庶務課
Trrr・・・
「はい庶務課です。・・・あ、はーい分りました。・・えっと・・・。」
成歩堂はここまでで一度受話器のマイクを押さえて窓際のデスクの人物に視線を投げる。それに気がついた白髪の男は軽く手を上げてサインを送り、それをそのまま成歩堂は電話口の人物に伝えた。ここはある商社の庶務課。まあ有体に言えば会社内の雑務一般引き受け係りだ。
先の不況の影響で、ここ庶務課の人員は極限まで削られている。課長は白髪ではあるが年老いているわけではない、精悍なルックスの神乃木荘龍。何故か通り名があり、社内ではみな『ゴドー』と彼を呼ぶ。そしてゴドーの唯一の部下は・・・、とんがり頭にきょろっとした大きな目が特徴的な制服着用の・・・男性。成歩堂龍一である。
対外的に外に出る部署では無いという良く分からない理由から、成歩堂は制服着用が義務付けられている。とはいえ、男性用の制服をわざわざ作るのは金と時間の無駄なので・・・青いベストに、タイトスカートという井出達で。最初はこの・・・ぶっちゃけ『女装』に向けられている、色々思考の混ざった視線をこれでもかと感じて、本気で退職を考えた成歩堂であったが・・・。
『今会社を辞めたとして、・・・今以上に好待遇な職場があると思ってんのかい?』
完全週休二日制。有給制度はもちろんのこと、各種残業手当は全てきっちりと計算されて銀行口座に振り込まれる。それこそ、1分単位で。福利厚生は公務員も裸足で逃げ出す充実さ。実際に現在成歩堂が住んでいるマンションは会社で借り上げているもので、家賃は市価の1/3である。以前学生時代の友人と会社の待遇について話をしていたら、真面目な顔で絶対辞めるなと言われたほどである。羨ましいと大きなため息と共に。
今ではすっかりこのスカートにも慣れ、階段を上るときには軽く尻を押さえてスカートが浮いてしまうのを防ぐほどである。スカートに革靴というアンバランスさに、成歩堂はそろそろローファーのような違和感の無い靴に替えようかと思っている位で。この女装以外は、至極充実した会社員生活を送っている。
・・・前言撤回。
女装以外に後一つ、成歩堂が懸念している事柄があった。唯一の上司、ゴドーについてである。成歩堂が素直にスカートを着用しているのをいい事に、靴下は却下だの、下着は線が出るからTバックを穿けだの、とてもじゃないけど普通とは言えない命令を下してくるのだ。
それでも先ほどの言葉・・・あれはゴドーに以前会社を辞めようか相談したときに向けられた言葉だったのだが・・・を思い出しては、もう成歩堂は半泣きでLLサイズのストッキングを買う羽目に陥るわけで。更に困った事に会社には男性用更衣室など、当然無く。トイレの個室で毎朝成歩堂はしゅるしゅるとストッキングを穿き、ゴドーと二人だけの朝礼をするのが日課だった。
くるっとゴドーの前で一回転して、舐めるような下半身への視線に耐えてストッキングに伝線がないかをチェックしてもらい・・・、ようやく通常業務に入る。何となく適当なストッキングを買っている成歩堂であったが、それが薄い色だと少しゴドーの機嫌が悪く、逆に濃い目だと満足そうな顔をしている気がしていた。そんなに見たく無いならジャージ着用を許可してくれればいいのにと、こっそり成歩堂は考えていた。・・・ゴドーの思惑とは全く逆の事を。
さて、先ほどの電話の内容は『3階のトイレの蛍光灯が切れている』との事。庶務課の仕事である。よいしょと成歩堂が脚立と蛍光灯を抱えたのだが、肩に担いでいた脚立がふっと軽くなった。見るとゴドーがそれを奪って軽々と持っていた。にやにやとした表情のままに、ゴドーは軽く顎を上げて先を促す。
「とっととやっちまおうぜ、コネコちゃん。アンタ、高いところは苦手なんだろ?」
「あ・・・す、すいません。助かります。」
確かに成歩堂は高い場所が苦手だったのだが・・・そんな事を話したことがあったっけときょとんとしていると、脚立でこつんと小突かれてしまった。そんな成歩堂をクッと笑いながら、横からゴドーは追い抜いてとっとと現場へと向かうのだった。
***
「あの・・・ゴドー課長・・・。」
「んん?怖いのかい?」
「いや、そうじゃなくって・・・。」
3階トイレの蛍光灯を外そうと、結局成歩堂が脚立に登っている。手を伸ばして軽くバランスを崩した時、ゴドーの手がしっかりと成歩堂のふくらはぎを捕まえた。その場では助かったと素直に礼を言った成歩堂であったが、・・・一向にその手が離れない事になんだか嫌な予感がしてきた。
恐怖心を何とか押さえてちらりと下を見てみると、なんとも無防備なタイトスカートの中身をこれでもかと眺めていたゴドーと視線がかち合った。瞬間、ぞわりと何かが背筋を通り抜けていくのを感じた成歩堂は、もじもじと足を閉じる。ゴドーの手はそのままふくらはぎから足全体を、ストッキングの上からするすると滑らせ始めた。
「何、してるんですか・・・?!」
「怖がりなコネコちゃんを慰めてるんだろ?」
「ちょ・・・っと・・・、ホント、ダメ・・・!!」
鼻に掛かったその声に、羞恥に染めた頬の色に、何よりこのストッキングの感触にゴドーはごくりと喉を鳴らす。やだやだと小さく首を振る成歩堂の仕草を見て、ゴドーの堰は簡単に決壊してしまった。しっかりと成歩堂の足を押さえて落ちないように固定してやってから、熱い舌を出してわざと見せ付けるようにぬらりとストッキングの上に舌を這わせていく。
「い・・や・・っ!ゴドー、課長っ・・・!」
「クッ・・・、過剰包装はいただけないぜ・・・。」
膝裏辺りのだぶついているストッキングを摘むと、胸ポケットから取り出したボールペンの先を使ってぴぴぴとゆっくり破り始めた。少しだけ裂け目を開いてみれば、ぴぃっと音を立てながら天地にそれは走っていく。その隙間から現れた真っ白な肌に、堪らずゴドーはむしゃぶりついた。
片足だけがびりびりでべしゃべしゃなストッキングが非常に気持悪い。それでも脚立から落ちるかもしれないという恐怖が成歩堂の抵抗力を奪っており、ただゴドーにされるがままに身体を震わせることしか出来ない。ゴドーの大きな手がぐっと成歩堂を引っ張ると、間抜けな声と共にそのまま身体が落ちていった。
待ってましたとばかりにその身体をしっかりと受け止めたゴドーは、乱暴に唇を塞ぎつつ素肌が見え隠れしている膝に手を差し入れて持ち上げた。壁際までその体勢で移動して、成歩堂の背中に壁を押し付けると下着の裾から内ももに沿って手を入れる。半分ストッキングで圧迫されている下着の中では窮屈そうに存在している屹立があり、下からそれを握ってやると成歩堂の腕がゴドーの首に巻きついた。
「あ・・す、すいません・・・っ。」
「ここで謝るか?普通。・・・いいから黙って感じてな。」
そんな許可を与えたゴドーの唇がまた成歩堂のそこに近づいていく。混乱の極みにいた成歩堂であったが、その言葉に遠慮なくゴドーの首を捕まえて、やってきた舌の動きにたどたどしくも応戦していった。ぺちゃぺちゃと時折唇を嘗め回してはまた咥内を貪っていくその濃厚な接吻に、自然と成歩堂の腰が揺れる。それに合わせてゴドーが成歩堂を扱いていくと、裂け目が更にぴぴぴと増えて。白い肉質感のある肌へ斑にストッキングの生地が絡み付いているかのように見えた。
くるんと成歩堂の身体を反転させて、ゴドーがタイトスカートを捲り上げた。はあはあと荒い息と共に上下している腹辺りからするりとストッキングのゴムに手を掛けて、屹立に引っかからないように下着ごとそれをずり降ろす。膝辺りで止めたために更に不安定な姿勢となった成歩堂は、目の前の壁に両手を突いて。自然とゴドーに更に腰を突き出す形となった。
「何か・・・ねえか?」
そう言いながらゴドーが成歩堂の身体に手を伸ばす。と、青いベストの小さなポケットに何やら硬いものを発見した。それをひょいと手にとってみると、それはジェルタイプのリップクリームだった。刺激の弱そうな無着色無香料なのを確認して、それを指先に出してみる。固さといい量といい、これなら丁度良さそうだ。更ににゅるにゅるとそれを指に乗せてから、徐に成歩堂の後孔へと塗りこんでいく。
「ふ・・!んくぅ・・っっ!」
「ちょいと、力を抜いて・・・ろよ、っと。」
「っ?!」
ゴドーは己の屹立を素早くスラックスから取り出すと、それにもリップクリームを塗りこんで成歩堂の入り口に先端を宛がった。ぎくりと成歩堂の身体が硬直した事にゴドーがクッと笑ってから、身体を前傾させていき・・・。
「上司命令だ・・・。いい声で啼けよ?」
「や、あ・・・ああ・・ああああっ!」
べちゃりと思い切り唾液を絡ませた舌で耳を嬲ってから、力ずくでゴドーは成歩堂を貫いた。自然に発生してしまう抵抗に僅かにたじろんだゴドーだったが、次に囁いた言葉に成歩堂が大きく目を見開くと、ふうと出来るだけ長い呼吸をしていった。
「チッ・・・アンタ、可愛い過ぎだろ。」
「え?!ゴドー、かちょ・・?」
「課長なんて言うなよ・・・、龍一。」
「だって・・・。じゃあ、どうすれば・・・。」
「荘龍、だ。・・・これからは、そう呼んでくれねえか?」
ちょっかいを出しているうちに、段々とのめり込んでいったと熱の篭った声色で告白されて。成歩堂は今までのセクハラが、只の嫌がらせで無いとようやく悟った。このようにゴドーに貫かれても嫌悪感が生じないどころか、逆に酷く安心していく己の気持ちにようやく気がつくと。
「そう・・りゅう・・・。」
「・・・いい子だ。」
ふわりと微笑みながら後ろにいっぱいに振り返る成歩堂を見て、ゴドーは優しくその身体を抱きしめた。それでも時々ぐっぐっと押し付けてくる腰の動きに、成歩堂は僅かに眉を顰める。ゴドーによってありえない箇所がいっぱいに広げられているこの違和感が収まらないのだ。
「ん・・・ちょっと、待って・・・。」
「待てねえよ。こんな状態のアンタを見て、納まりがつくと思ってんのかい?」
ストッキングは既にその役目を終えて、ひざ下からふくらはぎにだぶ付いて成歩堂の足を拘束し。・・・タイトスカートはぺろんと裏地を見せながら腰に巻きついて、白い双丘の間にゴドーが屹立をねじ込んで、入り口の皮を捲り上げているのだ。初めて男を収めたその箇所のきつ過ぎる収縮に、堪らずゴドーは腰を揺らす。
タイトスカートのホックを外してファスナーを引きおろし、緩くなった腰元から胸へと手を滑らせていく。さわさわと胸を撫でるだけである部分に変化が生じ、それを人差し指と中指で挟んでこりこりと更なる生長を促した。その仕草にきゅっと成歩堂は瞳を閉じて、がりりと壁に爪を立てた。
「やべえな。・・・俺もアナルなんざ初めてだったんだが・・・。」
「・・・?」
「・・・良すぎ、だぜ。もう限界なんて、がっつき過ぎだと笑われてもおかしくねえよな。」
自嘲気味なその言葉の後、ゴドーは改めて成歩堂の腰を捕まえて腰を押し付けた。ぐっと双丘の肉を潰したのを確認してから、ずるりと中ほどまでを引きずり出す。それを待ってと言わんばかりに成歩堂の肉壁はゴドーの屹立に絡みつき、押し開かれる動きには蠕動を持った甘い抵抗を示す。・・・気がついたら成歩堂を思う様犯しており、既に成歩堂は力を失ってがくがくと揺さぶられるだけになっていた。
「・・・っ間に、あわねえな・・・。」
掠れきったそのゴドーの声に、僅かにこくんと成歩堂が頷いて。そのままゴドーは成歩堂の身体の中にて終焉を迎えた。腰が抜けるかと思えるほどの長い射精の後、ずるりとそれを引き抜いて。その刺激でぺたりと壁に寄りかかった成歩堂が一度ぶるり震えた。ああ・・と不安げな声と共に、内ももからはゴドーの白濁がどろりと流れ落ちる。
「気持悪いか?」
「・・・いや・・・。あ、でもちょっとだけ・・・。」
「・・・。」
荒い息で肩を揺らすたびにとろり、とろりとその白い筋が重力に従って伸びていく。が、膝に留まっていたストッキングにそれは吸収されていき・・・その余りに淫靡な姿にそぐわない、きょろりとゴドーを見つめる大きな瞳。その視線にゴドーはがりがりと白い髪を掻いてから、ぎゅっと成歩堂の身体を抱きしめた。
「なあ、今更言うのもなんだが。」
「なんですか・・・?」
「・・・好きだ。」
「・・・ぷっ。」
余りにも余りな台詞に成歩堂は思わず吹き出してしまった。流石にむっとしたゴドーは、抱きしめている腕に力を込める。痛い痛いと笑いながら言う成歩堂は、それでもゴドーから逃げようともその腕を振りほどこうともしない。仕上げにゴドーがかぷりと耳を食んでみると、抱きしめられたままに成歩堂がくるりと身体を反転させて。そっと己の唇を指す。
「・・・荘龍。」
「ん・・・。」
ゴドーはこつんとオデコを合わせてから、そんな成歩堂の初めてのオネダリを叶えてやるのだった。
***
ある商社にはかつて名物だったものがある。文字だけだとその攻撃力も甚だしい『OLコスプレのサラリーマン』。頬を染めて、タイトスカートから覗く膝を僅かに内側に寄せながら、顎を引いて上向き加減に真っ黒な瞳を向けてくる・・・。とんがり頭のその男性は、そんなスカート姿でも何故か可憐で。違和感が無いのが不思議だった。
ある日を境に彼はそんな女性用の制服から真っ青な普通のスーツに身を包むようになった。赤いネクタイをきゅっとしめたその凛々しい姿に、密かに舌打ちをするものも多い。本人はやっと普通の格好が出来る事に至極満足げなのだが。
「なあ、ひとつ・・・俺のささやかな可愛いお願いを聞いちゃくれねえかい?」
「なんです?改まって。」
「その・・・明日からは、スーツで出社してくれ。」
「え?!い、いいんですか?!」
「イイもくそもねえ。スーツが無いなら、これから一緒に買いに行くぞ。兎に角・・・そのスカートとストッキング姿ってのは、これからは俺のベッドの上限定だ。」
そんな台詞に真っ赤になった成歩堂は、結局あれは単なるゴドー個人の趣味だったのかと恥ずかしさに任せてぽかぽかとゴドーの頭を叩きながら・・・それを了解したのだった。
陣中見舞い兼お歳暮で、お優しいだるまいとさまに書いていただきました! あんまりにも「ストッキングビリビリ・・」と言い続けているので、心配して下さったようです(笑) ゴドさん同様、当方も想いが叶って幸せですvv
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