺も限界だな……)
ゴドーは成歩堂の耳元に顔を近付けると、そっと囁いた。
「……泊まっていけよ、コネコちゃん」
成歩堂はその提案に耳まで赤くなったが、コクリと小さくうなずいた。
終
無自覚に誘う、というシチュが大好物なんです(笑)