棚からぼたもち 「子なる」ver



「パパ、ちょっと教えてー。」
「ああ、どうした?」

ゴドーは読んでいた文庫本をテーブルに置いて、成歩堂に微笑む。優しいその表情に成歩堂は安心してメモをしていた紙を差し出してきた。何やら先ほどまで見ていたテレビで知らないことがでてきたらしい。このように分からない事を素直に聞いてくる成歩堂に、ゴドーは良く色々と説明をしてやっていたのだ。

「『ぺにす おぶ へぶん』の『ぺにす』って何?天国のペニス・・・?」
ぶっ!!!

思わずコーヒーを吹き出したゴドーに成歩堂は慌ててティッシュを差し出した。何か変な事を聞いてしまったのかととんがり頭をへたらせてしまったのを見て、ゴドーは慌てて頭を撫でる。余りにも日本語の発音だったので、思わず違う『ペニス』を想像したとは・・・成歩堂にも説明できない。

「『pennies of heaven』・・・棚からぼたもちって意味だな?」
「そうそう!パパすごーい!これ一番難しい問題だったんだよ?!」
「まあ、こういうのは知ってるか知らないかって程度のモンだ。・・・で、この『pennies』ってのはな、イギリスの通貨だ。」
「へえー。イギリスの・・・。」

何となく分かったような分からない様な表情の成歩堂にゴドーはクッと笑ってから、リビングの飾り棚にあった小瓶を持ってきた。その中にあった1ペニー銅貨を見つけてそれを成歩堂に差し出してみる。成歩堂は小さなそのコインを珍しそうに裏表をじっと観察していた。

「幾らくらいなの?これ。」
「・・・1ポンドが100ペニーだからな、10円くらいか?」
「ふうん。」

「確か、詩か戯曲で使われたフレーズが、そのままことわざになったって話だぜ?」

別のコインをピンと弾いては手で受け取るその仕草に成歩堂もそれを真似してみるが、小さな手では中々上手くいかないようで。こうやるんだぜとゴドーに教えてもらってみてもころんと転がるばかりだった。

それでも疑問が全て晴れた事に成歩堂は嬉しそうな表情だ。ありがとうと弾む声色でゴドーに言うと、またテレビの前にぺたんと座ってクイズ番組を眺め始めた。へえ、ふうむ、あ、これ知ってる!などと一々答える成歩堂の様子が面白かったゴドーは、読んでいた本に栞を挟むと、隣に座って一緒にテレビを見始めるのだった。




棚からぼたもち 「子にっと」ver




「天国のペニス、ねえ。」

にやにやと笑う成歩堂に、ゴドーは膝で小さな身体を突っついた。はいはいとまた股間に顔を埋めていく成歩堂の小さな熱い舌を感じてゴドーはふうと吐息を零す。ぺちゃぺちゃと唾液を絡めながらつつつと舌で裏筋を這っていくその甘い刺激に、ゴドーの身体はぴくりと戦慄き、それに気付いた成歩堂は執拗にその仕草を繰り返していった。

「単語のつづりが違うぜ?そっちじゃなくて、イギリスの通貨の方だ。」
「・・・なーんだ。つまんないの。」

わいわいと騒がしいテレビは既にBGMとしても役に立たない程に、ゴドーも成歩堂も始まってしまった夜の行為に夢中になっていた。ゆらりと身体を持ち上げた成歩堂はゴドーの先走りを指で掬ってぺろりと舐める。しょっぱみのあるその味にふわりと笑って、ゴドーの胸にすぽりと身体を収めた。

「『Penis of heaven』・・・でも、良いと思うけど。」
「まあ、考えてみれば・・・どんな国の言葉でも『イク』ってのは似た様な言葉だよな。『come on』とか。」
「へえ・・・随分詳しいんだね、パパ。」

顔を上げた成歩堂はホンの少しだけ侮蔑の色を浮かべた視線で、むにとゴドーの頬を引っ張った。その可愛らしい痛みに口を歪めつつ、大きな手で成歩堂の頬を擽ってやる。まるでコネコのように目を細める・・・そんな素直さにゴドーはどくりと心臓がまた一段と高鳴っていった。

「俺も男として30年以上生きてきたんだ。それ位は常識だぜ?」
「・・・僕は、それを今知っちゃったの?」
「経験なしで知識だけ持ってるってのは、アンバランスでよくねえな。」
「・・・ふふふっ。」

「色々経験まで含めて教えてくれるのはいいけどさ。それを披露する場が無いってのも、結構ストレスなんだよね。」

黒い瞳を半分隠して挑戦的な目でゴドーを見つめる成歩堂は、そんな事を言いながらもゴドーの唇を指で辿る。ふにふにと柔らかな唇肉で遊んだと思ったら、身体を伸ばしてそれを己の唇でも味わう。小さな身体を甘い葡萄の芳香で包んで。

「復習だと思って、俺に披露すればいい話だ。」
「ま、パパはそう言うと思ったよ。」

まさかゴドーが他の男に成歩堂を抱かせるとは到底思えないと、成歩堂は笑う。早速今までゴドーから教わった色事を披露してあげると成歩堂が身体を持ち上げると、ゴドーはその白い腰に手を宛がって『復習』の手助けをしてやるのだった。




棚からぼたもち 「ごどなる」ver




「・・・なんですか、そのにやにや顔は。」

テレビを一緒に見ていたゴドーが成歩堂の方に顔を向けた。大体の想像はついているのでぐいとその頬に手を当てて視線のベクトルを変えてやったのだが。

「アンタは知ってたのかい?」
「・・・知りませんでしたけど。別にいいじゃないですか。」

そこに表示されたクイズの問題は英訳問題。『pennies of heaven』という諺を日本語にせよとのモノだったが、・・・まあ反応したのは『pennies』部分で。余り英語が得意ではない成歩堂は、そのつづりと発音に先ほど盛大にお茶を吹いたばかりだったのだ。

正解は「棚からぼた餅」。天国から銅貨が落ちてきたという詩だか戯曲だかが由来らしい。はっとその単語が示すものが成歩堂の考えたものではなく、硬貨のことだと気がついたので慌ててこほんと咳払いをして誤魔化した・・・つもりだったのだ。

「全くやらしいコネコちゃんだ。」
「何がですか!」
「考えてみろよ。ゴールデンタイムのクイズ番組でな、そんな言葉を放送するかよ。普通はコインの事だと思うぜ?」
「ぐっ・・・!」

正にぐうの音もでなくなった成歩堂の横にずりずりと近寄って、その肩をぐっと抱き寄せる。クックッと笑い声を耳元で聞きつつも、成歩堂はじっとりと見上げるしか出来ない。今何か言っても無駄だという事は分かっているのだ。

「アンタの天国への鍵は、此処にあるだろ?」
「この・・・エロオヤジ!!」
「どうとでも言え。アンタのそんな恥らう顔に、俺はすっかりやる気になっちまったんだ。」

ゴドーは堂々とそんな宣言をするものだから、成歩堂は思わずぷっと小さく吹き出してしまう。にやにや顔を崩さないまま、ゴドーは軽く耳を食んで。

「・・・な?アンタには『penis of heaven』ってやつを教えてやるぜ。」

ふるりと震えた成歩堂の返答を待たず、ゴドーはそのまま押し倒していき・・・成歩堂の唇を乱暴に塞いでいくのだった。




初めは、「子なる」verだけ頂戴しようかと思ったのですが。全部どうぞ、というお優しい言葉に甘えて全部いただきました! 遠慮なし(笑)