共有財産



「さあ、どうするのだ?」
「どうするんだい?」
「ううう・・・。」

ここは成歩堂法律事務所。ここの主である成歩堂は現在事務所の一番端、所長室の奥の壁際に追いつめられていた。目の前には冷たく目線を送っている眉目秀麗な男と、にやりと邪悪な笑みを湛えた精悍な顔つきの男。既に事務所の扉には施錠されており、成歩堂にはもう逃げ場はなかった。

きっかけは非常に単純な事。三人で呑んでいて、アルコールで痺れた思考のままに成歩堂の放った一言だった。

「御剣は僕の大事な親友だ。これからも仲良くしてくれよ。」

成歩堂に対して親友以上の感情を持っていた御剣は、肝心な『親友』という単語をすっとばして『大事』と『仲良く』を重要視した。やっとコチラの気持ちに気がついてくれたかと、やはり酒で麻痺した理性が暴走し始めて。

「フッ・・・そんなに嬉しい事を言ってくれるなら、これからもっと『仲良く』なるかね?」

鈍い成歩堂はそこまで言われてもピンとこない。なんだそれなんてからから笑うだけだったが、カウンター席で成歩堂を挟んで反対側に腰を据えていたゴドーは違った。ゴドーはそうはいくかと成歩堂の肩をぐっと引き寄せて。

「なんだ、俺はなんでもないのかい?」
「え?!そんな訳ないじゃないですか!ゴドーさんは・・・そうだなあ。僕の大切な人ですよ。これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします・・・なんてね。」

少しばかり舌を噛みながらも、にっこりとほほ笑んでまたグラスを傾けていった。こうして成歩堂にとって大切に思っている男たちと楽しく呑めて嬉しいなんて、真黒な瞳をきょろっと向けて。ゴドーはその答えに取りあえず満足して、よしよしととんがり頭をぐしゃぐしゃに撫でてやった。

御剣とてゴドーの感情は感知していた。すっかりゴドーの方を向いてしまった成歩堂の肩を今度は御剣側に強引に寄せた。成歩堂の背中には現在二人の男の腕が絡まっている状態だ。カウンター席で肩寄せ合っているとはいえ、こうしてあっちこっちにぐらぐら揺さぶられては酔いも進んでしまう。

ここは、はっきりさせた方がいい。

二人の男の共通認識は、それだった。

そうして言葉巧みに連れて行かれた先が、成歩堂法律事務所だったというわけだ。いきなりホテルはハードルが高すぎるし、かといってどちらかの部屋というのはもう片方の男が許さない。成歩堂の部屋では恐らく直ぐに眠ってしまいそうだからという消去法の末の選択肢だった。

成歩堂も疑問には思わず、かちゃりと事務所の扉を開くとどっさりとソファに身体を沈めた。御剣の持ってきてくれた水をこくりと飲んで、ゴドーはその間にこっそり扉を施錠して。少しばかり酔いが収まってきたのを確認した二人は、ほぼ同時に視線を合わせて・・・こくりと小さく頷いた。

「成歩堂。先ほどの事なのだが・・・。」

口火を切ったのは御剣だった。成歩堂はタバコを取り出しながら、軽く『ん?』なんて返事をするだけ。成歩堂の脳内はそんな昔の事などすっかり忘れ去っていて、一体どんな『先ほどの事』なのだろうかと疑問符を浮かべていた。

「私に仲良くしてくれなんて言ってくれたろう?」
「んー?ああ、そんな事言ったっけ?」
「その気持ちに、嘘偽りはないか?」
「あるわけないよ。僕が嘘が下手なんて、知ってるだろ。」
「クッ・・・、俺に『手取り足とり、ご指導ご鞭撻をお願いします』なんて言ったのも覚えているかい?」
「神乃木荘龍!キサマ、手取り足とりなんてそんな偽証はやめていただきたい!」
「だって、ゴドーさんは僕の先輩だし、今だってすごくお世話になってるし。まだまだ半人前の僕をここまで育ててくれているのは、誰でもないゴドーさんでしょ?」
「ぐ、ううう!」

何だか風向きがおかしくなっているのだが、当の本人は気が付いていない。徐々に二人はローテーブルに乗り上げて成歩堂に迫ってきているというのに。成歩堂がタバコの灰を灰皿に落とそうとした手を御剣は取って、タバコをぐしゃりと押し付けさせた。タバコは消えてしまったのだが、御剣の手は成歩堂の手を握ったまま。ゴドーは反対側の手をちょいちょいと指で差し出させ、そして同じようにきゅっと握りしめて見せた。この期に及んで従ってみせるのこの危機感のなさに、御剣は軽く眩暈を覚える。

「私も君の事を、ずっと大切に想っていた。そしてこれからもそれは変わらないと断言できる。」
「俺はな、まるほどう。いつまでも『好々爺』って訳じゃねえんだ。少しは分かっていると思ってたんだがな。」
「・・・は?あ、あの。手・・・。」
「だからといって、この成歩堂の危機を指をくわえて眺めている訳にはいかない。」
「アンタがここまで鈍いなら、きっちりと『ご指導』してやるしかねえだろ?このひらひらさんにも嫌というほど教えてやるぜ。コイツが、一体誰のものかを。」

同じように手を引っ張られて、成歩堂の身体は完全にローテーブルの上まで持ち上げられていた。まるで昔の『越前裁き』かと突っ込みたくなるシチュエーションに、やっと成歩堂が冷や汗を一筋落とす。

「さあ、どっちを選ぶんだい?」
「君に選択権がある。今ここで、華麗に引導を引き渡してくれ。」

法廷でも見せた事のない真剣な眼差しは、へらりと笑って誤魔化そうとしても無駄だった。じりじりと迫りくる二つの影に段々追いつめられていき、気がついたら背に冷たい感覚。一番奥の所長室まで移動していたのだ。その間もずっと手は握られたままで、両手はほんのりと汗ばんでいた。

「どっちかなんて、選べないよ!御剣もゴドーさんも、僕には欠かせない人なんだ!」

その台詞に一瞬唖然としてから、二人はにやりと笑ってみせた。ぎりぎりまで引き絞られた緊張感にやっと成歩堂が本音を吐き出したというのに。ふうんなどと言いながら、同時にくいと腕を引っ張った。手を掴まれている成歩堂は、御剣とゴドーの顔を交互に見る事しかできない。・・・その二本の手はしゅるりと腕に絡まって、ついに成歩堂は完全に捕獲されてしまった。

「そうか。それでは致し方ない。君を失う位なら、私はこの状況を甘んじて受けてやろう。誰でもない、君の望みなのだからな。」
「とんだ小悪魔コネコちゃんだぜ。どっちも欲しい・・なんてな。」

右側に御剣、左側にゴドーが配置して。示し合わせたかのようなタイミングで、ふるると小さく震えている美味しそうな耳たぶに食らいついた。


***


たっぷりと唾液を絡ませた舌を伸ばして穴の奥を目指しているのは成歩堂の左側・・・ゴドーで。避ける事の出来ない水音に、背筋にぞくりと何かが走る。反対側ははむはむと頼りない位の力で、耳たぶだけを唇で咀嚼され。たまにきゅっと引っ張られる事で軽く御剣の方に身体が傾いていく。

「・・・ん・・・はあ・・・っ。」

じっくりと時間をかけて成歩堂の砦を取り払い、甘い吐息が零れた所でついに二人が攻略を開始していった。しゅるりと御剣がネクタイを引き抜いてやり、ゴドーはぷちぷちとワイシャツのボタンを外していく。段々露わになっていく肌に、こくりと溢れそうになる唾液を飲み込みながら。

ちゅっ、ちゅっ

耳を散々弄っていた二つの唇と舌がゆっくりと目尻、頬へと降りていく。一先ず最初のこれだけは譲ってやるとゴドーが顔を離すと、御剣の手がぐいと成歩堂の顎を捕えた。混乱が隠せない表情に慰めるように頬を撫でてやってから、徐に荒い息を吐き出しっぱなしの唇へと食らいつく。

この年で『初めて』とは流石に思わなかったが、成歩堂の反応は逐一初心だった。ぬるりと入り込んだ舌から必死で逃げまわるのだ。しかし狭い咥内に逃げる場所など欠片もない。やがて観念したのか、引っ込めている力を抜いていった。良いように舌体をあっちこっちに動かす御剣に、成歩堂はやっと瞳を閉じた。

ゴドーは成歩堂のシャツを全てスラックスから引き出し終わって、さあどこから食べようかと舌舐めずりをしている。こくんこくんと上下している喉仏か、艶やかな鎖骨か、それとも男としては飾りとしかいえないこの器官か。一応左半分がゴドーの担当だったのだが、御剣に先にキスを譲ってやったのだからと、褐色の大きな手は真っ白な胸を目指していった。

突然びくりと身体が揺れたので、夢中になっていた御剣がふとゴドーの動向を確認した。本来は自分のものであるそこにまでいやらしく伸びていたのを見たが、仕方が無いかとあっさり諦めた。ここでこの甘い唇を離して異議を唱えるなんて、それこそ無理な話だったからだ。

左の方は指で抓んで無理やり形を作り出し、右の方は撫でるだけで自然な成長を促していった。二三度くりくりと転がすだけでそれはあっという間に成長し、ゴドーの指にその姿を露わにする。掴みやすくなったそれの周囲をくるりと回転させ、より反応を示す場所を探し始めた。

肩が揺れ、膝が笑いだし、そして成歩堂の舌がおずおずと御剣に答えだす頃合いでようやく御剣の長い長いキスが終わりを告げた。やっと呼吸の自由を取り戻した成歩堂は、はあっと大きく息を吸って、そして短く吐き出していった。

「成歩堂。私たちは少々忙しい。・・・自分でベルトを外せるか?」

一応窺う形ではあったが、それは明らかに命令であった。様々な場所を弄られたせいで蕩け切った思考は、それに大人しく従った。今度はコッチの番だと言わんばかりに、ゴドーは強引に顔の向きを変えさせる。またしても酸素不足に陥りながらも、成歩堂はかちゃかちゃとおぼつかない手つきでベルトを緩めていた。

その間御剣は成歩堂の脇から胸にかけてを優しく撫でていた。どこもかしこも敏感になっている身体は、そんな場所にも反応を示す。回り込むように少し盛り上がっている筋肉の筋を指で辿って、やっと到着した箇所へと舌先を伸ばす。持ち上げようが押し付けようがそれは御剣に小さな抵抗を表し、ころんと逆へと逃げていく。

ここまで墜とせたら、後は準備をするだけ。ベルトをバックルから外すだけで精一杯だった手を御剣の股間に宛がわせ、代わりに御剣がスラックスを落としていった。一瞬余りの熱量にたじろんだ成歩堂だったが、ゴドーが軽く舌を噛んだ事でおずおずとそこを刺激し始める。空いた方の手までゴドーの方に引き寄せられて、同じ事をするように無言で要求されてしまった。

いつまでも収まらない水音に、三人は事務所の空気が集束していくように感じられた。何もかも、世界の全てがここに集まってきているような。

求めて止まないモノにやっと触れられた喜びと
同じように歓喜に打ち震えている、もう一つの手への限りない嫉妬と
水と油のように決して混じりあう事のない気持ちが、成歩堂を通して撹拌されて・・・やがて一つになっていく。

何時の間にやら三人はソファに移動して、成歩堂はシャツだけとなっていた。四つん這いの姿勢を取らされていて、その後ろ側にゴドー、前には御剣。どれだけ忙しなく飲み込んでも追いつかないほどの唾液を使って、『仕上げ』にかかっていた。ぐちゃぐちゃとかき回される度に吐き出される吐息を御剣が吸いとって、手に握らせた屹立への動きをうっとりと見つめている。ぼちぼちの頃合いだと踏んだゴドーが、視線で御剣へと合図を送った。

御剣はソファに浅く腰かけて、両手を広げた。ゴドーはよいしょと成歩堂の膝に両手を差し入れてそのまま持ち上げた。ふわりと浮かんだ事に成歩堂は縋る場所を求めたが、きゅっと後ろから回された腕にこれから何が起こるのかを知覚して・・・己を抱えているゴドーに不安げな表情を見せた。

「大きく、息を吸ってな。」
「ごどーさん・・・?」
「さあ、来い。こちらは何時でも良いぞ。」

御剣の手が成歩堂の腰に宛がわれ、微妙な位置が調整された。不安定な体勢で、やっと触れた場所は今までゴドーに広げられていた所。そんな箇所に熱を感じて、思わず成歩堂はくっと唇を噛みしめた。散々受け入れる事を教え込まれた後孔は、そんな成歩堂にも関わらずぐずりと御剣を飲み込んでいった。耳元で呼吸のタイミングを伝えながら、ゴドーは段々と成歩堂の身体を降下させ・・・そして、長い時間をかけて御剣を埋め込ませた。

「あ・・、あ・・・・ああっ、そんな・・・!」
「うっ・・・、成歩堂、少し力・・・抜いてくれ。」

そっとゴドーが膝から手を抜き、辛そうな成歩堂を少しでも紛らわせようと深く口付けてやる。またしても起こったちゃぷりとした水の跳ねる音と、御剣のきゅうと抱きしめてくる腕の温かさに徐々にだが身体が解れていく。そうなると入口の強烈な締め付けの奥が、ぐにいと大きく蠢いた。痙攣しながらも屹立へとぴっちりと纏わりつく粘液混じりの皮膚に、御剣は知らず大きく息を吐き出した。

成歩堂は目の前のゴドーの身体に縋りつき、御剣は御剣でソファのスプリングを利用しながらがくがくと成歩堂を揺らし始める。ゴドーは深いキスを継続させながら、下肢の方へと手を導く。今度は何もせずともしゅるしゅるとそれを扱き始めた。身体全体がぶれているおかげで、ただの手淫よりもよっぽどか強烈で。

「んんっ、んあ、はっ・・・みつ、るぎっ、・・・や・・・!!」
「ああ、これが成歩堂なのだな・・・。全てが熱くて、熔けてしまいそうだ・・・っ。」
「クッ・・・ちょいと、コッチも使ってやるか。蕩けさせてやるぜ、まるほどう。」

成歩堂の足を更に大きく開かせて、ゴドーがその間に入る。前のめりになる様に身体を傾けていき、二人を包むようにソファの背もたれに手を置いた。ぐいと腰を前に出すと、いやいや言いながらも如実に反応を示していた屹立とゴドーの屹立が擦れ合う。すっかり淫水で濡れていた成歩堂の屹立は、ゴドーのそれをも潤わせていった。

後ろの御剣からの揺さぶりと前からのゴドーの鮮烈な刺激に、ついに成歩堂の全てが決壊した。がくんと首を前に落として動きにぐらぐら振れるだけ。ほろほろと涙を落としながら褐色の肌に爪を立て、後孔は更なる蠕動を重ねていく。成歩堂の口はもう『あ』しか発せなくなり、御剣は初めての体験に必死であった。そんな懸命な二人の表情に、ゴドーは卑猥に笑みを浮かべながら纏めて掴んだ二本の屹立を音を立てながら擦りあげる。

「・・・なあ、まだ俺がいるんだからな。中だけは勘弁だぜ?」
「分かって、いる。それに、それを、してしまったら、成歩堂が、きついだろう?」

御剣は動きのせいでスタッカートに言葉を区切りながら、やっと見つけた感触の違う箇所を屹立の先で押さえつけた。と、成歩堂の身体が一瞬にして収縮して。ぎゅっと思い切り奥歯を噛みしめた音の刹那、今までに無かった位の白く濁ったとろみある体液でゴドーの手は汚れた。そんな状況でも成歩堂はとても申し訳なさそうに顔を歪めて、眉をきゅっと顰めてみせる。

「あ・・・ごめ、な・・・さ・・・。」

その掠れ切った声色に、御剣とゴドーも限界を越えて。ぎりぎりのタイミングで御剣は屹立を引き抜きうっすらと汗で湿った双丘へ。ゴドーはそのまま成歩堂の屹立ごと一緒に扱いて成歩堂の白濁に己の白濁を上書きしていった。

成歩堂が身体をぐったりと御剣に凭れ掛けて、肩を上下させながら何とか呼吸を整えようと試みる。顔を紅潮させながら、弛緩した手足がだらしなく垂れていて。その身体の中心部には一人分では無い量の白い汚れがこびり付いている。

御剣は御剣で、自分に全てを委ねてくれた事にこれ以上ない感動を覚えていた。重さや熱さはそれを増幅させるに過ぎず、吸いつくような肌の質感にもっと触れていたくて、そっと額を成歩堂の背に寄せた。

たったそれだけでも、開花した身体はぴくりと反応した。それに気がついた二人は自分の『担当』の耳に口を寄せていき・・・。

「まだ、足りないのだな?」
「欲張りなコネコちゃん・・・嫌いじゃないぜ。」

自分だけでは恐らくここまで成歩堂を『進化』させることは出来なかったかもしれない。独り占めしたい気持ちはあるが、ここは向こうとも協力した方がいいと即座に二つの明晰な頭脳がはじき出した。

結局、成歩堂は互いの『共有財産』という事で。あれからも二人によって犯され嬲り倒されてソファにへたり込んでしまった成歩堂を見下ろしながら、そんな新たな認識をゴドーと御剣は改めて確認するのだった。



三人三人! ストッキングに引き続き、当方の萌えネタであります(笑) 会長、どこまでも付いていきますともv